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【療育では何を目指せば良いのか?】療育の目標について考える

投稿日:2022年6月5日 更新日:

 

著者は長年、発達に躓きのある子どもたちと関わってきています。

長年の療育を通してよく考えるものに、‟療育において何を目指していけば良いのか?”といった問いです。

もちろん、関わる子どもたち一人ひとりは違いますので、10人いれば10通りの目標が出てきます。

こうした個別性について考えていくことは必要不可欠ですが、すべての子どもたちにおいて共通する目標は何かということも考えていく必要があります。

 

それでは、療育において、何を目標に取り組んでいくことが大切になるのでしょうか?

 

そこで、今回は、療育では何を目指せば良いのかについて理解を深めていきたいと思います。

 

※この記事は、臨床発達心理士として10年以上療育現場に携わり、修士号(教育学・心理学)を有する筆者が執筆しています。

 

 

今回、参照する資料は「平岩幹男(2012)自閉症スペクトラム障害:療育と対応を考える.岩波新書.」です。

 

 

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【療育では何を目指せば良いのか?】療育の目標について考える

以下、著書を引用しながら見ていきます。

ASD、特に高機能自閉症や高機能化したカナー型の自閉症を抱えている場合の目標は、自分に自信の持てる状況、すなわちセルフ・エスティームを高い状況にするということです。(略)もう一つは、社会で生きていけるようにすることです。これは社会の枠組みの中で生きていくスキルや社会生活習慣を身につけることだけではなく、自分で稼ぐことが含まれます。

 

著書の内容には、療育の目標として、セルフ・エスティーム(自尊心・自己肯定感)を高めていくこと、そして、社会の中で生きていく力を身につけていくことの2点が記載されています。

著書では、ASD(自閉症スペクトラム障害)を中心に取り上げていますが、この療育の目的は発達障害全般、そして、子育て全般に共通するものだと言えます。

 

 


以下、この2点について、さらに具体的に見ていきます。

 

セルフ・エスティーム(自尊心・自己肯定感)について

セルフ・エスティーム(自尊心・自己肯定感)は、自分に対する自信のことを指します。

著者は長年の療育経験を通して、対人・コミュニケーション能力や、認知能力や運動能力の向上など、様々な視点から療育の重要性を考えてきました。

様々な能力を高める取り組みに関して、本人の興味関心を活用しながら段階を踏んで学習していけるようにサポートしていくことはとても大切なことです。

また、発達特性に対して苦手な所をサポートしていきながら(得意な所も伸ばし)、特性への自己理解を促していきながら、自ら環境を整えていく力を育むこともとても大切です。

このように個々の様々な能力を育むこと、そして、特性への自己理解を促すことは、療育においてとても大切な目標でもあります。

こうした個別のサポートに対して、一貫して大切だと思うのは、セルフ・エスティームを高い状態に保つということです。

個別の能力を伸ばすにせよ、苦手な所をサポートするにしても、子どもたち一人ひとりの良さや、子どもたちの活動での様子や頑張りを理解し褒めるといった関わりが、療育で関わる人すべておいて必要なものだと言えます。

そして、このような関わりの視点がセルフ・エスティームの向上に繋がり、セルフ・エスティームの高さは、後の行動や日々の生活に大きくプラスの影響を与えていきます。

 

 

社会で生きていけるようにすることについて

他の著書の中もありますが、療育の目標とは、社会の中で自分の力でやっていく能力を育むことでもあります。

自分の力とは、できない所を人に頼る力ももちろん含まれています。

重要なことは、社会の中で他者の力をかりながら、自分でできるところは自分の力でやっていくといった姿勢・行動を身につけていくことだと言えます。

そのためには、日々の生活習慣を整えることや、様々な社会的スキルを身につけていくことが大切です。

そして、上記の内容に加えて大切なことは、生きがいや、やりがいなどがその人の人生においてあるかどうかだと言えます。

例えば・・・

○○さんにとって、●●している時が楽しい!

○○さんにとって、●●をモチベーションに日々を生きている!

○○さんにとって、●●をしていることにやりがいを感じる!

など、この●●の中に入るものがあるかどうかが大切です。

 

療育では、こうした●●という経験をつくること、または、一緒に探すこともまた重要になってきます。

生きがいや、やりがいのあることがあると、その人の人生は大きく変わります。

その内容については、周囲との比較ではなく、その人にとって価値があるかどうかがとても大切です。

 

 


以上、【療育では何を目指せば良いのか?】療育の目標について考えるについて見てきました。

療育の目標には、個々に応じて様々なものがあると同時に、今回見てきたように多くの子どもたちに共通する目標もあると言えます。

私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も療育を通して、セルフ・エスティームを高める関わり、社会の中で生きていく力を育む関わり、そして、その人なりの生きがいややりがいのあることを一緒に共有したり、探す手伝いをしていきたいと思います。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

 

 


療育に関するお勧め書籍紹介

関連記事:「療育(発達支援)に関するおすすめ本【初級編~中級編】

 

平岩幹男(2012)自閉症スペクトラム障害:療育と対応を考える.岩波新書.

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