〝視空間性ワーキングメモリ″とは、視空間領域に含まれ、情報を記憶し処理する働きのことを指します。
私たちは日々の生活の中で、目で見た情報を取り込み、記憶に保持して処理しながら生活しています。
視空間性ワーキングメモリに関しては以下の記事で詳しく紹介しています。
関連記事:「【視空間性ワーキングメモリとは何か?】学習活動との関連性について考える」
視空間性ワーキングメモリの力が弱いと学習環境をはじめ生活の様々な場面で困り感が生じることがあります。
それでは、学習環境を中心に、視空間性ワーキングメモリの苦手さをどのように把握していけば良いのでしょうか?そして、どのように対応していけば良いのでしょうか?
そこで、今回は、視空間性ワーキングメモリの困難さへの対応について、臨床発達心理士である著者の経験と考察も交えながら、アセスメントと対応のポイントについて理解を深めていきたいと思います。
※この記事は、臨床発達心理士として10年以上療育現場に携わり、修士号(教育学・心理学)を有する筆者が執筆しています。
今回参照する資料は「小嶋悠紀(2025)小嶋悠紀の「特別支援教育・究極の指導システム」③.教育技術研究所.」です。
視空間性ワーキングメモリのアセスメントのポイント
視空間性ワーキングメモリが弱いかどうかを把握する際に、以下の3つのポイントが重要だと著書には記載があります(以下、著書引用)。
① 黒板の視写で、何回も過剰に黒板を見る
② 視写スピードがかなり遅い
③ 音読の際のチェックポイント
それでは次に、①~③について見ていきます。
黒板の視写で、何回も過剰に黒板を見る
板書の際に何度も黒板を見るという行為、例えば、1単語や1文字ずつしか写せない場合など、目から入ってくる情報の記憶の保持が弱い可能性があります。
著者の療育現場では、視空間性ワーキングメモリに弱さがある子どもの場合、何かを真似て描くという行為において、少し見ては描く、また少し見ては描くということを繰り返す様子がよく見られるように思います。
こうした行為の背景には、視覚情報の記憶を保持することに苦手さがあるのだと感じます。
視写スピードがかなり遅い
視写のスピードが遅かったり、また、1単語や1文字ずつ書いている場合など、視空間性ワーキングメモリに弱さがある可能性があります。
著者の療育現場では、書き写すスピードが全般的に遅いことや、書き写す文字数(分量)が少ない子どももいるため、こうしたケースにおいて視覚情報の記憶の保持と処理に躓きがあることを想定します。
また、手先の不器用さも影響して視写スピードが遅いことも考えられるため、協調運動に関する理解も大切だと感じます。
音読の際のチェックポイント
著書では音読を通して、視空間性ワーキングメモリの力を推測できる場合もあると指摘しています。
つまり、音読の際に、テキストをあまり見ないでも読める場合には、視覚情報を頼らずに聴覚情報をうまく活用している可能性があります。
著者のこれまでの経験の中でも、目で見た情報の取り込みが苦手であっても、音声情報の理解が得意であれば(視覚情報<聴覚情報)、音声情報で記憶した情報を頼ることで、うまくテキストが読めていたケースもあったように感じます。
視空間性ワーキングメモリの対応のポイント
以上のアセスメント内容を踏まえて、次に視空間性ワーキングメモリの弱さへの対応について、4つのポイントから見ていきます(以下、著書引用)。
① お手本は近くへ
② 赤鉛筆で文章を区切る
③ 得意な「聴覚情報」を使う
④ 書くことを補う
それでは次に、①~④について見ていきます。
お手本は近くへ
例えば、板書の際に黒板と自分のノートとの距離が物理的に遠いと、情報の記憶・保持に大きな負荷がかかります。
そのため、手本となるものはできるだけ近くに置くという配慮が必要になります。
著者の療育現場では、お絵かき遊びをよく行いますが、視写が苦手な子どもの場合には、描き写すモデルを近くに置く、それでも難しい場合にはトレーシングペーパーなどを活用しています。
赤鉛筆で文章を区切る
視空間性ワーキングメモリが弱いと、文章の区切れ目が分からず書き写すことに大きな負荷がかかることがあります。
そのため、例えば、「ぼくは/公園に/遊びに/行きました。/」など文節に区切りを入れる工夫が必要なります。
得意な「聴覚情報」を使う
視空間性ワーキングメモリが弱い子どもの場合、それを補おうと言語性ワーキングメモリをうまく活用している場合があります。
そのため、言語性ワーキングメモリといった得意な聴覚情報をうまく活用していく工夫もまた大切な視点です。
著者の療育現場では、視覚情報の理解を苦手としている子どもにおいて、音声情報を活用して子どもの理解を促すことがあります。
文字や文章をうまく読み進められない場合には、著者が声を出して読むことで音声情報が視覚情報の苦手さを補填して、内容の理解が進んだと感じられることもあります。
書くことを補う
視空間性ワーキングメモリに弱さがあると、書くことがうまくできない様子が見られます。
そのため、書く分量を減らすこと、なぞり書きを増やすなどの工夫が大切になります。
著者の療育現場では、書くことを苦手としている子どもも多いため、苦手さを補助する工夫を取るようにしています。
例えば、学習以外の場面においては、必要な情報を写真や絵で示すなど視覚的な補助ツールを活用することがよくあります。
以上、【視空間性ワーキングメモリの困難さへの対応】アセスメントと対応のポイントについて見てきました。
視空間性ワーキングメモリの困難さは言語性ワーキングメモリと比べると、状態像が分かりにくいことがよくあると言えます。
そのため、今回見てきたように視空間性WMについて、様々な視点から困り感の理解と対応方法ついて学びを深めていくことはとても大切なことだと思います。
私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後もワーキングメモリに関する学びを深めていくことで、療育現場にその知見を応用する力を少しずつ高めていきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
ワーキングメモリの概要については以下の記事で紹介しています。
関連記事:「ワーキングメモリの概要:活用されているモデル・学習や発達障害との関連性について」
ワーキングメモリに関するお勧め書籍紹介記事は以下になります。
関連記事:「ワーキングメモリに関するおすすめ本【初級~中級者向け】」
小嶋悠紀(2025)小嶋悠紀の「特別支援教育・究極の指導システム」③.教育技術研究所.

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