発達理解・発達支援・ブログ

人間の多様な理解と支援を目指して!

偏食 発達障害

【偏食への理解と対応①】発達障害児支援の現場を通して考える

投稿日:2024年9月19日 更新日:

発達障害児・者には様々な感覚の問題が見られると言われています。

そのため、発達障害児・者支援に携わる人たちにとって、感覚の問題への理解と対応に関する知識は必須であると言えます。

感覚の問題(偏り)によって生じる問題の一つに〝偏食″があります。

偏食″は、目には見えにくい様々な背景要因があると考えられています。

 

それでは、偏食を理解し対応していく上でどのような視点が必要になるのでしょうか?

 

そこで、今回は、偏食への理解と対応①について、臨床発達心理士である著者の発達障害児支援の経験談も交えながら理解を深めていきたいと思います。

 

 

今回参照する資料は「前田智行(2021)子どもの発達障害と感覚統合のコツがわかる本.ソシム.」です。

 

 

スポンサーリンク

 

 

偏食の背景要因について

偏食″には様々な背景要因があると考えられています。

そのため、背景要因を理解しその上で対応策を考えていく必要があります。

 

今回は、次の3つの観点から〝偏食″について見ていきます(以下、著書引用)。

触覚の困難による偏食

 

痛覚の困難による偏食

 

圧覚の困難による偏食

 

 


それでは、次に、それぞれについて具体的に見ていきます。

 

①触覚の困難による偏食

以下、著書を引用しながら見ていきます。

偏食の原因として多いのは、口内に触覚過敏を抱えているケースです。

 

口内にもまた食べ物・飲み物が入ることで様々な刺激が生じます。

〝偏食″に多い背景要因として、著書にある〝口内に触覚過敏がある″ケースだとされています。

著書には、例えば、〝ホクホク感″〝ツルツル感″〝チクチク感″〝ドロドロ感″など、特定の感覚に苦手さがある場合があると記載されています。

 


それでは、こうしたケースにおける対応策について見ていきます(以下、著書引用)。

  • 揚げる、細かく刻む、固める、凍らせるなど調理で食感を変える
  • 食べられる食感の食材で栄養バランスを考える
  • 足りない栄養をサプリメントで補給する

 

著書にあるように、大きくは、調理法で食感を変える方法、そして、食べられる食材で栄養を補充するといった方法があります。

著者が以前勤めていた療育施設では、様々な食形態(子どもに併せて)による食事が子どもたちに提供されていました。

食感の違いによって食が進んでいる子どももいたため、改めて、口内の感覚には子どもたち一人ひとり大きな違いがあるのだと考えさせられました。

 

 

②痛覚の困難による偏食

触覚″の中には、〝痛覚″もあります。

〝痛覚″に過敏性があると、〝辛い″食事が苦手(辛味は〝痛覚″に相当する)な場合が出てきます。

 


それでは、こうしたケースにおける対応策について見ていきます(以下、著書引用)。

  • 牛乳、ヨーグルト、豆乳など発酵食品や酸味(すっぱさ)のあるものを混ぜて、徐々に慣れさせていく
  • からくない食材で栄養の代替をする

 

著書にあるように、大きくは、発酵食品や酸味のある食材を混ぜて辛さを緩和させる方法、他の食材(辛味以外の食材)で代替するといった方法があります。

著者が見てきた子どもたちに関わらず、一般的に、子どもの多くは辛い食材を苦手としている傾向があるように思います。

そのため、無理に食べさせようとはせず、先に見たような工夫を取る必要があると感じています。

 

 

③圧覚の困難による偏食

触覚″の中には、〝圧覚″もあります。

〝圧覚″とは、〝皮膚を押されているときに感じる感覚″のことを指します。

 

〝圧覚″に〝過敏性″あるいは〝低反応″があると、次のような食事の困難さが出てきます(以下、著書引用)。

圧覚に過敏性があるとサイズの大きな具材を口に入れたり、のどで飲み込む際に苦しさを感じたりすることがあり、食事を拒否する子もいます。

 

低反応な体質の場合は(中略)口のなかに刺激の強い食べ物を好む傾向があります。

 

著書には、〝圧覚″に〝過敏性″があると、具材のサイズが大きいと食べる時に苦しさを感じること、逆に、〝圧覚″に〝低反応″があると、刺激の強い食材(スナックや揚げ物など)を好む傾向(逆に、ドロドロしたものが苦手)が出てきます。

 


それでは、こうしたケースにおける対応策について見ていきます(以下、著書引用)。

具材を小さめにカットしてあげる

 

栄養バランスを考えてスナック菓子を制限する

 

著書にあるように、〝圧覚″の〝過敏性″への対応として、具材のサイズを小さくする工夫、そして、〝圧覚″の〝低反応″への対応として、栄養バランスの工夫があります。

著者が見てきた子どもの中には、スナック菓子や揚げ物が大好きな子どもがいました(むしろ食事の中心がこうした食材だったように思います)。

今にして思うと、この子どもには、〝圧覚″の〝低反応″があったのかもしれません。

 

 


以上、【偏食への理解と対応①】発達障害児支援の現場を通して考えるについて見てきました。

偏食と一言でいっても、その背景には様々な要因があると言えます。

私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も偏食への理解を様々な感覚との関連性から理解する目を養っていきたいと思います。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

 

 

関連記事:「【偏食への理解と対応②】発達障害児支援の現場を通して考える

関連記事:「【偏食への理解と対応③】発達障害児支援の現場を通して考える

 

 


感覚統合に関するお勧め書籍紹介

関連記事:「感覚統合に関するおすすめ本【初級~中級編】

関連記事:「感覚統合に関するおすすめ本【中級~上級編】

 

 

前田智行(2021)子どもの発達障害と感覚統合のコツがわかる本.ソシム.

スポンサーリンク

-偏食, 発達障害

執筆者:


comment

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

関連記事

発達障害児の感覚への支援【公園遊びを例に】

発達障害児の多くは感覚の問題があると言われています。   関連記事:「発達障害の感覚調整障害について【4つのタイプから考える】」   感覚に問題があると、無意識的に不足した感覚刺激 …

【〝パニック″の際に絶対にしてはいけない対応とは何か?】発達障害児支援の現場から考える

著者は療育現場で、子どもの〝パニック″行動への対応に迫られることがあります。 〝パニック″への対応には、事前に環境を調整するといった予防的な視点に加え、〝パニック″が起こった直後の対応もまた重要になり …

生活障害への支援-半歩先を想定することの難しさと大切さ-

発達障害を生活障害と捉える考え方が発達支援の現場でよく耳にするようになりました。 生活障害とは、生活上で何らかの困難さがある状態のことです。   関連記事:「療育で大切な視点-生活障害という …

人の発達に携わる仕事について:取り組みとやりがいについて

私は障害児保育や放課後等デイサービスなどで子供たちの発達をサポートする仕事をしてきました。今もしております。今回はその経験から人の発達に携わる仕事の難しさや、やりがいなどについて書いていこうと思います …

子供たちが複雑な環境に身をおくことの意味:発達支援の現場からポジティブに考える

私が現在働いている事業所には、発達につまずきを抱える子供たちが来ています。 子供たちの状態像も様々で、自閉症、ADHD、知的障害、ダウン症やそれらが重複したケースなど実に多様です。また、年齢層も1~6 …