コミュニケーションの本質的な意味には〝共有する″といった意味があります。
子どもは、様々な共有経験を他者との関わりを通して行いながら、コミュニケーションを発達させていきます。
それでは、コミュニケーションの発達にはどのような過程があると考えられているのでしょうか?
そこで、今回は、コミュニケーションの発達について、3つのポイントを通して理解を深めていきたいと思います。
今回参照する資料は「藤野博(編)(2008)障がいのある子との遊びサポートブック 達人の技から学ぶ楽しいコミュニケーション.学苑社.」です。
コミュニケーションの発達について:3つのポイントを通して考える
著書には、コミュニケーションの発達について、3つのポイントが記載されています(以下、著書引用)。
1)情動の調律―気持ちのチューニング
2)意図的コミュニケーションー相手を意識して伝えること
3)共同注意―話題を分かち合うこと
それでは、次に、以上の3について具体的に見ていきます。
1)情動の調律―気持ちのチューニング
生まれたばかりの赤ちゃんは、泣きや微笑みなど様々な発信手段を通して、他者とコミュニケーションを取っています。
一方で、赤ちゃんの発信には明確な意図があるわけではありません。
関わり手が、赤ちゃんの様子を見て、赤ちゃんの思いを汲み取りながら(想像しながら)、不快な感情を取り除き、快の感情を共有していく段階だと言われています。
この点について、以下、著書を引用しながら見ていきます。
そのような赤ちゃんの感情の状態を感じ取り、それを心地よく落ちついた状態に保とうとしてなされる大人の行為を情動調律といいます。
このように、コミュニケーションの発達の初期には、〝情動調律″といった言葉以前の様々な気持ち・情動(感情)の共有が見られる段階だと言えます。
赤ちゃんの気持ちを汲み取り、その気持ちに合わせていくことを〝チューニング″と表現することもあります。
関わり手の大人が、赤ちゃんの気持ちに応答していくことで、気持ちの共有(繋がり)が生まれたり、誰かに○○を発信したいといったコミュニケーションの動機付けにも繋がっていくと考えられています。
2)意図的コミュニケーションー相手を意識して伝えること
生まれたばかりの赤ちゃんには明確な発信意図はありませんが、先に見た〝情動調律″の段階を通じて、徐々に発信意図が明確になっていきます。
関わり手にとっても、子どもがどのような意図(お腹が空いた、かまってほしいなど)をもって、呼びかけているのかが汲み取りやすくなります。
一方で、初期の発信意図は、関わり手、つまり、大人の解釈に依存していることから〝聞き手効果段階″などと言われています。
その後、〝聞き手効果段階″を経て、次の段階に入っていきます(以下、著書引用)。
相手を意識した意図的なコミュニケーションが生後9~10カ月頃から始まります。このような発達段階は意図的伝達段階などと呼ばれています。
ことばで表現できる段階は命題伝達段階なとど呼ばれます。
著書の内容から、生後9カ月頃から子どもは、視線や指差しなどの非言語的な伝達手段を活用して、他者に自分の意図を伝えるようになっていきます。
これは〝意図的伝達段階″と言われています。
そして、非言語的要素から言語を使って他者に自分の意図を伝える段階を、〝命題伝達段階″と言います。
3)共同注意―話題を分かち合うこと
先に見た〝意図的伝達段階″の時期、つまり、生後9カ月頃から、コミュニケーションの基盤を作るうで非常に重要な〝共有注意″行動が見られるようになります。
〝共有注意″行動とは、他者とある対象を共有する行為を指します。
子ども‐対象‐他者(大人)といった関係の成立から〝三項関係″の成立とも言われています。
以下、〝共有注意″について、著書を引用しながら見ていきます。
共同注意の力は生後9カ月頃から1歳半頃までの間に急速に発達します。共同注意の力が芽生えるとそれを追って象徴機能が育ち、ことばが育つ土台が準備されます。
著書にあるように、〝共同注意″は〝象徴機能″といった言葉の育ちの基盤を形成していくものであり、子どもは〝共有注意″行動を通して、後の言葉の力を高めていくことができると考えられています。
関連記事:「【言葉の発達で大切な〝象徴機能″を育てるために必要なこと】療育経験を通して考える」
関連記事:「【共同注意の発達過程について】5つの種類を通して考える」
以上、【コミュニケーションの発達について】3つのポイントを通して考えるについて見てきました。
子どものコミュニケーションの発達は、言葉を話す前の段階(他者との情動を介した繋がりや注意の共有など)にはじまり、それが後の言葉の発達へと繋がっていきます。
私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も療育経験を通して、子どもたちの言葉の発達に少しでも貢献していけるように、コミュニケーションへの理解と支援方法につても理解を深めていきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
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藤野博(編)(2008)障がいのある子との遊びサポートブック 達人の技から学ぶ楽しいコミュニケーション.学苑社.