行動障害(Challenging Behaviour)とは、自傷や他害、パニックや癇癪、器物破損など、その行動が自他に悪い影響を及ぼすものだとされています。
また、行動障害と強度行動障害とを定義上分類している方もおりますが、今回は、以下の参照資料に基づいて「行動障害」に統一して話を進めていきたいと思います。
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行動障害への対応方法として有名なものに「機能分析」があります。
「機能分析」とは、問題となる機能(行動)に関する情報を集め(時間帯・頻度・状況)、問題行動について分析を行っていくことです。
「機能分析」は、機能(行動)の分析をもとに、新しく学習したい行動の強化、減らした行動の消去を狙いとしています。
それでは、問題となる行動にも様々あるかと思いますが、一体どのような視点からアセスメント(情報収集)をしていけばよいのでしょうか?
そこで、今回は、行動障害のアセスメントで必要な視点として、状況要因と契機要因の二つの視点の大切さについてお伝えしています。
今回参照する資料は「英国行動障害支援協会(編)清水直治(監訳)ゲラ弘美(編訳)(2015)行動障害の理解と適切行動支援 英国における行動問題への対処アプローチ.ジアース教育新社.」です。
行動障害のアセスメントで必要な視点
以下、著書を参照して見ていきます。
問題行動が起こりやすい場面や状況、時間帯を予想することが可能です。このためには支援者が、「状況要因」と「契機要因」の2つを理解することが重要です。(中略)この2つの要因についての理解を深めれば、支援者が危険な状況を避けたり、事前に配慮することによって、行動障害の勃発を予防することに役立ちます。
著書の内容では、行動障害の問題行動は問題が起こる時間帯・場面・状況などを予測していくことは可能であるとして、次の、1.「状況要因」と2.「契機要因」の2つを大切な視点と考えています。
それでは、次に1.「状況要因」と2.「契機要因」それぞれについて見ていきます。
1.「状況要因」
以下、著書を引用します。
状況要因とは、当人を不安にさせたり過敏にさせたりする要因のことです。
誰にでもイライラする状況はあります。それも、イライラする大きな要因があったり、複数のイライラする要因があればなおさら不満や怒りは高まるということになります。
例えば、A君は朝から睡眠不足で機嫌が悪い、おまけに、学校での最初の授業は大嫌いな科目と嫌いな先生といった場合には、状況要因が増える・重なることになります。
一方で、A君は週末、家族で旅行に行くという状況、前々から楽しにみにしており、天気も良く、体の調子も良い場合には、状況要因は減るということになります。
このように、状況要因が増えることで問題行動が見られる可能性が高まります。
そのため、その人の「状況要因」は何かを普段の様子から情報収集していくことが大切になります。
2.「契機要因」
以下、著書を引用します。
契機要因というのは行動障害を起こす“きっかけ”となる刺激のことです。契機刺激とも言われます。契機刺激は行動障害が起こる直前に起こり、その行動の引き金となるできごとのことを言います。これは“先行刺激”と呼ばれることもあります。
誰かに自分の行動を止められる、自分の要求が通らなかった瞬間、手持ち無沙汰で退屈になった瞬間、自分にとって気になることを言われた瞬間、環境の変化など、契機要因は人によって異なりますが様々なものが考えられます。
上記に上げた例を、状況要因とも掛け合わせながら、分析していくことで、問題行動が生起する引き金となるものが見えてきます。
このように、契機要因とは問題行動を誘発する刺激のことを指します。
契機要因は状況要因によっても変動していくため、両者を掛け合わせてアセスメントしていくことが大切になります。
以上、行動障害のアセスメントで必要な視点【状況要因と契機要因】について見てきました。
著者が療育現場で行動障害の人(その傾向がある人)を見ていて、確かに、一人ひとりの問題行動は時と場合によって、生じることがあるときとないとき、あるいは、生じやすいときとそうでないときなどギャップを感じます。
こうしたギャップは、時と場合、状況などによって変化してくるためです。
そのため、その人たちの問題行動を分析するためには、先の「状況要因」と「契機要因」といった2つの視点はとても有効であると感じます。
私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も行動障害の理解と支援に少しでも貢献できるように日々の実践と学びを大切にしていきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
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英国行動障害支援協会(編)清水直治(監訳)ゲラ弘美(編訳)(2015)行動障害の理解と適切行動支援 英国における行動問題への対処アプローチ.ジアース教育新社.