子どもは異年齢における遊びを通して様々なことを学んでいきます。
一般的には、年下の子どもが年上の子どもの遊びを見ること(参加し関わること)で遊びの楽しみ方や様々なスキルの向上に繋がっていくケースが多くあると考えられているのではないかと思います。
それでは、逆に年下の子どもとの遊びが年上の子どもにどのようなポジティブな影響を与えると考えられているのでしょうか?
そこで、今回は、年下の子どもとの遊びは年上の子どもの創造性を豊かにするといった内容について、臨床発達心理士である著者の経験談も交えながら、異年齢における遊びを通して理解を深めていきたいと思います。
今回参照する資料は「ピーター・グレイ(著)吉田新一朗(訳)(2018)遊びが学びに欠かせないわけ 自立した学び手を育てる.築地書館.」です。
年下の子どもとの遊びは年上の子どもの創造性を豊かにする
以下、著書を引用しながら見ていきます。
年少の子たちにとって、年長の子を見ることでより発展的な活動に取り組む気にさせられるように、年長の子たちは、年少の子たちを見ることでより創造的/想像的な活動に取り組む気にさせられます。
トランプやボードゲームなどの、名目上は競争的なゲームも、年齢差が大きい時の方が、年齢差がないときに比べて、より創造的に、楽しくプレーされることも観察しています。
そのような状況では、相手に勝つのではなく、楽しむこと、スキルを伸ばすこと、創造的な動きを試してみることに重きが置かれます。
著書の内容から、年長者は年少者の遊びを見ることで、創造的/想像的に活動に取り組む様子があることがわかっています。
例えば、粘土、絵を描くこと、ごっこ遊び、ブロック遊びなどにおいて、年下の子どもの遊びの様子から刺激を受けて、年上の子どもはこれらの遊びをより発展させる傾向があるということです。
さらに、著書にあるように、トランプやボードゲームなど本来は競争の要素があるゲームにおいて、年長者と年長者の年齢差が大きい場合の方が、こうした遊びをより創造的に楽しく行う様子が見られると報告されています。
この要因として、年長者が年少者に勝ちたい気持ちがあるというよりも(力の差があるため)、勝敗以外の楽しみ方を創造することに重きが置かれているためだと考えられています。
確かに、著者も遊びで競争の要素があるものの中で、相手との間に力の差が顕著にあるものは勝った負けたという楽しみ方ではなく、相手の良さを引き出そうとしたり、どうやったら一緒の楽しく遊べるのかを工夫してみたりなど、競争とった遊び方以外の楽しみ方をしていることがあります。
そのため、異年齢間における遊びは年齢差や力の差によって遊び方に違いはあると思いますが、創造的な遊び方をする(するようになる)場合が多くあると言えます。
そして、年下の子どもの影響を受けて、年上の子どもにも創造性などポジティブな影響が生じるということです。
著者の経験談
著者の療育現場(放課後等デイサービス)には、最大年齢差6歳といった開きのある子どもたちが通所してきています。
年上の子どもたちは年下の子どもたちの遊びを見て遊びをさらに発展させていく場合があります。
例えば、単純な戦いごっこをしている年下の子どもたちの様子を見て、戦いごっこに新しい技を付け加えたり、様々なストーリーを加えるなど、さらに戦いごっこを発展させていったケースがあります。
また、電車好きな年下の子どもたちが工作で電車を作ったり、電車ごっこする様子を見て、工作のクオリティを高めたり、電車に関する様々な知識を付与し電車ごっこのリアリティーをさらに追及し、遊びの質が高まったケースもあります。
これらの事例は、どちらも年下の子どもの遊びの様子を年上の子どもが観察し遊びに加わることで〝創造性が発揮された″、〝創造性を発揮し遊びをアップデートした″など、つまり、年下の子どもの遊びがきっかけとなりポジティブな影響を年上の子どもが受けたと言えるかと思います。
以上、【年下の子どもとの遊びは年上の子どもの創造性を豊かにする】異年齢における遊びを通して考えるについて見てきました。
著者は、一般的には、子どもは自分よりも年上の子どもの遊びを見て創造性を磨いていくイメージがありました。
しかし、今回参照した資料を見て、年下の子どもの遊びからも創造性を磨いていくために必要なきっかけとなる影響を受けることがあるのだと考えさせられました。
そして、その実感は、実際に著者が勤める療育現場においても見られていたのだと感じました。
私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も異年齢における遊びにどのような意味があるのかを追求していきながら、そこで得られた知見をより良い支援に繋げていきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
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