愛着障害の子どもへの支援で重要となるのが、保護者及び他機関(学校、幼稚園、保育園、施設など)との連携があります。
連携がスムーズいけば支援の効果は得やすいと言えますが、特に保護者との関わりにおいて、連携の難しさは非常によく出てきます。
それでは、なぜ保護者との連携が難しくなってしまうのでしょうか?
そこで、今回は、愛着障害の子どもを持つ保護者支援について、臨床発達心理士である著者の経験談も交えながら、連携が難しくなる理由について理解を深めていきたいと思います。
今回参照する資料は「米澤好史(2018)やさしくわかる!愛着障害 理解を深め、支援の基本を押さえる.ほんの森出版.」です。
【愛着障害の子どもを持つ保護者支援について】なぜ保護者との連携が難しいのか?
以下、著書を引用しながら見ていきます。
保護者・親は、家でのこと、自分の子育てについて他者から指摘されたくないという「自己防衛」の気持ちが生じやすいものです。
保護者・親自身が愛着の問題を抱えていたら、その自己防衛の気持ちはさらに増幅され(中略)他者、すなわち学校等の対応を批判、責めることで自己防衛をさらに徹底しようとしてしまいがちなのです。
著書の内容から、愛着に問題を抱える子どもの保護者との連携の難しさとして、保護者が持つ他者からの指摘に対する〝自己防衛″反応があるとされています。
また、こうした保護者の中には、保護者自身が愛着に問題を抱えているケースもあるため、さらに〝自己防衛″の気持ちが高まることがあると言えます。
難しいのは、〝自己防衛″の気持ちが高まると、他者からの指摘やアドバイス、および、他機関の対応などを批判することにも繋がる場合も出てきます。
不安や不満が高まることで、学校など他機関への批判がさらに増大していくのも特徴だと言えます。
このように、保護者が持つ子育てに対する〝自己防衛″反応や、保護者が持つ心理的要因(保護者自身の愛着の問題や精神疾患など)などが影響して、保護者との連携がうまく図れない、保護者支援がうまく進まないことに繋がっていくと言えます。
著者の経験談
著者はこれまでの療育経験を通して、様々な愛着に問題を抱えている子どもの保護者と関わる機会がありました。
著者の実感として、こうした保護者に共通するものとして、子育て上の不安や悩みをほとんど話してこないケース、逆に、様々な悩みや不安を話してくるケースがあると感じています。
前者のケースに関しては、特に、愛着に強い問題を抱えている子どもの保護者に多いといった印象があります。
あるいは、保護者のパーソナリティの特徴として、他者を頼ることを苦手としている人が多いのかもしれません。
そのため、著者が様々な話題をふっても、話がうまく進まない、反応が乏しいことが多いため、非常に連携の難しさを感じることがあります。
一方で、こうした保護者の中には、何かに対する不満が高まることで、療育機関や学校などを強く批判する場合もあります。
〝自己防衛″の気持ちが強い一方で、心理的ストレスが過多になることや、支援者の対応に対して何か引っかかりがあると、外に向けて不満や批判がエスカレートしてしまうのかもしれません(後者のケースにもあります)。
後者のケースに関しては、逆に、様々な事柄に対して、反応してくれるため、話が進むことも多いと感じています。
その一方で、難しいことは、しっかりと保護者の気持ちに向き合う姿勢と保護者の気持ちにあまり飲まれ過ぎないようにバランスを取ることだと言えます。
また、言葉選びにも注意が必要です。
様々な話ができる分、少しでも保護者を批判するような言動があると(こちらが意図した発言ではないとしても)、保護者がその支援者との関係を遮断してしまうこともあると思います。
両者のケースに共通するものとして、参考著書にもあったように、子育てに対する〝自己防衛″反応があるということです。
そして、前者のケースにおいては、〝自己防衛″反応が強くなかなか肝心なことが話せないこと、関係の作りにくさがある一方で、後者のケースにおいては、〝自己防衛″反応がそれほど強くはないものの(ある程度話を進めていけるレベル)、対応する支援者の関わり方によっては急に関係性が崩壊する恐れもあるといった違いがあるように思います。
以上、【愛着障害の子どもを持つ保護者支援について】なぜ保護者との連携が難しいのか?について見てきました。
今回は、保護者との連携の難しさにフォーカスして見てきました。
支援の観点に関しては、また別の記事に記載していきます。
私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も愛着障害への支援に関して学びを深めていきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
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