発達障害の子どもは〝対人関係に苦手さ″を持つことがよくあります。
対人関係の苦手さは、様々な背景要因があるため、背景の理解と発達段階を踏まえた対応が必要です。
それでは、対人関係に苦手さを持つ発達障害の子どもに対して、どのような理解と対応の方法があるのでしょうか?
そこで、今回は、対人関係に苦手さを持つ発達障害児への支援について、臨床発達心理士である著者の経験と考察も交えながら、アセスメントと対応のポイントについて理解を深めていきたいと思います。
※この記事は、臨床発達心理士として10年以上療育現場に携わり、修士号(教育学・心理学)を有する筆者が執筆しています。
今回参照する資料は「小嶋悠紀(2025)小嶋悠紀の「特別支援教育・究極の指導システム」③.教育技術研究所.」です。
対人関係の苦手さに関するアセスメントの視点について
著書では、対人関係の苦手さのアセスメントの視点として、〝1.周囲の音を気にし過ぎる″、〝2.友達に対して攻撃的に責める″、 〝3.一つの言葉にこだわって問題にしてしまう″、〝4.過剰な不安感をもっている″を上げています。
次に、1~4について著者の経験等も交えて見ていきます。
周囲の音を気にし過ぎる
発達障害児の中には、聴覚過敏の子どもも多くいます。様々な音の苦手さが影響して対人トラブルに繋がるケースもあります。
著者の療育現場では、特に自閉症傾向の強い子どもにおいて、特定の音への過敏さが見られることがよくあります。
例えば、集団の賑やかな声、特定の他児の声が気になることで、対人関係に支障が出ることがあります。
そのため、音に対するアセスメントが必要だと言えます。
友達に対して攻撃的に責める
対人関係がうまくいかず、そして、ネガティブ感情の処理が難しいと攻撃行動として他児を責めることがあります。
著者の療育現場では、対人関係に苦手さを持ち、そして、感情のコントロールがうまくいかない子どもの場合には、他児を攻撃したり、物を投げて当たろうとするケースもあります。
そのため、他児トラブルが徐々にエスカレートしていくことがあります。
他者への攻撃性の高さもアセスメントの視点として必要だと言えます。
一つの言葉にこだわって問題にしてしまう
心の理論の理解の弱さによって、他児の言動の意図がうまく理解できずに特定の言動を気にしたり、中枢性統合の弱さから特定の話の内容に固執することで、対人関係がうまくいかないことがあります。
著者の療育現場では、嘘や冗談の理解が難しい子どもにおいて、言葉を字義通り受け取ることで対人関係のトラブルに繋がるケースもあります。
心の理論や中枢性統合といった認知能力に関するアセスメントが必要だと言えます。
過剰な不安感をもっている
過剰な不安感を持ちやすい子どもにおいて、対人関係が困難になることがあります。
著者の療育現場では、不安感が強い子どもは、新しい人との会話を避けたり、集団での活動を拒む傾向があります。
また、自分の思いを発信することも苦手なため、他者との関わりに困り感を持つこともよくあります。
どのような状況によって不安感が強くでるのかをアセスメントする視点が必要だと言えます。
対人関係の苦手さに関する支援のポイントについて
以下、著書を引用しながら見ていきます。
低学年期は積極的に介入する。高学年期~思春期は、状況分析と行動を教える。
著書の内容から、対人関係の苦手さへの支援として、〝1.低学年期の対応″、〝2.思春期の対応″とに分けています。
それでは、著者の経験等も交えて1.2について見ていきます。
低学年期の対応
基本的には、言葉によって対人関係のあり方を大人が教えようとしても難しい時期であるため、積極的に大人が介入する必要があると考えられています。
例えば、対人関係のトラブルには即大人が入り、環境を分ける、どのようにすれば良かったかを振り返る、うまく関われた場合には褒めるなどの対応が必要です。
著者の療育現場で対人関係のトラブルが起きやいと感じるのは、小学校低学年頃に多い印象があります。
著書にあるように、この時期には大人が言葉で状況や関わり方を伝えても理解が難しいため、著者も対人関係のトラブルが起きやすい状況を察知して早期に対応するように心がけています。
そして、この時期に重要なことは、大人への信頼関係の構築と誤学習を防止することだと考えます。
大人との信頼関係がしっかりと育まれていくことで、その後のライフステージにおいて対人関係のトラブルは減っていくのだと感じますし、また、信頼関係のある大人が子どもの良い行動を強化していくことで徐々に対人関係が良好になっていくことも実感しています。
思春期の対応
基本的にこの時期になって、言葉で適切な行動の仕方を伝えること、相手の意図を言葉で伝えていくことが有効になっていくと考えられています。
つまり、抽象的に物事を考えられるようになるからこそ、相手の意図理解、嘘や冗談の理解、自分が言ったことを相手がどう受け取るのかという理解が可能になっていきます。
著者の療育現場では、小学校高学年頃になると、他者との関わり方がだいぶうまくなっていくという印象があります。
中でも、著書にあるように、言葉による抽象的理解の力が高まることで、人には様々な意図や気持ちがあるといった行動の背景理解が可能になるからだと感じます。
ここで大切なことは、思春期前までに豊富な対人関係の経験を積み上げていくことだと思います。
対人関係の力は、その前提に実体験という経験値が大切であり、経験があるからこそ、言葉の伝達の理解がより強まるのだと思います。
もちろん、学習において遅いということはないため、気づいた時期から始めていくことが重要だと言えます。
以上、【対人関係に苦手さを持つ発達障害児への支援】アセスメントと対応のポイントについて見てきました。
発達障害児の多くは対人関係の苦手さを抱えやすいと言われています。
まずは、対人関係の苦手さへのアセスメントを行い、その情報を基に支援に繋げていくことが大切です。
その中で、今回見てきたように、年齢・ライフステージに応じて対応方法を変える視点もまた重要だと言えます。
私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も療育現場で、子どもたちが良い対人関係を築いていけるように、アセスメントの視点、支援の視点に磨きをかけていきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
併せて、発達障害児の対人関係支援に関して参考になる記事を以下でも紹介しています。
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小嶋悠紀(2025)小嶋悠紀の「特別支援教育・究極の指導システム」③.教育技術研究所.

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