自閉症(ASD)の行動特徴-児童期から成人期の対人コミュニケーションに着目して-

社会的コミュニケーション障害

自閉症(自閉症スペクトラム障害:ASD)は、対人・コミュニケーションの困難さと限定的興味と反復的(常同)行動を主な特徴としています。

ASDの行動特徴は、乳児期から視線の合いにくさ、指差しの理解の難しさ、模倣やごっこ遊びをしないなどの特徴があると言われています。

著者は療育現場を中心に、未就学児から学童期、そして、成人の方まで様々なASDの人と関わる機会があります。こうした経験を通して、ASDの方には確かに共通する行動特徴があると実感しています。

 

それでは、ASDの行動特徴は児童期から成人期にかけて、どのような特徴があると考えられているのでしょうか?

 

今回は、自閉症(ASD)の中でも児童期から成人期の対人・コミュニケーションの部分に焦点を絞り、著者の療育経験も踏まえて、対人・コミュニケーションの特徴についてお伝えします。

 

※この記事は、臨床発達心理士として10年以上療育現場に携わり、修士号(教育学・心理学)を有する筆者が執筆しています。

 

 

今回、参照する資料は、「下山晴彦(監修)(2018)公認心理師のための「発達障害」講義.北大路書房.」です。

 

 

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自閉症(ASD)における児童期から成人期の行動特徴(対人・コミュニケーション)

以下、著書からASDの児童期から成人期の‟対人・コミュニケーション”の行動特徴を引用します。

・表情が乏しい

・身ぶりの理解/使用が乏しい

・相手の気持ちがわからない

・暗黙のルールがわからない

・他者との距離感が疎遠/近い

・会話が続かない

・比喩などが理解できない

・友人関係を維持できない

 


それでは次に、著者の経験も含め、以上の8つの行動特徴について見ていきます。

 

表情が乏しい

ASDの人たちは確かに喜怒哀楽の表情がわかりにくいことがあります。

もともとASDの人たちは自他の感情認知が難しいと言われています。表情の変化が少ないということは、様々な感情を理解するということの難しさを抱えている可能性もあります。

著者が現場で関わるASDの人たちは、表情よりかは口頭で気持ちを確認したり、表情以外の要素から本人の状態を理解することの方が多いように感じます。

 

身ぶりの理解/使用が乏しい

ASDが苦手とするものの一つに非言語的コミュニケーションがあります。

多くの定型児・者は相手とコミュニケーションをとる際に、身振り手振りを使用したり、非言語行動から相手の意図を理解することも多くあります。

著者は現場で関わるASDの人たちは、身振りなどの行動の理解が入りにくいため、口頭で伝えたり、視覚的な情報を活用することが多いと感じます。

 

相手の気持ちがわからない

ASDは「心の理論」の理解が弱いと言われています。

心の理論について詳しくはこちらで紹介しています:関連記事:「【自閉症の心の理論】療育現場から見た特徴と理解のポイント」。

心の理論の弱さとは、他者の行動の背景の意図や思いをくみ取ることが苦手ということを意味します。

そのため、著者は現場で、黙っていれば伝わる、状況を見てなんとなく感じるだろう・わかるだろうということが少ない(あるいはなく)という認識のもと、しっかりと口頭での説明や視覚情報などを活用するよう心掛けています。

 

暗黙のルールがわからない

社会の中には、暗黙のルールがあります。

暗黙のルールが分かることとは、例え言葉で言わなくても、お互いがそうだろうと察しながら動く(あるいは動いてくれるだろう)など、学校や職場なども含め、様々な環境に見られるルールだと言えます。

ASDの人たちは、口で説明しなくてもわかるだろうという・なんとなくお互い了承しているだろうという暗黙のルールの理解が難しいことがあります。

そのため、著者の現場では、暗黙のルールを見える化する(遊びのルールを視覚化するなど)ように心がけています。

 

他者との距離感が疎遠/近い

他者と適度な距離感を保つためには、相手の気持ちを理解・察したり、言葉にできない状況理解などが必要になります。

ASDの人は、他者の意図や感情の理解の難しさや状況理解の難しさなどから、相手との距離が急に近くなったり、逆に遠くなりすぎることがあります。

著者の療育現場でも、こうした距離感の理解が難しい人もいるため、できるだけ本人にとって理解しやすい言葉を使い(相手の思いや状況理解を促すような声掛け)、相手と適度な距離を保てるような配慮をするよう心がけています。

 

会話が続かない

ASDは相手の言葉でのターンテーキンング(会話のやり取り)が難しいと言われています。

こうした会話のキャッチボールは、相手の心情を推測しながら、多くの情報を統合するなど様々な情報が必要になります。

ASDの人は、「心の理論」「中枢性統合」などの苦手さもあるため、会話のキャッチボールが苦手だと言われています。

中枢性統合について詳しくはこちらで紹介しています:関連記事:「自閉症の中枢性統合/全体的統合について:療育経験を通して考える」。

著者の療育現場でも、なかなか会話が続かないASDの人たちは多くおります。一方で、自分の興味関心についてなら好んで話を続ける様子が見られます。

その人の興味関心を理解すること、興味関心を共有できるような場を設定することを著者なりに工夫しています。

 

比喩などが理解できない

ASDの人は言葉の裏側にある意味であったり、皮肉や冗談などの理解が難しく、言葉を字義通り受ける取る傾向があります。

著者の療育現場でも、比喩などの理解が難しいケースも多いため、本人に伝わりやすい説明の仕方を工夫するようにしています。

 

友人関係を維持できない

友人関係を維持するには、自分から友人を誘ったり、適度な距離を保つなど多くの力が必要になります。

こうした力はASDの人が苦手としています。また、ASDの人は他者といるより自分の興味関心に一人で没頭していることが好きな人もいます。

著者の療育現場でも、一人で何かに取り組んでいた方が良いという人もいれば、人との関わりを求めているなど、様々な人がいます。

友人関係を維持するためには、ASDの強みである興味関心を通して人と繋がること、そして、興味関心を共有できる場を設定することがとても重要だと感じます。

 


以上が、ASDにおける児童期から成人期に見られる対人・コミュニケーションの行動特徴になります。

今回は、行動特徴としてASDの苦手とされる部分の話になりましたが、ASDの方は、特定の興味関心に没頭して成果を出す人など得意とされる面も多くもっています。

著者自身も様々なASDの方と接する中で、人としての良さや強みなど多くの長所をもっているのだと実感しています。

自閉症の強みとどのような仕事と相性が良いかについてこちらで紹介しています:関連記事:「【自閉症の人に向いてる仕事・向いてない仕事】療育経験を通して考える」。

 

我々の社会は定型発達といったマジョリティ側の目線で作られたものが多いく存在します。

一方でASDの対応・コミュニケーションの困難さを理解することで、マジョリティ側にとっても暮らしやすい社会にしていくことも重要です。

私自身、まだまだ未熟ですが、日々の療育現場から、ASDの行動特徴をさらに理解し、適切な配慮や支援を目指していきたいと思います。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

 

下山晴彦(監修)(2018)公認心理師のための「発達障害」講義.北大路書房.

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