愛着（アタッチメント）とは、〝特定の養育者との情緒的な絆″のことを指します。
子どもが養育者との情緒的な絆を結ぶことの鍵となるのが〝安心基地・安全基地″の形成です。
子どもは、特定の養育者に対して、一緒にいると心地が良い感覚（〝安心基地″）、自分のことを守ってくれる感覚（〝安全基地″）を通して絆を強めてきます。
それでは、子どもとの愛着関係を深めていく上で、どのような支援方法があると考えられているのでしょうか？
そこで、今回は、愛着への支援方法として、大人が先に子どもに興味を向けるアプローチについて、臨床発達心理士である著者の経験談も交えながら理解を深めていきたいと思います。
今回参照する資料は「前田智行（2023）子どもの発達障害と二次障害の予防のコツがわかる本．ソシム．」です。
愛着への支援：大人が先に子どもに興味を向けるアプローチ
以下、著書を引用しながら見ていきます。
大人から子どもに積極的に興味を向けます。特に、アタッチメントが不安定だと思う子には、大人から先に関わることをおすすめしています。
著書の内容から、愛着への支援として、〝大人が先に子どもに興味を向けるアプローチ″が有効だと考えられています。
そして、著書には、大人が先に子どもに興味を向けることで、次の2つの効果があると記載されています（以下、著書引用）。
1つは、「安心感が大きい」ということです。
2つ目の効果は、「適応行動を教えやすい」という点です。
それでは、以上の2つの効果について具体的に見ていきます。
1．安全感への効果
子どもが大人に対して、〝安心感・安全感″を抱いていくためにも、〝先に関わる″といった視点がとても大切です。
なぜなら、愛着が不安定な子どもの心のエネルギーが充足していくためには、大人が子どもの心の状態を察知して（敏感性や洞察性）、前もって関わることで、子どもにとって〝この人は自分のことを理解してくれている″といった〝安全感″が生まれていくからです。
これが、〝後手の対応″、つまり、子どもの発信が先行してしまうと、子どもは大人に対して、〝この人は自分のことを理解してくれている″といった感覚が得にくいのだと言えます。
また、〝先に関わる″という視点に加えて、子どもから見て、〝好き・関わりたい人″と認知されている人からアプローチを取ることで、さらに〝安心感・安全感″への効果が期待できると言えます。
著者の経験を踏まえると、〝先に関わる″ためには、常に子どものことをよく観察・把握しておく必要があります。
それができていないと〝先に関わる″対応をしても、子どもの心には響かず、安全感は得にくいのだと思います。
子どものことをよく知っているからこそ、必要なタイミングで必要な声掛けなどができるのだと思います。
2．適応行動への効果
〝不適応行動″に対する対応においても、〝後手の対応″には効果が期待できないと言えます。
つまり、〝先に関わる″といった支援方法が、〝適応行動″への促し・定着においても効果があると言えます。
例えば、子どもの方から、様々な行動に対して、要求を出し続けている状態では〝不適応行動″は増大し続ける可能性があります（特に、愛着に問題のあるケースにおいて）。
一方で、大人が先に手本を見せたり、良い行動を促して、できた際には肯定的なフィードバックをしていくことで、〝適応行動″が徐々に定着していきます。
〝適応行動″の基礎を作る上でも、遊びの持つ意味はとても大きく、好きな大人と１対１で関わることで、大人が主体的に遊びをリードする場面を設けるなど、〝先に関わる″ことを意図的に作り出していくことができます。
著者の経験を踏まると、〝後手の対応″では必ずといっていいほど、〝適応行動″は定着していかないと感じています。
〝後手の対応″だと、どうしても子どもを注意・叱責することが増えてしまうからで、子どもの行動を改善・修正したいのであれば、ネガティブ行動が発生する前段階からポジティブ行動に働きかけるアプローチを意識していくことが大切だと感じるからです。
以上、【愛着への支援：大人が先に子どもに興味を向けるアプローチ】療育経験を通して考えるについて見てきました。
愛着の問題への対応で大切な視点として、〝先手支援″があります。
今回見てきた内容は〝先手支援″に通じる内容だと著者は感じています。
私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も療育実践を通して、愛着の問題への対応について学びを深めていきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
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前田智行（2023）子どもの発達障害と二次障害の予防のコツがわかる本．ソシム．
