自閉症(自閉スペクトラム症:ASD)の人たちは、興味関心が狭いことが特徴としてあります。
そのため、彼らの世界を広げることは難しい場合があります。
著者は療育現場で自閉症児との関わりは多くあり、確かに興味関心は限定していると感じる一方で、興味関心の幅を広げていくことは可能だと感じています。
それでは、自閉症児の興味の世界を広げていくためにはどのような関わり方が大切になるのでしょうか?
そこで、今回は、自閉症児への支援について、臨床発達心理士である著者の意見も交えながら、興味の世界を広げるために大切な関わり方について理解を深めていきたいと思います。
今回参照する資料は「加藤博之(2023)がんばりすぎない!発達障害の子ども支援.青弓社.」です。
自閉症児の興味を広げるために大切な関わり方
以下、著書を引用しながら見ていきます。
「興味がもてる」「もてない」は紙一重といえるのかもしれません。この人は面白いと思ってもらえれば、それが子どもとつながるチャンネルになり、少しずつでも話の内容に興味を示してくれるようになります。
ほかにも、いま興味をもっていることを中心に、その周辺に波及させていくことで、興味を広げることができます。
子どもの興味に寄り添い、少しずつでも広げていくことを心がけることが大切です。
著書の内容から、自閉症児の興味の世界を広げていくために大切な関わり方として、以下のステップが大切だと言えます。
①自閉症児が興味を持てる存在になる
②子どもと繋がるチャンネルを見つける
③興味のチャンネルを基点に世界を広げていく
それでは、①から③について著者の経験も含めて見ていきます。
①自閉症児が興味を持てる存在になる
自閉症児にとって魅力的な存在とは、自閉症が持つ独特な世界を理解してくれる人だと思います。
当然ながら、自閉症児は個々によって興味の内容は異なります。
一方で、興味が非常に狭いことが特徴としてあります。
興味の世界がよくわからなくても、興味の世界を知ろうとする人は自閉症児にとって魅力的に映ります。
著者はこれまでの療育経験を通して、自閉症児の世界に自分が入り込もうとすることで、少しずつ彼らの世界への入り口が見てくることがありました。
②子どもと繋がるチャンネルを見つける
自閉症児には、個々によって様々な世界があります。
興味の入り口が少しずつ見えてきたら、その後は、彼らのコアとなる世界のチャンネルを探す必要があります。
例えば、笑いのツボ、○○の領域の知識(植物、虫、電車、車、ゲーム、アニメ、音楽など)のうち、彼らがとても大切にしている世界を探し出すことです。
著者がこれまで関わったことのある自閉症児には、カレンダー、数字、電車、車、虫、マリオ、クレヨンしんちゃん、ドラえもん、ガソリンスタンドのマーク、道路標識、歴史、など特定の領域において突出した知識を持っている子どもたちが多くいました。
こうした興味のチャンネルを探し出し、そのチャンネルを介して会話のやり取りを増やしていくことが大切だと思います。
③興味のチャンネルを基点に世界を広げていく
自閉症児の興味のチャンネルが見つかったら、そのチャンネルを基点に世界を広げていける可能性が出てきます。
例えば、電車好きであれば、段ボールやペーパークラフトで電車作り、マリオ好きであれば、マリオの絵を描いてストーリーへと発展させていく、虫好きなら図鑑で調べて実際に取りにいく、などどれも著者が行ったことのあるものです。
世界を広げることを難しく考えずに、+アルファ位の要素を加算していくだけでも良いと思います。
こうした積み重ねがその後の子どもたちの成長に大きく貢献していくことは療育を通して実感しています。
以上、【自閉症児への支援】興味の世界を広げるために大切な関わり方について見てきました。
自閉症児の興味の世界が狭い背景には、〝弱い中枢性統合″などの特徴があります(詳細は以下の関連記事を参照して頂ければと思います)。
自閉症児の興味の世界を広げる上で大切なことは、マジョリティの世界に合わせることを促すのではなく、自閉症児といったマイノリティの世界の扉をノックして入り、知ろうとする姿勢がカギになると思います。
私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も療育現場で関わる子どもたちの興味の世界を広げていけるように、子どもたちの興味の対象を知ろうとする姿勢を忘れずに持ち続けていきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
関連記事:「【自閉症の中枢性統合の特徴について】療育経験を通して考える」