発達障害(神経発達症)とは、簡単に言えば、自閉スペクトラム症(ASD)や注意欠如多動症(ADHD)、学習症(SLD)など、様々な生得的な発達特性(AS、ADH、SLなど)に加え、環境への不適応状態(障害:Disorder)が見られる状態のことを言います。
発達障害児支援には、発達特性を踏まえた様々な支援方法があります。
発達障害児の中には、自分から助けを求めること、発信に苦手さを抱えている場合がよくあります。
〝助けを求める力(援助要求スキル)″は、社会の中で生きていくためにとても重要な力です。
〝援助要求スキル″に困難さがあると、その後の生き方を左右する大きな問題へと発展する場合もあります。
それでは、援助要求スキルの力を育んでいくためには、どのような対応方法があると考えられているのでしょうか?
そこで、今回は発達障害児支援で大切な援助要求スキルの育て方について、臨床発達心理士である著者の経験談も交えながら理解を深めていきたいと思います。
今回参照する資料は「前田智行(2024)「できる」が増えて「自立心」がどんどんアップ!発達障害&グレーゾーンの子への接し方・育て方.大和出版.」です。
援助要求スキルの育て方について
今回は、あくまでも〝援助要求スキル″に苦手さのある子どもへの対応方法を取り上げて見ていきます。
著書には、1.道具を使用する、2.大人の方から援助を求める、3.道具の使用により援助要求スキルが育つ、の3点を取り上げています。
それでは、次に、以上の3点について見ていきます。
1.道具を使用する
以下、著書を引用しながら見ていきます。
ヘルプを簡単に示せる道具/アイテムを使うと、言葉を介さないため、援助要求がしやすくなります。
まずは、〝道具を使用する″方法であり、言葉を介さず自ら道具を使用することで〝ヘルプ″を発信する方法になります。
例えば、困った場合に、大人にヘルプと書いてある紙を渡す、あるいは、これを提示した場合にはヘルプの発信の意思表示だと分かるものを事前に大人と決めておくなどです。
著者が見てきた子どもの中にも、自らの困り感をうまく発信できないケースもあります。
そのため、困り感の発信の導入ツールとして道具の使用はとても良いと思います。
2.大人の方から援助を求める
以下、著書を引用しながら見ていきます。
メンタル面とスキル面の両方からアプローチできるので、大人から子どもに援助を求める関わりはおすすめです。
この方法は、逆に大人から子ども(発信が乏しい子ども)に、助けを求める方法です。
例えば、片づけを手伝って欲しい、○○君が困っているので傍で見ていて欲しい、など大人から援助を求めるなどです。
こうした関わりによって、子どもは自分が必要とされているといった実感(メンタル面に影響)に加えて、援助を求める方法を大人の姿を見て学ぶ(スキル面に影響)ことができるなど、メンタル面とスキル面の両方にアプローチできると著書には書かれています。
著者も活動中に子どもたちにお願いすることがありますが、お願いすることで、自己肯定感が高まっていったり、実際に自分が困った場合に発信行動が増えたと感じるケースもあります。
3.道具の使用により援助要求スキルが育つ
以下、著書を引用しながら見ていきます。
道具があれば、「これを使っていいですか?」と伝えやすくなります。これは、道具自体に意味があるので、伝える際の説明を補助してくれるからです。
例えば、音が気になってイライラ感が止まらない場合には〝耳栓″や〝イヤーマフ″を使用する手段を持っていると、道具の使用自体が困り感を伝える手助けになることがあります。
自分が困った場合に、○○を使うことで困り感が軽減できることを知っていれば、○○の使用を大人に求める行為自他が援助要求スキルの育ちに繋がるということです。
著者が見てきた子どもの中には、○○が欲しいなど道具の使用を求める行為(それこそ今回見てきたイヤーマフの使用など)を通して、援助要求スキルが高まっていったと感じるケースもありました。
以上、【発達障害児支援で大切な援助要求スキルの育て方】療育経験を通して考えるについて見てきました。
子どもが援助要求を示すことが難しい背景には、様々な要因があるかと思います。
そのため、背景要因も今回見てきたスキルを育むことに併せて考えていく必要がある感じています。
私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も療育実践を通して、子どもたちの援助要求スキルを高めていけるように、困り感の背景要因に加えて、発信の仕方についても学びを深めていきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
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前田智行(2024)「できる」が増えて「自立心」がどんどんアップ!発達障害&グレーゾーンの子への接し方・育て方.大和出版.