発達障害(現在の医学では「神経発達症」となっている)が生じる原因は、時代と共に変遷してきています。
著者が発達障害という言葉を聞き始めた時代においては、親の育て方に問題があると考えていた人も多くいました(もちろん、この考え方は否定されています)。
現在、発達障害は先天性の脳の機能障害であると考えられています。
一方で、先天的に発達障害の傾向があっても、個々に応じて特徴の強弱などバリエーションには非常に幅があります。
なぜ、同じ発達障害でも多様なバリエーションが生じるのでしょう?
そこで、今回は、発達障害が起こる原因について、遺伝要因と環境要因をキーワードに理解を深めていきます。
※この記事は、臨床発達心理士として10年以上療育現場に携わり、修士号(教育学・心理学)を有する筆者が執筆しています。
今回参照する資料は、「松浦有佑(2026)発達障害を正しく知る.幻冬舎新書.」です。
【発達障害はなぜ起こる?】原因について遺伝要因と環境要因から考える
著書では、発達障害の原因には、「遺伝要因」と「環境要因」とが互いに影響しながら、発症に至っているとの記載があります。
そして、それぞれの影響は半々ずつ、もしくは、少し遺伝の割合が強いと考えられています。
2つの要因が非常に複雑に影響し合うため、同じ発達障害でも多様なバリエーションが発症すると言えます。
それでは、次に、「遺伝要因」と「環境要因」が意味するものについて見ていきます。
「遺伝要因」
以下、著書を引用しながら見ていきます。
遺伝要因とは、生物学的な親から受け継いだ遺伝子の影響を指します。さらには、親からの遺伝とは関係なく、新たに本人自身に発生する遺伝子の突然変異(de novo異変)が関与することもあります。
著書の内容から、遺伝要因は親からの遺伝子、あるいは、親からの遺伝子とは関係のない突然変異が関与していると考えられています。
また、突然変異を遺伝要因に含めるかどうかは文献によって違いがあるそうです。
最近の遺伝子検査の進歩は目まぐるしく、ASDやIDといった発達障害に関連する特定の遺伝子変異が明らかになってきている中で、ある特定の遺伝子変異がASDに影響するといった1対1の関係がまだ確認されていないそうです。
著者はこれまで10年以上にわたり発達障害児・者支援の領域に携わってきていますが、家族内で発達障害のある割合は肌感覚的に多いと感じています。
一方で、両親に発達障害・あるいは発達特性があっても、その子どもに、発達特性の傾向がないケースもあります。
そのため、親からの遺伝子の影響を強く受ける子どもがいる一方で、子どもによっては受けないこともあるのだと考えさせられます。
「環境要因」
以下、著書を引用しながら見ていきます。
環境要因とは、遺伝子そのものには異常がないにもかかわらず、外部からの影響によって発達に影響が及ぶ要因を指します。
医学的には、「妊娠中の母体の感染症や病気、アルコールや一部の薬物といった、母体そのものの胎内の環境に影響を与える」ケースや「出産時のトラブル(低酸素状態、早産など)によって、新生児の脳に何らかの影響が生じる」といったケースが環境要因に含まれます。つまり、母体内や出生直後に起こる出来事が環境要因です。
著書の内容から、環境要因のポイントとして、遺伝子そのものには異常がないことを前提として、母体内や出生直後に生じる出来事によって発症する要因だと考えられています。
著書には、注意点として〝当事者の生活習慣で生じることはない″と結論づけています。
最近では、生活習慣の乱れや、養育者との愛着形成の問題、そして、デジタル機器の豊富な使用などによって、発達障害と似た行動特徴が見られるといった報告も出てきています。
つまり、発達障害ではないが、発達障害に似た状態を有している人たちが一定するいるということです。そのため、判別には注意が必要になります。
著者のコメント
発達障害の割合は増加し続けていると言われています。
この背景には、発達障害の認知度が高まったこと、診断の精度が上がったこと、社会環境の変化によって特徴がより目立つようになったなど、様々な理由が考えられます。
大切な点は、「早期発見・早期支援」です。
つまり、理解と配慮が必要な子どもを早期に見つけ出し、発達早期から理解のある環境下で特性への配慮を受け続けることで、他者と良好な関係性を築いたり、自尊心・自己肯定感の獲得に繋げていくことができます。
そのためにも、今回取り上げた内容に関連する、医療技術の進歩や遺伝子検査の進歩は大きく貢献していくのだと考えます。
また、親の育て方の問題や生活習慣の乱れが、発達障害を生み出すなど、誤った情報が広がらないように、正しい情報を学び発信することもまた必要だと言えます。
一方で、発達障害ではないが、発達障害に似た人たちもまた混在しているのも事実だと思います。
著者の領域では、愛着に問題を抱える子どもが、発達障害と似たような行動を示す様子も見られています(中には、「発達障害+愛着の問題」のケースもあります)。
ここで重要となるのが、先天性か後天性がどうかといった見方です。つまり、発達障害(神経発達症)は、先天性のもの、今回見てきたように、「遺伝要因」×「環境要因」の影響を受けることで発達期に発症するものです。
一方で、愛着障害は、後天性のもの、養育者との間で愛着関係をうまく築くことができずに発症するものです。
両者の理解を誤ると、良い支援に繋げていくことが難しくなります。そのため、発達歴なども含め、行動の背景を理解していく力を養うことが、専門家には必要だと考えます。
愛着障害と発達障害の違いに関連する記事はこちらで紹介しています:関連記事:「愛着障害と発達障害の違いについて:4つのポイントを通して考える」。
また、今後の課題として、スマホやネットの長時間利用によって、発達障害と似た行動が見られる割合が高まることも懸念点とあります。
改めて、発達障害の理解を深めるためには、原因の理解も含めて、様々な知識が必要のだと感じます。
以上、【発達障害はなぜ起こる?】原因について遺伝要因と環境要因から考えるについて見てきました。
著者は、医師はなく、児童指導員・心理士であるため、発達障害の原因に関して詳しくは、医療の専門家の情報・文献を辿ることが大切です。
時代と共に、発達障害の知識もまた変化してきています。大切なことは、正しい知識を、時間をかけて追及し獲得していくことだと思います。
私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も医学の領域の知見も借りながら、より良い発達理解と発達支援を目指していきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
発達障害の原因として、「機能的結合」の視点も大切です。詳しくはこちらで紹介しています:関連記事:「【発達障害の原因について】機能的結合の視点を通して考える」。
発達障害の理解を深める上でのお勧め書籍紹介はこちらの記事で紹介しています:関連記事:「【臨床発達心理士が厳選】発達障害に関するおすすめ本:初級~中級者向け」。
松浦有佑(2026)発達障害を正しく知る.幻冬舎新書.

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