発達理解・発達支援・ブログ

人間の多様な理解と支援を目指して!

愛着障害 発達障害

【発達障害と愛着障害の支援方法の違い】行動・認知・感情をキーワードに考える

投稿日:2022年5月12日 更新日:

 

療育現場には、発達に躓きのある様々な人たちがおります。

著者も長年療育現場に勤める中で、多くの子どもたちと関わってきました。

療育現場での経験を通して難しいと感じたのは、様々な発達障害をどのように理解しどのように支援していけば良いかということです。

発達障害といえば、自閉症スペクトラム障害(ASD)、注意欠如多動性障害(ADHD)、学習障害(LD)などが主なものとしてあるかと思います。

 

関連記事:「神経発達症/神経発達障害とは何か?DSM-5を通して理解を深める

 

こうした特性は書籍などで書かれているものを勉強しても、実際の現場の臨床像とすんなりと結びつくかといえば、そうでないケースが多いように感じます。

それは、一つの発達特性(例えば、自閉症スペクトラム障害)を見ても、状態像は多様であり、また、他の発達特性も重複している場合があるからです。

さらに、二次障害としての、愛着障害も最近では話題となることが多く、実際に療育現場を見ても、愛着障障害と疑われるケースも見られます。

 

関連記事:「【愛着障害の3つのタイプ】脱抑制タイプ・抑制タイプ・ASDと愛着障害併存タイプ

 

上記の内容を、多くの臨床経験や書籍などの学びを通して、肌感覚と知識とを循環しながら理解を深めていくことが、長い道のりですが、最良の理解の仕方だと思います。

 

それでは、療育現場に活用できる発達障害と愛着障害の理解と支援方法はあるのでしょうか?

 

そこで、今回は、発達障害と愛着障害の支援方法の違いについて、行動・認知・感情をキーワードに臨床発達心理士である著者の意見も交えながらお伝えします。

 

※この記事は、臨床発達心理士として10年以上療育現場に携わり、修士号(教育学・心理学)を有する筆者が執筆しています。

 

 

今回参照する資料は「米澤好史(2020)事例でわかる!愛着障害 現場で活かせる理論と支援を.ほんの森出版.」です。

 

米澤好史さんは、多くの臨床経験を通して、発達障害と愛着障害の支援方法を考案されており、現場で使える内容が豊富にあります。

 

 

スポンサーリンク

 

 

【発達障害と愛着障害の支援方法の違い】行動・認知・感情をキーワードに考える

今回、発達障害に関しては、注意欠如多動性障害(ADHD)自閉症スペクトラム障害(ASD)を取り上げます。

それでは、以下に著書を引用します。

  • 注意欠如多動性障害:Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder(ADHD):実行機能の問題(目標完遂困難・振り返り困難・抑制制御の困難・遅延報酬への嫌悪)=[行動]の問題⇒[行動]の支援
  • 自閉症スペクトラム障害:Autism Spectrum Disorder(ASD)←広汎性発達障害:Pervasive Developmental Disorder(PDD):社会的(対人)コミュニケーション障害:Social Communication Disorders(SCD)・限定的興味と反復的(常同)行動=[認知]の問題⇒[認知]の支援
  • 愛着障害[Attachment Disorder]=[感情]の問題⇒[感情]の支援

著書の内容では、発達障害と愛着障害の支援方法の本質的な違いが明確に記載されています。

例えば、ADHDは行動の問題のため行動の支援ASDは認知の問題のため認知の支援愛着障害は感情の問題のため感情の支援が必要という違いです。

そして、すべてにおいて環境の支援が必要であり、複数の特徴が重複する場合には組み合わせるなど支援のアレンジが必要ともあります。

 

 

スポンサーリンク

 

 

著者のコメント

著者はこの書籍を読んだ際に、療育現場で愛着に問題を抱えている人の理解と対応に苦しんでいる最中でした。

そして、その人が発達障害の特性もあるのでは?といった印象もあり、理解と支援を考える上で迷走状態にいました。

そんな中で出会ったものが、多くの臨床経験から考案された米澤好史さんの上記の視点になります。

 

療育現場には、愛着に問題を抱えているお子さんもいるため、発達障害に加えて愛着障害の視点があることはとても重要です。

愛着障害には感情の理解と支援が必要ということは、私自身、漠然とは感じていても、ここまではっきりと支援方法まで書かれているものは少ないように感じます。

そして、他の発達障害と理解や支援の違いを対比的に説明している点も多いに現場において参考になると思います。

 

私自身、ADHDやASDに加え、愛着障害の理解と支援方法が加わったことで、確実に現場で子どもたちを理解できる幅が増えたと実感しています。

これまで、認知面、行動面、感情面の理解と支援が一つの障害に対してほとんど整理されずに漠然と理解していたことに気づかされました。

整理されていく中で、理解が深まったという感じです。

 

繰り返しになりますが、大切な視点は、ASD⇒認知の問題と認知の支援、ADHD⇒行動の問題と行動の支援、愛着障害⇒感情の問題と感情の支援という理解です。

そして、重複ケースには支援のアレンジが必要ということです。

こうしたポイントを押さえ、他のスタッフと情報共有しながら日々の現場で子どもたちをよく観察していくことで、何かヒントになる視点が見えてくるかと思います。

具体的な事例などは他の記事にまとめていきたいと思います。

 

私自身、まだまだ未熟ですが、療育現場でより良い理解と支援ができるように、今後も現場に活動できる様々な視点について学び実践していきたいと思います。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

 

 


愛着・愛着障害に関するお勧め関連書籍の紹介

関連記事:「愛着障害に関するおすすめ本【初級~中級編】

関連記事:「愛着(アタッチメント)に関するおすすめ本【初級~中級編】

 

 

米澤好史(2020)事例でわかる!愛着障害 現場で活かせる理論と支援を.ほんの森出版.

スポンサーリンク

-愛着障害, 発達障害

執筆者:


comment

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

関連記事

【発達障害児の〝他害″行動の意味とは何か?】療育経験を通して考える

  〝他害″行動とは、他者に対して暴力や暴言を行うことです。 著者の療育現場には、発達障害など発達に躓きのある子どもたちが通所してきていますが、その中にも〝他害″行動が見られるケースが少なか …

【発達障害児が大人の注意を理解していく過程】療育経験を通して考える

  療育現場で子どもたちと関わっていると、子どもたちの問題行動(問題とされている)に頭を悩ませる場合が多くあります。 例えば、自分の思い通りにいかないと癇癪を起こしたり、他児を叩くなど、私が …

【発達障害の子どもの思春期について】親の関わり方で大切なこととは何か?

発達障害の子どもにとっても小学校卒業以降に本格的に〝思春期″に入っていきます。 個人差はありますが、心身共に急激な成長が見られ、反抗期もこの時期に見られることが多くなります。 著者は人数こそ多くありま …

【MSPAの特徴】発達に躓きのある多様な子どもたちの状態像の理解と評価

著者は療育現場で様々な子どもたちと関わる機会があります。 その中で、状態像が多様な子どもたちをどのように理解すればいいのか?試行錯誤を重ねています。 仮に、状態像が多様な子どもたちを特定のツールで理解 …

発達障害と仕事について

人口知能の導入などの機械化や、インターネットによって世界が繋がる中で労働環境が今後さらに激変することが予測されています。 以前は、ある程度決まったシステムの中で、決まった労働内容をこなすことで、ある程 …