〝社会性″とは、様々な定義や表現があるかと思いますが、一つ定義を取り上げると、〝人とある対象を共有し、その共有体験を楽しむといった共同行為″だと言えます。
〝社会性″の育ちには、その節目となる様々な〝発達段階″があります。
それでは、社会性の発達段階にはどのような発達過程があるのでしょうか?
そこで、今回は、社会性の発達段階について、人の社会性はどのような発達過程を辿るのかについて理解を深めていきたいと思います。
今回参照する資料は「小林保子・立松英子(2011)保育者のための障害児療育 改訂版 -理論と実践をつなぐ‐.学術出版会.」です。
社会性の発達段階について
著書には、〝社会性の発達″に関する図が記載されています(以下の図は、著書を引用)。
その図を参照しながら発達過程を見ていきます。
【身体感覚】
人は自身の感覚器官(触覚・味覚・嗅覚・視覚・聴覚)を通して、外界の様々な情報を取り込んでいきます。
また、運動機能の発達により、自分の身体を動かしながら、感覚と運動を通して外の世界への理解を深めていきます。
【自分と人 自分と物】
感覚と運動を通して世界を理解していく中で、少しずつ〝自分と人″、〝自分と物″の区別がつくようになります。
例えば、人が声をかけると反応する、笑いかけると笑顔で応える、など〝自分と人″の区別がつくようになります。
こうした一対一の関係は〝2項関係″とも言われています。
【手段と目的の分化】
〝手段と目的の分化″とは、例えば、欲しいおもちゃに触りたい(目的)→手を伸ばす(手段)、お腹が空いたときに空腹を満たしたい(目的)→母に泣いて伝える(手段)、といったように、目的的な行動が見られるようになります。
また、この時期に〝クレーン現象″といって大人の手を持って欲しいものに差し出す行動も見られます。
【共同注意・社会的参照】
〝9か月革命″とも言われる時期です。
〝共同注意″とは、他者とある特定の対象を共有する状態のことを言います。
〝指さし″が現れる時期になります。
例えば、〝くるま″を見て母親に〝あー″と指をさして伝えるなどがあります。
人⇔対象物⇔人、といった関係(=〝3項関係″)が成立する段階です。
〝社会的参照″とは、例えば、共同注意が成立している状態において、子どもが親の表情を見てその対象が大丈夫かどうかを確認する行動などがあります。
【誉められること、叱られることの理解 集団の中での1人遊び】
言葉への気づきが増大する時期です。
誉められる・叱られることを理解するためには、人を基準に自分の行動を意味づけ・価値づける力が求められます。
また、集団の中での一人遊びがこの時期見られるのも特徴です。
【友だち関係の芽生え】
友だちとの関わりが見られるようになる時期です。
この時期は、まだまだ友だちとの関わり方が不器用ではありますが、友だちと関わりたいという気持ちが強くなる時期だと言えます。
【友だちとの物のやりとり 「がまん」の理解】
この時期は、物の貸し借りができるようになってきます。
友だちに自分が使いたい物を貸すためには「がまん」することが必要になります。
これまで自分の思いを押し通すことが多かった時期を乗り越え、この時期には、「がまん」が見られるようになります。
【順番を待つ、役割を理解する ルールを理解する】
概念が芽生える時期とも言えます。
概念を獲得することは、物事の基準が変更しても、変更に応じて自分を合わせることができる力とも言えます。
例えば、自分の役割の変更(ごっこ遊びなどに見られる)や遊びのルールの変更があっても、それに応じることができるようになってきます。
また、言葉の発達も進み、言葉で自分の行動を調整する力も高まっていきます。
以上、【社会性の発達段階について】人の社会性はどのような発達過程を辿るのか?について見てきました。
今回見てきたように、社会性の発達には一定のプロセスがあります。
一方で、発達に躓きのある子どもたちは、こうしたプロセスから外れた固有の発達を示すこともあります。
発達に躓きのある子どもたちを理解していく上でも、一般的な社会性の発達段階を把握しておくことは大切なことだと思います。
私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も一般的な社会性の発達段階を抑えていきながら、発達に躓きのある子どもたちの社会性の発達についての理解を深めていきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
関連記事:「【〝社会性″の3つの〝発達段階″について】療育経験を通して考える」
参考となる書籍の紹介は以下です。
関連記事:「発達障害の〝社会性″に関するおすすめ本5選【中級編】」
小林保子・立松英子(2011)保育者のための障害児療育 改訂版 -理論と実践をつなぐ‐.学術出版会.