自閉症(自閉症スペクトラム障害:ASD)児・者への支援として、様々なものがあります。
例えば、構造化、認知行動療法、ソーシャルスキルトレーニング、ペアレントトレーニングなどが有名です。
それでは、昔からある自閉症児・者支援で有名な構造化とは一体どのような支援方法なのでしょうか?
そこで、今回は、自閉症の構造化とは何かについて、構造化の必要性・種類・具体例を療育経験からわかりやすく解説していきます。
※この記事は、臨床発達心理士として10年以上療育現場に携わり、修士号(教育学・心理学)を有する筆者が執筆しています。
今回参考にする資料として、「下山晴彦(監修)(2018)公認心理師のための「発達障害」講義.北大路書房.」を参照していきたいと思います。
構造化とは何か
以下、著書を引用しながら見ていきます。
①構造化について
構造化とは、環境を理解しやすく作り直すことです。「ここは○○する場所」「○○の次に○○をする」というように、環境の意味がわかるように作り直し、意味を共有することです。最終的に、自閉症の方が自分で判断して、自発的に行動することを目標としています。
TEACCHとは「Treatment and Education of Autistic and related Communication-handicapped CHildren」の略のことを指し、アメリカのノースカロライナ州で1972年から行われている自閉症への支援プログラムになります。
TEACCH構造化において大切なことは、視覚的情報から空間や時間についての意味を理解できるように環境を調整することです。
もともと自閉症の認知機能を踏まえて作られたものになります。
自閉症の認知機能として、視覚的情報に強いというものがあります。逆に、苦手なものとして、全体の状況を把握すること、マルチタスクなどです。
そのため、曖昧な環境から意味をくみ取ることが難しいため、得意な視覚的情報による環境設定を心掛ける必要があります。
構造化はなぜ必要か
以下、著書を引用しながら見ていきます。
②なぜ構造化が必要?
構造化が必要な理由として、自閉症の認知の偏りを補うためにあると考えられています。認知の偏りには、「心の理論」の障害、中枢性統合の弱さ、実行機能の障害があり、こうした認知特性を補うものに構造化があります。
繰り返しになりますが、構造化は自閉所の認知特性を踏まえて作られたものであるため、自閉症の認知特性をよく理解する必要があります。
また、自閉症も自閉症スペクトラム障害といったようにスペクトラムですので非常に個人差があります。
自閉症の認知特性についての詳細(心の理論・中枢性統合・実行機能の特徴)は、「自閉症の認知機能について-心の理論・中枢性統合・実行機能-」の記事に記載しております。
構造化の種類と内容について
以下、著書を引用しながら見ていきます。
③構造化の種類と内容
物理的構造化:空間と活動を対応させる。空間の意味をわかりやすくする。活動に注意が向くように工夫する。
スケジュール:「いつ」「何をする」「これが終わると何があるのか」といった情報を視覚的に伝える。
ワークシステム:課題の流れを一定にし終わると、フィニッシュボックスに入れるなどの方法で、「何を」「どれだけ」「どのように」やるのか、終わったら何があるのかを視覚的に伝える。
視覚的構造化:視覚的明瞭化・組織化によって、課題の指示の意味を明確にする。
上記の引用内容を簡単に整理して見ていきます。
物理的構造化
物理的構造の例として、Aのスペースは体を使って遊ぶ場所、Bのスペースはゆっくりおもちゃで遊ぶ場所、Cのスペースは机に向かって作業する場所など環境を調整するなどです。
著者が所属する放課後等デイサービスの事業所でも、空間を区切ること、それぞれの空間は何をする場所なのかをできるだけわかりやすく設定するように心掛けています。
空間を仕切るためにパーテーションの活用や部屋の入り口にイラストと言葉を用いたカード(○○の部屋を使っているor〇〇の部屋を使っていない、この部屋は〇〇する部屋)を貼っています。
スケジュール
スケジュールの例として、一日の活動の流れを時系列で示す。言葉だけではなく、写真もつけると理解しやすいなどです。
著者が所属する放課後等デイサービスの事業所では、大きなホワイトボードに、一日のスケジュールと送迎順などを事前に提示しています。
また、個別に必要なスケジュールも組み立てるようにしており、その場合には、個々のスケジュールを視覚化するようにしています。
ワークシステム
ワークシステムの例として、課題の箱を左側、終わったら右の箱に入れることで、残りの課題の量と達成できた課題の量が視覚的に理解できなどがあります。
著者が所属する放課後等デイサービスでも、片付けボックスすなどを提示することで、子どもたちの片付けがスムーズになった例は多くあります。
視覚的構造化
著者のコメント
著者自身、現在、放課後等デイサービスで自閉症の方への療育をしていますが、構造化からの支援の重要性を感じています。
繰り返しになりますが、よく行っているものには、物理的構造化とスケジュールがあります。
スケジュールは、子どもたちが最も目をとめやすいスペースに大きなホワイトボードを置き、そこに一日の流れや、送迎順などを書いています(写真も使用)。
子どもたちは、自分からその日の予定や送迎順を確認する様子が見られたり、逆に、質問や要望をしてくるケースもあります。
難しいのは物理的構造化です。今の事業所は、活動の目的・内容に応じて空間を分けています。子どもたちも日々成長していくので、それに伴い遊びの内容が変わる、遊びの集団も変わるため、そうした成長やメンバー構成に応じて物理的構造化を再度見直す必要があるからです(再構造化とも言います)。
自閉症の子どもと関わっていると、視覚的な理解に秀でいることがよくあるため、視覚的な情報がどのような意味を与えるのかという想像と創造が必要になると感じます。
構造化に関するお勧め本
それでは最後に構造化についてお勧め本を記載します。
【自閉症児のためのTEACCHハンドブック】
TEACCHを学ぶための入門書です。日本国内のTEACCHの実践例も記載されており、実際のTEACCHの取り組みの写真が豊富に記載されています。
【本当のTEACCH:自分が自分であるために】
ノースカロライナ大学ではじめられたTEACCHプログラムについて、基礎から実践、専門偏までをわかりやすく解説してあります。写真などは少なめですが、理論など知識を学びたい人にはお勧めです。
【自閉症児のための絵で見る構造化】
学校や家庭、就労場所での構造化についてその多くがイラストで示されているビジュアル図鑑です。
【自閉症児のための絵で見る構造化パート②】
自閉症児のための絵で見る構造化の続編になります。同じくイラストが多いビジュアル図鑑になっています。
以上、【自閉症の構造化とは何か?】必要性・種類・具体例を療育経験からわかりやすく解説について見てきました。
自閉症児・者の認知特性を理解して、その人に応じた分かりやすい環境を提案していく上で、構造化の視点はとても大切だと言えます。
今後も私自身、少しでもより良い療育ができるように様々な知識を吸収して実践していきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
併せて、構造化支援の基本と構造化において重要な合意の意味を解説した記事は以下で紹介しています。
関連記事:「【自閉症支援における構造化の基本】安定させることと“変化を最小限にする”2つの視点」
関連記事:「【構造化だけでは不十分?】自閉症支援における“合意”の重要性を考える」
自閉症を理解する上でのお勧め書籍を以下で紹介しています。
関連記事:「【臨床発達心理士が厳選】自閉症に関するおすすめ本:初級~中級者向け」
下山晴彦(監修)(2018)公認心理師のための「発達障害」講義.北大路書房.


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