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心の理論

【〝うそ″はどのように発達するのか?】心の理論の視点から考える

投稿日:2023年4月19日 更新日:

「〝心の理論″とは、他者の意図、欲求、願望、信念、知識といった心の状態を推論する能力」のことを言います。

心の理論にも発達段階があり、一次の心の理論から二次の心の理論へと段階を踏んで人の様々な心の状態を理解できるようになっていきます。

心の理論が発達していく中で、〝うそ″も段階を踏んで発達していくと言われています。

 

それでは、〝うそ″はどのように発達していくのでしょうか?

 

そこで、今回は、〝うそ″はどのように発達するのかについて、心の理論の視点から考えを深めていきたいと思います。

 

 

今回参照する資料は「林創(2016)子どもの社会的な心の発達 コミュニケーションのめばえと深まり.金子書房.」です。

 

 

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〝うそ″はどのように発達するのか?

著書の中では、〝うそ″に関する先行研究より、子どもに見られる〝うそ″の三つのレベル(段階)を説明しています。

 

三つのレベルが以下です(以下、著書引用)。

レベル1:最初のうそ(primary lies) 3~4歳頃

レベル2:第二のうそ(secondary lies) 4~6歳頃

レベル3:第三のうそ(tertiary lies) 7~8歳頃

 


それでは、次に各段階について見ていきます。

 

レベル1:最初のうそ(primary lies) 3~4歳頃

以下、著書を引用しながら見ていきます。

罰を避けようとして、事実と違う発言をするうそで、3歳頃から見られます。(中略)この年齢の子どもでは一貫させることが困難です。

 

著書の内容から、レベル1の〝うそ″は、3歳頃から見られはじめ、この段階の〝うそ″は罰を避けるなど、事実と異なることを言う〝うそ″であり、発言内容に一貫性がないとされています。

例えば、子どもが親のいないところで勝手におやつを食べてしまったことで、後々、親からそのことを問われ、食べてないと事実を隠す、つまり、罰を受けるかもしれないことを回避するためにつく〝うそ“などがあります。

しかし、この段階の〝うそ″は、ついた〝うそ″に一貫性を持たせることが難しいため、例えば、別の人が質問すると食べたと答えるなどの特徴があります。

また、心の理論の獲得前ということもあり、他者が意図的についてきた〝うそ″を見抜く事はできないと考えられています。

 

レベル2:第二のうそ(secondary lies) 4~6歳頃

以下、著書を引用しながら見ていきます。

このレベルへの移行は、一次の心の理論の発達が大きな鍵を握ります。相手の心の状態に注意が向き、誤信念を生み出す意図的なうそがつけるようになります。

 

著書の内容から、レベル2の〝うそ″は、4~6歳頃といった、まさに一次の心の理論の獲得期に見られるものであり、この時期には、相手に意図的な〝うそ″をつくことができるようになります。

また、相手がつく虚偽の発話の区別も理解可能となります。

レベル1の〝うそ″が、罰を回避するもの、悪いことを隠そうとする行為であったのに対して、レベル2の〝うそ″は、相手の心の状態を推論した上で意図的につく〝うそ″、そして、相手が意図的につく〝うそ″も見抜けるようになっていきます。

 

引き続き著書を引用しながら見ていきます。

この時期に子どものうその定義は大人と違うことがあり、勘違いの状態もうそと見なす興味深い現象も見られます。

 

著書の内容から、レベル2の〝うそ″の他の特徴として、勘違いの状態も同様に〝うそ″と見なす現象が見られると記載されています。

このように、レベル2の〝うそ″は、心の理論の獲得に伴い、徐々に相手の心の状態にも注意を向けながら、〝うそ″をつくことができるようになってきます。

 

レベル3:第三のうそ(tertiary lies) 7~8歳頃

以下、著書を引用しながら見ていきます。

うそが洗練され、一貫性のあるうそをつけるようになります。(中略)他者を気遣う「向社会的なうそ」もつけるようになります。(中略)うそと冗談(皮肉)の区別といった高度な理解もできるようになるのです。

 

著書の内容から、レベル3の〝うそ″は、二次の心の理論の獲得期に相当し、この時期の〝うそ″は、向社会的な〝うそ″をつけるようになり、また、〝うそ″や冗談の違いなども理解できるようになります。

また、レベル2とは異なり、〝うそ″の内容にも一貫性が出てくるようになります。

このような〝うそ″の特徴として、二次の心の理論の獲得が影響しており、状況を踏まえた自他の様々な心的状態を推論する力が高まることで上記のような〝うそ″がつけるようになると考えられています。

例えば、大切な相手の秘密を守るために〝うそ″をつき続けたり、相手を傷つけないための〝うそ″がつけるようになります。

 

 


以上、【〝うそ″はどのように発達するのか?】心の理論の視点から考えるについて見てきました。

心の理論が発達すると、〝うそ″の発達も段階を踏んで進んでいきます。

そして、〝うそ″も社会生活を送っていくために、学習してくことが必要だと感じます。

私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も心の理論の視点から子どもたちの発達の状態を理解する力を身につけていきながら、より質の高い療育を目指していきたいと思います。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

 

 

関連記事:「【人はなぜ〝うそ″がつけるようになるのか?】心の理論の発達から考える

関連記事:「【〝うそ″と〝冗談″の違いとは何か?】二次の心の理論の発達から考える

 

林創(2016)子どもの社会的な心の発達 コミュニケーションのめばえと深まり.金子書房.

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