子どもの最初の発達は感覚と運動から外の世界を認識する段階で、この時期は「触ってわかる世界」です。
感覚と運動の経験を通して、子どもは次第に頭の中で様々な事がイメージできるようになります(表象機能の発達)。この段階は「見てわかる世界」と言われ、定型児の発達でいうとだいたい18ヶ月以降になります。
著者が見てきて子どもたちもこの段階になると、指差しや言葉(単語など)で何かを伝えようとしたり、簡単な言葉の理解もできるようになってきます。
今回は、子どもの「見てわかる世界」について太田ステージからの説明と著者の療育体験などを例にお伝えしていこうと思います。
今回参照する資料は「立松英子(2009)発達支援と教材教具 子どもに学ぶ学習の系統性.ジアース教育新社.」「立松英子(2011)発達支援と教材教具Ⅱ 子どもに学ぶ行動の理由.ジアース教育新社.」です。
「見てわかる世界」について:太田ステージより
太田ステージには、StageⅠ~StageⅣまでの段階があり、今回お伝えする「見てわかる世界」はStageⅡとStageⅢ‐1に該当します。ちなみに、StageⅢ‐1は定型児でいう2歳半前後に相当します。
StageⅡ(シンボル機能の芽生え)では、大人と何かを共有するという経験の多さから物の名称の理解などが進みます(詳しくは、「言葉の理解が進む時期について太田ステージから考える」を参照して下さい
)。
StageⅢ‐1(シンボル機能の獲得)では、物の名称の理解だけではなく物の用途も理解できるようになります。例えば、飲むものは?➢コップ、書くものは?➢えんぴつ、といった感じです。
しかし、この時期の言葉の理解は狭い理解に留まります。例えば、ボールといえば、実際には様々な種類がありますが、本人の中ではサッカーボールに限定されるなどです。また、急な予定の変更なども難しいとされるなど、理解が一義的な段階と呼ばれています。
著者の体験談
私も実際に知的障害のある児童との関わりで理解が一義的だと感じたことが何度かあります。
彼は言葉は色々と知っており理解はできる部分も多くあるのですが、ある名称をいうと“もう限定して彼の中ではこれ”といった感じで他の物への代替えが難しいと感じることがありました。
また、予定の変更に関しても弱く、変更内容を伝えると混乱しパニックになるということがありました(自閉症児にもよく見られる行動かと思います)。
こうした特徴は年齢を重ねるごとに減少していきました。
今では物の代替えなどもできるようになり、そして、予定の変更に関してもしっかりと説明すれば納得する様子が増えました。柔軟性が増し、印象としては柔らかくなった感じがします。
こうした変化の背景には、認知の発達が影響しているのだと改めて感じます。
そして、認知の発達段階を知ることで大人が困るような行動(同時に子供も困ります)の理由の予測がつくことが少しずつできるようになってくるかと思います。
このように「見てわかる世界」は、見てわかることが優先されるため、その時々の状況に応じて考えや行動を変更することは難しいとされていますが、次の段階に進むことで、また新しい世界が広がり、思考や行動は成長します。
私自身、こうして記事を書くことで、改めて子どもたちを発達的な観点で見るということで様々な意味が見えてくるのだと感じます。
今後も知識や理論を活用しながら、子どもたちの発達をより深く理解していきたいと思います。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
立松英子(2009)発達支援と教材教具 子どもに学ぶ学習の系統性.ジアース教育新社.
立松英子(2011)発達支援と教材教具Ⅱ 子どもに学ぶ行動の理由.ジアース教育新社.