自閉症(自閉スペクトラム症:ASD)とは、〝社会性の障害″〝コミュニケーションの障害″〝こだわり行動″を特徴とした発達障害です。
自閉症児を持つ親にとって、子育てをしていく難しさは数多くあると言われています。
例えば、親の発信に対する反応の乏しさ、視線の合いにくさ、子どもの発信の意図のわかりにくさ、特定の物事への強いこだわり、抱っこしてもフィット感が得にくいなど様々です。
それでは、自閉症児の子育てにおいて、どのようなことを最優先事項として育てていけばよいのでしょうか?
そこで、今回は、自閉症児の子育てで一番大切なことについて、臨床発達心理士である著者の経験談も交えながら理解を深めていきたいと思います。
今回参照する資料は「てんねんDr.(2025)子どもの発達障害がよくわかる本 これ1冊で理解もサポートも!SB Creative.」です。
自閉症児の子育てで一番大切なこと
以下、著書を引用しながら見ていきます。
私は、ASDの子どもへの対応で一番大切なことは、不安と恐怖への対処だと思っています。
ところがASDの子どもの場合は、この基本的信頼の獲得からして難しいことが多いのです。
そのため、何よりもまずASDの子ども本人がこの世界に対して安心感を得ることが大切なのではないかと思っています。
著書の内容から、〝自閉症児の子育てで一番大切なこと″として、不安と恐怖への対処及び安心感の構築だと言えます。
子どもにとって、安心感を得る上で非常に重要となるものが〝安定した愛着形成″です。
一方で、著書にあるように、ASDの子どもは〝安定した愛着形成″に必要な基本的な信頼関係の構築が難しいと言われています。
その背景には様々な要因があると言えますが、例えば、元々持っている対人意識の弱さ、対人理解(認知)が独特であるということ、感覚過敏などによりスキンシップが取りにくいなどの特徴は、信頼関係の構築を難しくさせているものだと言えます。
そのため、親の関わりのせいでうまく信頼関係を築くことができないというものではなく、本質的に信頼関係の構築・愛着形成において、定型発達児とは質的な違いがあるからだと考えられます。
一方で、質的な違いを少しずつ理解していくことで、信頼関係・愛着形成を築き上げていくことは可能です。
むしろ、質的な違いがうまく理解できずに、子どもが不安となる関わり方が続いてしまうことで、二次障害へのリスクが高まっていきます。
信頼関係・愛着形成に必要な要素として、〝安心感″を子ども自身が実感している状態を築いていくことだと言えます。
著者の経験談
著者はこれまで療育現場で多くの自閉症児と関わりを持つ機会がありました。
その中で、大切だと感じたものがやはり〝信頼関係の構築″や〝安定した愛着形成″だと強く実感しています。
それでは、どのような点により意識を向けることが〝信頼関係の構築″や〝安定した愛着形成″に繋がっていくのでしょうか?
以下、3のポイントに分けて簡単に見てきます。
1.感覚の問題への理解
自閉症児は感覚の問題(過敏・鈍麻)を持ってるケースが多く見られます。
そのため、どのような感覚刺激を好むのか・苦手としているのかを把握していくことが大切だと言えます。
2.興味関心の偏りへの理解
自閉症児の認知は特異的だと言われています。
例えば、弱い中枢性統合の影響により、興味関心の世界が定型発達児よりも限定しており、かつ、限定している世界が非常に深い(マニアック)場合があります。
そのため、興味関心の偏りに対して関心を示し、共感的態度で関わり続ける姿勢が大切だと言えます。
3.ゆっくり成長していく対人意識(理解)への理解
自閉症児の対人意識は定型発達児と比べてもゆっくりだと言われています。
また、対人理解においても、質的に定型発達児とは異なる様相を呈しています。
そのため、対人意識(理解)へのゆっくりである成長、そして、質的な違いを理解していきながら、子どもの成長を焦らず丁寧に支えていく姿勢が大切だと言えます。
以上、【自閉症児の子育てで一番大切なこと】療育経験を通して考えるについて見てきました。
著者が考えるポイント以外にも、自閉症児の子育て及び療育で大切な視点は豊富にあると思います。
重要なことは、子どもにとっての〝安心感″です。
親の視点ではなく、子どもの視点に立って、どれだけ子どもが〝安心感″を得ることができているかどうかを考えていくことがとても大切だと言えます。
私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も自閉症児への子育て、療育における大切な事柄について実践を通して見出していきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
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