〝言語性ワーキングメモリ″とは、言語領域に含まれ、情報を記憶し処理する働きのことを指します。
私たちは日々の生活の中で、耳で聞いた情報を取り込み、記憶に保持して処理しながら生活しています。
言語性ワーキングメモリに関しては以下の記事で詳しく紹介しています。
関連記事:「【言語性ワーキングメモリとは何か?】学習活動との関連性について考える」
言語性ワーキングメモリの力が弱いと学習環境をはじめ生活の様々な場面で困り感が生じることがあります。
それでは、学習環境を中心に、言語性ワーキングメモリの苦手さをどのように把握していけば良いのでしょうか?そして、どのように対応していけば良いのでしょうか?
そこで、今回は、言語性ワーキングメモリの困難さへの対応について、臨床発達心理士である著者の経験と考察も交えながら、アセスメントと対応のポイントについて理解を深めていきたいと思います。
※この記事は、臨床発達心理士として10年以上療育現場に携わり、修士号(教育学・心理学)を有する筆者が執筆しています。
今回参照する資料は「小嶋悠紀(2025)小嶋悠紀の「特別支援教育・究極の指導システム」③.教育技術研究所.」です。
言語性ワーキングメモリのアセスメントのポイント
言語性ワーキングメモリが弱いかどうかを把握する際に、以下の3つのポイントが重要だと著書には記載があります(以下、著書引用)。
① 頻繁に聞き返してくる
② 教師の話でボーッとしていたり、話の最中に手いじりをしたりしている
③ あまり話や発言などが上手でない
それでは次に、①~③について見ていきます。
頻繁に聞き返してくる
子どもが相手の言っていることを何度も聞き返してくるということは、耳から入ってくる情報を取り込む容量が少ない可能性があります。
著者がこれまで見てきた子どもの中には、言語性ワーキングメモリが弱い子どもにおいて、著者が話す内容を何度も確認する様子がよく見られていたと感じます。
特に、子どもの興味関心度が低く前提となる知識量が少ない内容において、こうした確認行動は増えると感じます。
逆に言えば、慣れ親しんだ情報(内容)においては比較的苦手さが見立ちにくい場合もあると感じます。
教師の話でボーッとしていたり、話の最中に手いじりをしたりしている
相手が話している情報を受け止める容量が少ないと、話の理解が進まず飽きてしまい別の行動に走る可能性があります。
こうした様子は話し手から見ても明らかに伝わっていないことがわかると思います。
注意点は、言語性ワーキングメモリの弱さを把握するという意識が大切であり、そもそも聞こうとしていない、やる気がないなど別の要因はいったん取り除いて考えることも重要だと感じます。
あまり話や発言などが上手でない
聴覚情報の取り込みが苦手だと、音声出力も苦手であることが多いため、普段の生活の中で発言することが苦手である可能性があります。
著者の療育現場でも、自ら発信を苦手としている子どもにおいては特に、著者が話している内容を記憶に留め処理することに難しさを抱えていたり、聴覚情報の処理に時間を要するケースが多いと感じます。
そのため、〝聴覚情報の取り込み→音声出力″といった関連性を把握していくことが大切だと言えます。
言語性ワーキングメモリの対応のポイント
以上のアセスメント内容を踏まえて、次に言語性ワーキングメモリの弱さへの対応について、4つのポイントから見ていきます(以下、著書引用)。
① 簡潔に話をする
② 指示は「10文字以内を目指す」
③ 大切なこと、子供の脳に残しておきたい情報は三回繰り返す
④ 全体の後に個別に音声入力支援
それでは次に、①~④について見ていきます。
簡潔に話をする
様々な内容の話を一度にすると言語性ワーキングメモリが弱い子どもは混乱します。
そのため、対応のポイントとしては、短く簡潔に話をすることを心掛けることです。
著者の療育現場では、守ってもらいたい必要なルールなどは、短く簡潔に伝えるようにしています。
その際に、不要な情報は極力加えないことが大切になります。
伝える側はどうしても様々な情報を伝えたくなる場合がありますが、言語性ワーキングメモリが弱い子どもにおいては逆効果だと言えます。
指示は「10文字以内を目指す」
伝え手の指示が長いと言語性ワーキングメモリが弱い子どもは混乱します。
そのため、対応のポイントとしては、指示は10文字以内を意識することを心掛けることです。
著者は守って欲しいルールがあると、どうしても長々と話してしまうことがありますが、改めて振り返って見ると言語性ワーキングメモリが弱い子どもにおいてはほとんど指示内容が理解できていないことが多くあります。
一方で、「1、○○しよう」、「2、○○しよう」など、短く伝える工夫をすることで指示内容が理解できるようになっていったケースは思いのほか多いと感じます。
大切なこと、子供の脳に残しておきたい情報は三回繰り返す
記憶に留める方法としてリハーサルがあります。
リハーサルとは繰り返すことであり、言語性ワーキングメモリが弱い子どもには必要な情報を何度か(著書には3回とあります)伝える方法が有効だと言えます。
著書はこのリハーサルは非常によく使います。そして、何度か伝えた後、子どもが覚えているかどうか確認することもよくあります。
一度だけ伝えて情報をうまくキャッチしていない場合でも、繰り返し伝えることで記憶に定着していくことが多くなると感じます。
全体の後に個別に音声入力支援
集団に声をかけて必要事項を伝える際に、特定の子ども(ワーキングメモリが弱い子ども)が分かっていなさそうだと感じる場合には、全体への伝達後に個別にも丁寧に伝える必要があります。
著者の療育現場では、個別対応は非常によく行います。全体への伝達をしてもよく聞き取れていない子どもも多いため、後々個別に伝えることはよくあります。
また、最初から理解の難しさを想定して個別に伝えることもよくあります。
以上、【言語性ワーキングメモリの困難さへの対応】アセスメントと対応のポイントについて見てきました。
言語性ワーキングメモリが弱いと、指示の理解、会話の理解などにおいて様々な困り感が生じることがあります。
そのため、子どもがどのような聴覚WMに困り感を抱えているかをアセスメントしていきながら、個々に応じた対応を工夫していくことが大切だと言えます。
私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後もワーキングメモリへの理解と支援方法について学びを深め実践に繋げていきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
ワーキングメモリの概要については以下の記事で紹介しています。
関連記事:「ワーキングメモリの概要:活用されているモデル・学習や発達障害との関連性について」
ワーキングメモリに関するお勧め書籍紹介記事は以下になります。
関連記事:「ワーキングメモリに関するおすすめ本【初級~中級者向け】」
小嶋悠紀(2025)小嶋悠紀の「特別支援教育・究極の指導システム」③.教育技術研究所.

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