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発達障害児の感覚の問題への支援【感覚鈍感(過小反応)について】

投稿日:2022年11月20日 更新日:

発達障害児は、様々な感覚の過敏さや鈍感さといった感覚の問題を持つことが多いと言われています。

 

関連記事:「発達障害の感覚調整障害について【4つのタイプから考える】

 

それでは、発達障害児の感覚の問題に対して、どのような支援の視点があるのでしょうか?

 

そこで、今回は、発達障害児の感覚の問題への支援について、臨床発達心理士である著者の経験談も交えながら、感覚の鈍感さ(過小反応)への支援について考えを深めていきたいと思います。

 

 

今回参照する資料は「岩永竜一郎(編著)(2022)ハンディシリーズ 発達障害支援・特別支援教育ナビ 発達障害のある子の感覚・運動への支援.金子書房.」です。

 

 

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発達障害児の感覚の問題への支援【感覚鈍感(過小反応)について】

 

過小反応への支援方法

以下、著書を引用しながら見ていきます。

過小反応のある児は、覚醒が低く、情動の変化が少ない、行動が受け身的であるため、集団生活では問題が顕在化しにくい。

 

著書の内容から、過小反応のある子どもは、覚醒度が低いことにより、自ら能動的に外界の情報を取り入れることよりも、受け身的になりがちであり、問題が過剰反応(感覚過敏)のある子どもと比べて顕在化しにくいと記載されています。

 

そして、以上を踏まえ、以下の3点の対応を心掛けるように指摘しています(以下、著書引用)。

①覚醒を整える

②持続性注意に配慮

③トップダウンの支援

 


それでは、次に著者の経験も交えながらこの3点についてお伝えしていきます。

 

①覚醒を整える

外の世界の情報を取り込むためには、ある程度の覚醒の高まりが必要となります。

そのため、覚醒を高めるためには、対象児が好む感覚(好きな感覚)を取り入れる必要があります。

著書には以下の方法が例として記載されています(以下、著書引用)。

覚醒を高める方法は、足し算の支援と同様に、前庭感覚や固有受容感覚、触覚が有効である。

 

著書がこれまで見てきた療育現場にも、ASD児や知的障害児の中には、過小反応のある子どもたちが多くいたように思います。

そのため、ある程度、その子が好きな感覚を一度取り入れてから活動に取り掛かった方が学習や活動が進むように思います。

例えば、トランポリンやブランコ、バランスボールなど、前庭感覚を刺激する方法も良いと感じます。

一方で、感覚刺激を取り込みすぎて覚醒度を高めてしまいすぎないように注意する必要もあります。

著者は以前子どもの好む感覚を取り入れすぎたことで、子どものテンションが高まりすぎてむしろ逆効果になってしまったと感じた失敗例が多くあります。

 

 

②持続性注意に配慮

覚醒度が高まり、学習や活動に対して、注意が向き、情報を取り込む状態になっても、注意維持を保つことが難しい場合があります。

そのため、与える情報量をその子に応じて少なくしたり、個別に注意を維持するための働きかけが大切になります。

著者も活動や遊びを通して、子どもたちの注意維持の難しさを感じる場面が多くあります。

子どもたちは、与えられる情報量の多さや、わからない情報が多くなってくると、注意を持続することが難しくなってきます。

そのため、関わる子どもがどの程度注意を持続できるのか、保持できる情報量はどの程度か、どのような個別のサポートが必要なのかを関わりの中で考え対応するようにしています。

 

 

③トップダウンの支援

トップダウンの支援とは、子どもたちの興味・関心から覚醒度を高める支援方法になります。

子どもが好む感覚を取り入れるという視点も大切ですが、子どもたち一人ひとりが何に興味があるのかを考え、それを取り入れることが覚醒を高め・保つために大切だと考えます。

著書の中には、算数の計算問題で児童の好きな電車を教材として活用している例があります。

著者も、療育現場で、子どもが好きなイラストや写真などを活用して朝の集まりの会をするなど、興味・関心からの働きかけは覚醒度を高め・維持するためにとても重要であり効果があると実感しています。

また、好きな手遊びや歌などから、子どもたちの覚醒度を高める方法も、とても有効だと感じます。

 

 


以上、発達障害児の感覚の問題への支援【感覚鈍感(過小反応)について】見てきました。

過小反応は過剰反応と比べると、周囲から見てわかりづらくうつり、そして、一見すると対応などが放置されてしまう危険性があります。

そのため、過小反応のある子どもには、覚醒度を高め、維持するための工夫がとても大切だと感じます。

私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も感覚統合についての理解を深めていきながら、療育現場において感覚からのアプローチの質も高めていきたいと思います。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

 

関連記事:「発達障害児の感覚の問題への支援【感覚過敏(過剰反応)について】

 

 


感覚統合に関するお勧め書籍紹介

関連記事:「感覚統合に関するおすすめ本【初級~中級編】

関連記事:「感覚統合に関するおすすめ本【中級~上級編】

 

 

岩永竜一郎(編著)(2022)ハンディシリーズ 発達障害支援・特別支援教育ナビ 発達障害のある子の感覚・運動への支援.金子書房.

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