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境界知能 支援

境界知能の理解や支援の難しさについて

投稿日:2022年5月28日 更新日:

境界知能とは、IQ、つまり知能指数でいうと、70~84のゾーンを指し、これは人口全体の14%(クラスに約5人)いる計算になります。

知的障害とは、IQが69以下のゾーンを指します。知的障害は、全人口の約2%(クラスに約1人)になります。

現在の知的障害の判定は、IQよりも社会適応の面が重視される傾向にあります。

こうして割合だけでみると、知的障害よりも境界知能の方がとても多いことがわかります。

 

それでは、こうした境界知能など一般的な知能指数よりも少し低い状態の人への理解や支援の現状はどのようになっているのでしょうか?

 

今回は、著者の経験も含め、境界知能の理解と支援の難しさについてお伝えします。

 

 

今回、参照する資料は「本田秀夫(2013)子どもから大人への発達精神医学:自閉症スペクトラム・ADHD・知的障害の基礎と実践.金剛出版.」です。

 

 

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境界知能の理解や支援の難しさについて

以下に著書を引用します。

近年では、知的障害を伴わない発達障害を対象とした支援の施策が急速に進められつつある。今、こうした施策が最も手薄となっているのが、軽度精神遅滞および境界知能の人たちである。

著者の内容から、知的障害を伴わない自閉症スペクトラム障害(ASD)やADHD、学習障害などの発達障害への理解と支援が急速に進む中、境界知能への支援は非常に遅れているという現状があります。

ここでいう軽度精神遅滞(現在は軽度知的障害へと変更)とは、概ねIQが50~69のゾーンを指しますので、境界知能よりも少し低いIQということになります。

近年、目覚ましく発達障害への理解や支援は進んでいます。発達障害という言葉は、日常の会話の中でも良く耳にするようになりましたし、メディやネット、書籍などの情報量の多さからも非常に社会の中で認識される機会が高まっています。

一方で、境界知能の人は、何となく認知能力(物事を理解する力)の面で少し遅れがあるという状態のせいか、社会の中で認識されることが少ないといった実態があります。

 

以下、再び著書を引用します。

軽度精神遅滞や境界知能の子どもたちは、家庭においても学校においても、他の子どもたちよりわずかずつ遅れを取りながら参加し続ける場面が圧倒的に多い。このため、自己評価が低い形で固定しやすい。

著者の内容から、境界知能の子どもたちは、社会の中で周囲との少しのズレや遅れがあり、その状態が持続するため、低い自己評価をとりやすい傾向があります。

こうした、低い自己評価が続くと、うつや引きこもりなど二次障害へのリスクも高くなります。

社会の中で知的レベルの顕著な遅れや発達特性が顕著に目立つと、本人の苦労は多いと思いますが、その分、周囲からの気づきや理解と支援を受けられる可能性は高まります。

しかし、境界知能の人は、少しのズレがあるために、理解や支援を受けにくく、それに加え、本人も社会の中で何となくうまくいかないという漠然とした感覚が続くことは、社会といった環境面と本人の自己理解や工夫など環境因子と個人因子の双方からうまく行かない状態が続くということになります。

つまり、境界知能の人は、環境面と個人面の両方からの気づきや理解を得にくいため、理解や支援を受けづらいという実態があります。

 

 


それでは、次に著者の経験から境界知能について考えていきたいと思います。

 

著者の経験談

境界知能である男性Aさんは、小学校時代に通常級に在籍してました。

Aさんは、周囲から浮いた子、変わった子として見られていましたが(想定です)、持ち前の素直さや優しさもあり、何となくクラスに溶け込んでいました。

学校の勉強も遅れながらも地道に勉強を重ね何とかついて行ってました。

また、運動や集団活動も苦労はしながらも、何とか周囲に合わせていたという感じであり、クラスメイトの中で手伝ってくれる子が複数いるなど、Aさんの苦手なことを何となく理解しサポートしくれる環境があったことで小学校時代は乗り切ることができました。

問題が顕著になったのは、中学校以降です。具体的には、小学校の高学年から問題の兆しは高まっていたように感じます。

中学校もまた、Aさんは通常級に所属しました。

その中で、周囲とのズレが少しずつ目立ってきました。それは、勉強などの学習面を始め、運動や集団生活など、おそらく全領域で見られていたと思います。

その後、Aさんは心理検査(ウェクスラー式知能検査)を受け、境界知能であったことが判明します。

判明したといっても、知能検査を受けただいぶ後に著者がそのように解釈したという感じです。

今振り返ってみると、Aさんは境界知能であるがゆえに、周囲との間でできる・できない、溶け込める・溶け込めないなど、非常にグレーな状態を行き来していたのだと思います。

現在のAさんは、こうした知能の面からの自己評価の理解が高まり、自分ができること・できないことなどの判断ができるようになりました。

そのため、これまでのうまくいかなかった要因もわかるようになり、自らの発信でサポートを受けやすい状態になっています。

 

 


しかし、こうした境界知能の人への理解や支援はまだまだ途上であると実感しています。

私自身、これからも境界知能という生きづらさをもった人たちへの理解を深め、より良い支援を届けていけるように学びを継続していきたいと思います。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

 

関連記事:「境界知能とは何か?療育現場の実体験を通して考える

 

本田秀夫(2013)子どもから大人への発達精神医学:自閉症スペクトラム・ADHD・知的障害の基礎と実践.金剛出版.

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