発達理解・発達支援・ブログ

人間の多様な理解と支援を目指して!

傷つき体験 対人関係

【傷つき体験のある子どもの対人関係と支援】療育経験を通して考える

投稿日:2023年10月5日 更新日:

療育(発達支援)の現場には、つい他児や大人に手が出てしまう、もの投げや暴言を吐くなど攻撃的な子どもも時々見られます。

著者も含め、こうした子どもに関わるスタッフは対応に苦慮し、心理的にも疲弊していくことがよくあるかと思います。

一方で、子どもの視点から見ると、こうした攻撃的・暴力的な行為は、やむにやまれぬ行動であるケースが多くあります(ほとんどそうだと言ってもいいと思います)。

中には、過去に〝傷つき体験″があった場合も多くあります。

 

それでは、傷つき体験のある子どもの対人関係にはどのような特徴があり、また、支援方法にどのようなものがあるのでしょうか?

 

そこで、今回は、傷つき体験のある子どもの対人関係と支援について、臨床発達心理士である著者の経験談も交えながら理解を深めていきたいと思います。

 

 

今回参照する資料は「小嶋悠紀(2022)小嶋悠紀の「特別支援教育・究極の指導システム」①.教育技術研究所.」です。

 

スポンサーリンク

傷つき体験のある子どもの対人関係と支援について

著書の中では、3つの視点を大切にしています(以下、著書引用)。

基本的な対応は、「カウンターを起こさせない」ことだ。

 

次に「信頼関係の構築」である。

 

最後に「Limit Testing」を知っている必要がある。

 


それでは、以上の3つの視点について具体的に見ていきます。

 

カウンターを起こさせない対応

傷つき体験のある子どもの中には、大人に対して反抗・反発がよく見られます。

カウンターとは、大人の指摘や注意に対して、反抗的態度や反発的な態度を取ることです。

この場合の対応は、著書にあるように〝カウンターを起こさせない″ことが基本になります。

具体的には、○○の言い方をすると子どもの刺激となりカウンターが生じるため、○○の言い方はしない、○○と言った際に子どもがカウンターをうってきたため付き合わないようにするなどです。

 

著者も子どもからカウンターを受けた経験が多くあります。

その度に、著者のどのような言動が刺激になったのかを改めて見直すようにしています。

また、カウンターをうってきた子どもに正面から向き合ってしまうとどちらも引き際が分からず子どもの興奮状態はより高まってしまいます。

カウンターへの対応には、冷静に対応することが非常に重要であると感じています。

 

 

信頼関係の構築

以下、著書を引用しながら見ていきます

信頼関係の構築で最も重要な点は「性格のアセスメント」である。

 

何がすきなのか。怒るときは、どのようなタイミングなのか。何にこだわりがあるのか。このような性格をしっかりとアセスメントできると、対応に余裕が出る。

 

著書の内容から、信頼関係を構築する上で非常に大切な点は、〝性格のアセスメント″を行うことだと記載されています。

傷つき体験のある子どもは、大人との信頼関係が希薄であり、大人への不信感が強いため関係修復が非常に大切です。

そのための手立てとして、〝性格を知る″という視点はとても大切です。

 

著者も信頼関係の構築には、子どもの性格を知ることがとても重要であると感じています。

これは例えば、同じ自閉症の特性をもつ子どもでも、興味の対象の違い、気持ちが乱れるときの発信の仕方の違い、こだわりの対象や強度の違いがあるからです。

こうした個々の状態像の違いを理解していくことは、子どもの性格の理解へと繋がり、さらに、子ども側から見ると安心できる大人だと認識されていくのだと思います。

 

 

Limit Testing

以下、著書を引用しながら見ていきます。

暴力的、反発的な子供は、「この人は、本当に自分を傷つけない大人なのか」ということをテストする期間がある。そのため激しく反抗したり、暴れたりする期間が続く。これを「Limit Testing」という。

 

著書の内容から、〝Limit Testing″とは、子どもが特定の人への信頼関係を試す時期だと言えます。

傷つき体験のある子どもは、関係性ができてきた大人を疑いはじめる時期が出てきます。

この大人を本当に信頼して大丈夫なのか?という不信感が最後まで払しょくできないという思いからです。

一方、信頼関係ができてきた大人側からするとこれまでの取り組みが後退したと感じます。

そのため、〝Limit Testing″を知っておくことで、暴力的・反発的な行動が急に目立ってきてもネガティブに捉えることが少なくなります。

これは、〝最後の審査・テストなのだ!″という捉え方をすることで冷静に対応できる場面が増えていきます。

 

著者もこの最後の段階については、失敗談が多くあったように思います。

つまり、関係が崩れてきたと思い焦って対応したり、ネガティブに捉えてしまうことで子どもとの関係性がまたギクシャクしはじめたりしたことがあります。

そのため、もっと早くから〝Limit Testing″について知っておけば良かった!と感じることがあります。

そして、著書にはこの〝Limit Testing″は1年以上の期間を要することもあると書かれています。

それだけ、傷つき体験からの回復には時間がかかるということです。

 

 


以上、【傷つき体験のある子どもの対人関係と支援】療育経験を通して考えるについて見てきました。

傷つき体験のある子どもの支援は難しことが多くあると現場にいて感じます。

しかし、支援の方向性を間違えなければ(大切な点をおさえて関わることで)必ず成果に繋がっていくのだと思います。

私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も子供たちが抱えているネガティブな感情の背景にも目を向けていきながら、より良い実践を行っていきたいと思います。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

 

 


参考となる書籍の紹介は以下です。

関連記事:「発達障害の支援に関するおすすめ本5選【初級~中級編】

関連記事:「発達障害の二次障害に関するおすすめ本3選【初級~中級編】

関連記事:「愛着障害に関するおすすめ本5選【初級~中級編】

 

 

小嶋悠紀(2022)小嶋悠紀の「特別支援教育・究極の指導システム」①.教育技術研究所.

スポンサーリンク

-傷つき体験, 対人関係

執筆者:


comment

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

関連記事

【発達障害児支援で必要な対人関係の力を理解する視点】療育経験を通して考える

著者は長年、発達障害など発達に躓きのある子どもたちへの療育をしてきています。 療育を通して、子どもたちは〝対人関係″の力を伸ばしていくことができると実感しています。 一方で、〝対人関係″と言っても、個 …

【発達障害児に見られる対人関係が発展しない場合の対応】6つのポイントを通して考える

著者は長年、療育現場で発達障害など発達に躓きのある子どもたちへの療育をしてきています。 発達障害児の中には、背景要因は多様でありながらも、〝対人関係がうまく発展しない・発展しにくい″ことがあります。 …