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【なぜ学校に行けないのか?】不登校の背景をおさえる上で大切な視点について考える

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不登校の子どもにとって、学校に行きたくない理由には様々なものがあります。

例えば、友人関係の問題、先生との相性の問題、勉強の問題、生活習慣の乱れなど、単発的な理由もあれば、様々な理由が重なり合っている場合もあります。

 

それでは、子どもが学校に行けなくなる場合、どのようにして背景をおさえていけば良いのでしょうか?

 

そこで、今回は、なぜ学校に行けないのかについて、臨床発達心理士である著者の経験談も交えながら、不登校の背景をおさえる上で大切な視点について理解を深めていきたいと思います。

 

 

今回参照する資料は「本田秀夫(2025)発達障害・「グレーゾーン」の子の不登校大全.フォレスト出版.」です。

 

 

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【なぜ学校に行けないのか?】不登校の背景をおさえる上で大切な視点について考える

以下、著書を引用しながら見ていきます。

日頃の生活のなかで不登校の「準備状態」ができていて、そこに何か突発的な出来事が起こって「引き金」となり、学校に行けなくなっていく。不登校になる一つのパターンとして、このような流れが考えられるわけです。

 

「引き金」は不登校の背景の一部に過ぎません。それだけに対応しようとするのではなく、不登校の背景全体を考えるようにしたほうが、子どもの悩みや苦しみに気づきやすくなります。

 

著書では、子どもが〝なぜ学校に行けないのか?″について、まずはその背景をおさえていくことが大切だと指摘しています。

つまり、子どもが何かの出来事をきっかけに(引き金となって)学校に行けなくなった場合、突発的な出来事について考えていくだけではなく、その出来事の前には、実は不登校への準備状態ができている可能性があるといった背景をおさえていくことが重要だと言えます。

例えば、友人関係で悩んでいる、勉強がよく分からない、学校行事に不安があるなど、様々な背景要因を考慮していくということです。

悩みや不安を抱えた状態が続いていく中で、例えば、友人に嫌なこと・気になることを言われたことがきっかけとなり、学校を休みはじめ、不登校に繋がるといったケースもあるかと思います。

このように、不登校になるまでには、〝不登校の準備状態″→〝不登校の引き金″→〝不登校″といったステップを理解していくこと、つまり、不登校の背景全体を考えることが大切だと言えます。

 

 

著者の経験談

それでは、次に、著者の経験から不登校になってケースを紹介します。

 

高校生男子のAさんの事例

Aさんは、学校の勉強を苦手としていました。

中でも、読み書きの苦手さがあり、国語の音読や読解、書字や作文を苦手としていました。

また、読み書きの躓きもあり、英語学習も苦手としていました。英語においては、成績順にクラスが選別されていました。

当時のAさんは、読み書きの苦手さに関して、努力不足だと考えていたため、まだまだ自分には学習における努力が足りていないと考えていました。

さらに、周囲の人たちに、自分の読み書きの苦手さがバレないように必死で隠そうとしていました。

しかし、いくら努力を積み重ねても、本人にとって思うような成績の向上は見られませんでした。

そんなある日、英語の先生がクラス全体のテストの結果を見て、「○○点を下回った人がいます。このクラスにはいない方がよい!」と、少し強めの口調で話す場面がありました。

Aさんは直ぐに、その先生が自分に言っているのだと分かり、それ以降、そのクラスにいづらくなりました。

また、Aさんは、クラスの生徒とはうまくいっていないという対人関係の問題も抱えていました。

そのため、これまで勉強を頑張ることでなんとか自分を鼓舞していた思いが急に消失していきました。

そして、その後、学校に行くことができなくなりました。

 

この事例は、実際の内容を少し修正していますが、ポイントなる点は抑えて書いています。

つまり、先生に気になることを指摘された→学校にいけなくなる、その背景には、読み書きの苦手さや対人関係や先生との問題などが背景にあったということです。

このように、不登校には何かのきっかけで生じることもありますが、その引き金にだけ目を奪われてしまうと本質的な理解から遠のいてしまうのだと思います。

繰り返しになりますが、大切なことは、不登校になるまでには、〝不登校の準備状態″→〝不登校の引き金″→〝不登校″といったステップを理解していくこと、つまり、不登校の背景全体を考えることが大切だと改めて考えさせてくれる事例だと言えます。

 

 


以上、【なぜ学校に行けないのか?】不登校の背景をおさえる上で大切な視点について考えるについて見てきました。

不登校には、いくつかの段階がある場合が多いと言えます。

そして、段階を踏まえた、不登校の背景全体をおさえる視点を持つことで、子どもが〝なぜ学校に行けないのか?″といった本質的な理解に繋げていくことができるのだと言えます。

私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も不登校に関する学びを深めていきながら、不登校児への理解と対応の在り方について考え続けていきたいと思います。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

 

 

関連記事:「【不登校の原因について①】学校に行き渋る要因について考える

関連記事:「【不登校の原因について③】学校に行きたくない理由について考える

 

 

本田秀夫(2025)発達障害・「グレーゾーン」の子の不登校大全.フォレスト出版.

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