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【自閉症の実行機能への支援について】療育経験を通して考える

投稿日:2023年6月1日 更新日:

〝実行機能″とは、活動をコントロールする能力と定義されています。

別な表現で言えば、〝やり遂げる力″とも言われています。

私たちは日々の生活の中で、目標を立て、それに向けて計画を立てて実行することが様々な場面で必要になります。

自閉症の人たちの多くは、〝実行機能″に苦手さがあると言われています。

 

それでは、自閉症の人たちには、どのような実行機能への支援方法があるのでしょうか?

 

そこで、今回は、自閉症の実行機能への支援について、臨床発達心理士である著者の経験談も交えながら理解を深めていきたいと思います。

 

 

今回参照する資料は「下山晴彦(監修)(2018)公認心理師のための「発達障害」講義.北大路書房.」です。

 

 

自閉症の実行機能への支援について

以下、著書を引用しながら見ていきます。

・意思決定の難しさへの支援

➤幼児から、選択をさせるなどからスモールステップで、自分で決定をする経験をさせる

 

・プランニングの弱さへの支援

➤プランニング、優先順位をつけるなどの具体的な支援

➤切り替えの悪さへの具体的な工夫(スケジュール、タイマーなど)

➤自分の感情や対人関係を振り返って考えられるようなメタ認知への支援

 

著者の内容から、自閉症の実行機能への支援方法として、大きくは、〝1.意思決定の難しさへの支援″と〝2.プランニングの弱さへの支援″があると考えられています。

 

 


それでは次に、それぞれの支援方法について著者の療育経験も交えながら見ていきます。

 

1.意思決定の難しさへの支援

自閉症の実行機能の苦手さには、〝プランの実行″と〝注意の切り替え″があります。

〝意思決定の難しさへの支援″とは、〝プランの実行″の苦手さをどのようにしてサポートしていくかに関連していくと思います。

〝プランの実行″とは、自分で目標(ゴール)を立てて、その目的に向けて計画(段取り)を立てることです。

著書にあるように、幼い頃から意思決定を支援していくことは、自己決定力の育ちに寄与するためとても大切なことだと思います。

著書の療育現場では、自分から進んでなかなかやりたい遊びを見つけられない子どももおります。

そのため、大人側が遊びの提案をしていきながら少しずつ活動の幅を広げていきながら、自分で決めることができる関わりを大切にしています。

経験が増えていくと、〝今日は○○をやろうかな?″〝明日は○○をやろうかな?″など、意思決定の力の高まりが見られる子どもも多くいます。

 

 

2.プランニングの弱さへの支援

例えば、やりたい活動が決まった、あるいは、やりたい活動が複数ある、などの状況において、自分でその日の活動のゴールを決め計画性を持って取り組むことの苦手さが〝プランニングの弱さ″として見られます。

こうした〝プランニングの弱さへの支援″として、著書にあるように、〝プランニング、優先順位をつけるなどの具体的な支援″が大切です。

予定を事前に組むとも言えますが、例えば、やりたい活動が複数ある場合には、活動時間を踏まえて活動①の時間→活動②の時間、といった形で予定を提案します。

また、特定のやりたい活動の中でのプランニングを立てることも大切です。

例えば、工作遊びであれば、完成形のイメージといったゴールを定めること、それに向けてどのように進めていくかの計画性、そして、何時で活動が終了となるため、終わらない場合には次回に引き継ぐと言ったことも合わせて伝えていくなどがあります。

また、〝注意の切り替え″の困難さがありますので、活動に過集中してしまい、プランニングは立てることができても活動を終えることができない場合も多くあります。

そのため、著書にあるように〝スケジュールやタイマー″などの使用も有効であると思います。

子どもによって切り替えのポイントが異なるため、個々に合った切り替えの方法を考えていくことが大切だと感じています。

 

また、著書には、〝自分の感情や対人関係を振り返って考えられるようなメタ認知への支援″もプランニングへの弱さへの支援として記載されています。

自閉症の人たちは、メタ認知(自己を客観視する力)を苦手としています。

そのため、活動中に行った様々な出来事を振り返ることが、自他の行動意図や心情への気づきを促し、プランニングの力の育ちに寄与すると著者は感じています。

 

 


以上、【自閉症の実行機能への支援について】療育現場を通して考えるについて見てきました。

実行機能の困難さは、自閉症の人たち以外にも、ADHDや知的障害の人にも同様に見られます。

しかし、困難さの背景は異なる場合があるため、それぞれの発達特性に応じた理解と配慮を行っていくことが大切だと思います。

私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も自閉症の実行機能の困難さへの理解を深めていきながら、療育現場にその知見を応用する力をつけていきたいと思います。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

 

 

関連記事:「【自閉症の実行機能の特徴について】療育経験を通して考える

 

下山晴彦(監修)(2018)公認心理師のための「発達障害」講義.北大路書房.

-実行機能, 自閉症

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