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【意図と注意の共有で大切な能動的な共同注意】自発的な注意の共有について考える

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社会性″とは、〝人とある対象を共有し、その共有体験を楽しむといった共同行為″だと考えられています。

 

社会性の発達(社会的認知の発達)には、情動交流を中心とした行動と情動の共有の段階、視線の共有(共同注意行動)を中心とした目標と知覚の共有の段階、相手の行為の意図を理解しながら自らの行動を調整する意図と注意の共有の段階があります。

 

関連記事:「【〝社会性″の3つの〝発達段階″について】療育経験を通して考える

 

以上の、発達過程は、定型発達児であれば0歳から2歳頃までに見られるものです。

 

一方で、自閉症児など、社会性に躓きがある場合、定型発達児とは異なる発達過程を示すことが多くあります。

 

そのため、子どもがどのような社会性の発達段階にいるのかを理解していく上で、上記の3つの発達段階はとても参考になります。

 

それでは、意図と注意の共有の発達段階において、どのような支援が大切だと考えられているのでしょうか?

 

そこで、今回は、意図と注意の共有で大切な能動的な共同注意について、臨床発達心理士である著者の経験談も交えながら、自発的な注意の共有について理解を深めていきたいと思います。

 

 

今回参照する資料は「長崎勤・中村晋・吉井勘人・若井広太郎(2009)自閉症児のための社会性発達支援プログラム‐意図と情動の共有による共同行為‐.日本文化科学社.」です。

 

 

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意図と注意の共有で大切な能動的な共同注意:自発的な注意の共有について考える

子どもが様々な活動において、自ら他者に注意の共有を発信する様子を〝能動的な共同注意″と言います。

 

著書には〝能動的な共同注意″の目的が記載されています(以下、著書引用)。

①他者と物や出来事への注意を共有するために、自発的に指さしや物の提示またはアイコンタクト(物と他者)を行う。

②他者の行為を援助するために、自発的に指さしや発話を行う(情報提供)。

 

著書の内容から、〝能動的な共同注意″の目的には、1.他者との間で注意の共有を目的としている場合、そして、2.他者を援助することを目的としている場合があると記載されています。

1に関しては、例えば、自分が興味関心のある対象について、他者と共有したいといった思いから、指差し・showing(興味のあるものを見せる)・giving(興味のあるものを渡す)行為などがあります。

2に関しては、他者が困っている様子を見て、問題解決に必要な情報を指差しなどで提示する行為があります。

このように、〝能動的な共同注意″は、活動の中で、子ども自らが他者に注意を促す行為だと言えます。

 

 

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それでは、次に、著者の経験から、能動的な共同注意が子どもに見られるようになった事例について、関わり方のポイントも含めて見ていきます。

 

著者の経験談

療育において、子どもとの関係性が深まるにつれて、子ども自身からの能動的な発信が高まることは非常によく起こります。

 

事例:自閉症児A君(当時、5~6歳)

当時、未就学児であったA君は、他者との関わりを回避することが多い子どもでした。

著者がA君に関わろうとすると、必死に〝こないで!″と、身振りや発声で伝えてきていました。

著者は長い時間をかけて、A君の興味関心に寄り添いながら、少しずつA君との距離を縮めていきました。

3ヶ月~半年以上経つと、A君は著者との関わりに楽しさを感じられるようになったのか、よく著者の手を引いて遊びに誘うようになってきました。

中でも、A君への絵本の読み聞かせは毎日の著者の日課になっていきました。

絵本の読み聞かせも、次第に共有経験が増したことで、楽しめる要素が増えていきました。

例えば、著者が絵本に書いてある物の名称を指さし言葉にすると、A君は著者の真似をして、例えば、「家」「柵」「庭」「窓」「庭」など、物との言葉の関係が分かってきたことを、嬉しそうに言葉で共有する姿が増えていきました。

そこからしばらくしてから、今度はA君の方から、様々な本(著者と一緒に読んだことのないものも含めて)を探して、著者に様々な言葉を〝これ、みつけたよ!″といった様子で嬉しそうに伝えてくる姿が出てきました。

そして、著者が〝そう!これは家だね!″と応答すると、著者の表情を見て嬉しそうに微笑みます。

こうした様子は、今回見てきた〝能動的な共同注意″だと言えます。

A君にとって、人に何かを見せたい!共有したい!といった自発性の高まりが見られるようになったことで生じた共同注意だと言えます。

そして、こうした背景には、人と言葉やイメージを介して楽しさを共有した経験が基盤になっていると実感しています。

以前は、自分の殻にこもっていたA君の姿から見ても、想像以上の変化だと感じています。

 

 


以上、【意図と注意の共有で大切な能動的な共同注意】自発的な注意の共有について考えるについて見てきました。

自閉症など他者との関係の構築において難しさを抱えているケースにおいても、共同注意を基盤とした社会性の発達は可能だと思います。

むしろ、必要不可欠だと思います。

そのためにも、定型発達児が自然と獲得する社会的認知の発達過程について、より詳細な理解と支援方法が大切だと言えます。

私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も療育現場で子どもたちとより良い関係生を築いていきながら、社会性の発達に少しでも貢献していけるような実践をしていきたいと思います。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

 

 

関連記事:「【自閉症児にこそ〝社会性″への支援が必要な理由】療育経験を通して考える

 

 

今回参照する資料は「長崎勤・中村晋・吉井勘人・若井広太郎(2009)自閉症児のための社会性発達支援プログラム‐意図と情動の共有による共同行為‐.日本文化科学社.」です。

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