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コミュニケーション障害 発達障害

コミュニケーションの障害を運動と知覚の面から考える

投稿日:2020年5月30日 更新日:

発達障害の人は、コミュニケーションなど人との会話において難しさを持っていることがよく知られています。また、相手の意図の理解が難しいため、場違いな解釈や意見を述べてしまうこともあります。

こうした特徴は特に自閉症スペクトラム障害に見られる特徴であり、コミュニケーションの障害や心の理論の障害などと言われることがあります。

心の理論の障害とは、相手の意図や思いをくみ取ることが難しいことを説明した理論で、対人関係や社会性の観点から重要だとされています。

私自身、子どもから大人までの発達障害のある人たちと関わってきた経験から、こうした困難さに直面する機会が多くありました。

その中で、発達障害のある人たちは運動や知覚に独特な様相を示すことがよく知られています。

発達理論でいうとコミュニケーションや心の理論を獲得する以前に、感覚や知覚の発達があります。

これらを加味すると、発達障害の人たちは感覚や知覚の発達に特有のパターンがあり、それもあってコミュニケーションや心の理論などの獲得が難しいといった解釈もできるのではないかと思います。

 

そこで、今回はコミュニケーションの障害について運動と知覚の面から考えることの重要性や、私がその視点への仮説をなぜ持つに至ったのか、その経緯についてお伝えしていこうと思います。

 

 

今回参考にする資料は、「小西行郎(2011)発達障害の子どもを理解する.集英社新書.」を参照していきたいと思います。

 
 

 

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コミュニケーション障害を運動と知覚の面から考える

この著書の中で、<コミュニケーションの障害を解く鍵は運動と知覚にある>という内容があります。

この内容に関して以下、重要だと思う点を引用したいと思います。

 

本章で紹介したように、「発達障害の子どもには運動や知覚の異常が見られる」「運動や知覚の異常はコミュニケーションの障害に先立って出現する」との報告が国内外で出始めています。

 

私自身は、「胎児期に生じる脳、運動、知覚の異常が、新生児期以降にコミュニケーションの障害を引き起こし、本格的な集団生活が始まる幼児期になって社会性の問題に発展する」という一つの仮説を立てています。

 

これが本当なら、私たちが幼児期以降に見ている発達障害児のコミュニケーションの障害と、その後に引き起こされる社会性の問題は、「胎児期に始まる脳、運動、知覚、認知の発達異常につづく二次障害」、あるいは「そのプロセスがほぼ完成された像としてあらわれたもの」かもしれないのです。

 

 

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著者のコメント

この著書は今から10年ほど前に出版されたもので、当時私はすぐに購入した記憶があります。

当時は、発達障害とは?といった漠然とした疑問や知識を欲しており、それを知るために購入したため、今回引用した内容に関しては特別何か引っかかるという感覚はなかったように思います。

私がこの内容に関して関心を持つようになったのも、未就学児の重度のお子さんたちと療育現場での関わりと、その後、大人も含めた知的にグレーゾーンや高機能といった発達障害の人たちとの関わりなどの体験からきています。

重度のお子さんたちと関わっていると、言葉を通したコミュニケーション前の発達段階を歩んでおり、まさに、感覚や知覚といった世界が前面に出ています。

例えば、遊び一つとっても、砂や水の感触を長い時間触って遊ぶ様子や、風船やシャボン玉が飛ぶ様子をじっくり見て遊ぶお子さんも多くいました。

その後、知的にグレーゾーンや高機能と言われる発達障害の人たちとの関わりが増えてきましたが、特に注目したのが手先の不器用さや体の使い方がどこかぎこちないなどの行動特徴が多く見られたことです。

また、音や匂いに敏感であったり、鈍感なお子さんたちも多くいました。そして、こうした特徴は子供だけではなく成人の方にも見られます。

こうした経緯を得て、現在、コミュニケーションの障害などと言われる人たちの中にも、感覚・知覚の問題があり、それが一次的な障害となり、二次的にコミュニケーションの障害となっているという仮説が経験側的にもあるのではないかと考えるようになりました。

私たちは、発達特性というとすぐに社会性やコミュニケーションの障害などを思い浮かることも多くあるかと思いますが、実はその下の層に運動や知覚の発達があるという認識も必要なのだと思います。

こうした下の層に上の層が積み重なってくるという考え方は発達的な視点でもあります。逆に、言えば、下の層に何か不具合があると上の層にも影響を与えるということになります。

こうした発達的な視点に立った理解は発達障害のある人たちの困難さを理解したり、支援していく上で重要な考え方になります。

 

 


今後も様々な視点から人の発達のつまずきに対して仮説を立てていけるように経験と知識から得る学びを大切にしていこうと思います。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

 

小西行郎(2011)発達障害の子どもを理解する.集英社新書.

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-コミュニケーション障害, 発達障害

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