発達理解・発達支援・ブログ

人間の多様な理解と支援を目指して!

実践 理論 療育

【理論と実践の関係について】療育現場での実践を通して考える

投稿日:2023年3月3日 更新日:

著者は長年、療育現場で発達障害など発達に躓きのある子どもたちへの支援をしています。

現場での実践経験の重要性を感じると共に、理論から学ぶ視点の大切さも感じています。

 

それでは、理論と実践にはどのような関係があるのでしょうか?

 

そこで、今回は、理論と実践の関係について、臨床発達心理士である著者の療育現場での実践を通して考えを深めていきたいと思います。

 

 

スポンサーリンク

理論と実践とは何か?

理論と実践についてのそれぞれの定義を見ていきます(Wikipedia引用)。

 

理論について

個々の現象を法則的、統一的に説明できるように筋道を立てて組み立てられた知識の体系

 

以上の定義から、〝理論″とは、現象を法則的・統一的にまとめた知識の体系と言うことが言えます。

著者が関わる療育に関連するものだと、様々な発達障害の特性を説明したもの、発達段階を説明したもの、愛着理論、感覚統合理論、などがあるかと思います。

知識の枠組みの大小は異なりますが、〝理論″とは、ある現象を説明した知識の体系ということは納得できます。

つまり、ある理論を学ぶことで、様々な現象を説明できるなど応用性があるというものだと思います。

もちろん、人間は個々に違いがあるため、特定の理論からすべてを説明することは不可能ですが、部分的な理解(それがある場合には非常に重要なもの)には役立つと感じています。

こうした意味で、〝理論″は〝トップダウン的思考″に役立つのだと思います。

 

実践について

一般に、自然や社会に対する人間の「働きかけ」のことで、抽象的思弁としての理論に対比される。ただし、広義の実践においては理論も含まれる。

 

以上の定義から、〝実践″とは、直接的に何らかの対象に〝働きかける″ことであり、理論と対比的に使われるものだと言えます。

著者の療育現場では、日々、実践が行われています。

実践という言葉の持つ意味を、人間への〝働きかけ″といった広義の意味で捉えると様々な実践内容があるのだと思います。

それは、例えば、自然と子どもたちに接すること、目的的に働きかけること、子どもたちの行動や気持ちの背景を考えながら関わること、など様々な実践があるように思います。

こうした実践経験を重ねていく中で、〝実践知″といった経験による知識が体系化されてくるのもまた実感としてあります。

こうした意味で、〝実践″は〝ボトムアップ的思考″に役立つのだと思います。

 

 

理論と実践の関係について

理論と実践は、それぞれトップダウン的思考とボトムアップ的思考といった異なる思考回路があるように思います。

一方で、理論と実践の接点は思いのほか大きいように思います。

例えば、発達特性の知識を学ぶことで、特性への知識が体系化されてきたとしても、実際に関わる子どもたちに対して、理論で子どもたちの行動をすっきり説明できない所があります。

この理由として、特定の知識の枠組み(理論)以外の特性も絡んでいる、特性以外の他の要因が関連している、心といった心理現象面が関連している、など個別の要因が強くなるからだと思います。

〝理論″とは、現象を法則的・統一的にまとめた知識の体系であるため、まとめ上げる過程の中で、個別の細かい要素を取り除く必要があります。

つまり、個別の要素が強くなるほど、理論では説明が難しい要素が出てくるのだと思います。

 

対して、〝実践″はまさに個別の事例・事象に向き合うことです。

個別の事例・事象に向き合う過程の中で、個別の要素間での繋がりもまた見えてきます。

こうした〝集合知″としての理解には、〝理論″が非常に役立つのだと思います。

つまり、多くの実践を重ねていく中で、様々な事例間に共通する要素が見えてくることがあります。

こうした〝集合知″なるものは、〝理論″と深い繋がりをもつように思います。

様々な現象面に共通する法則があるというものの見方です。

そして、〝理論″を学ぶことの大切さは、体系化された知識を学ぶことで、現象を説明する言葉を身につけていくことができるということです。

様々な〝実践″を重ね〝集合知″〝実践知″としてまとめ上げていく過程の中で、言葉の持つ働きはとても重要になります。

例えば、A君、B君、Cちゃんが似たような行動特徴をもっていたとしましょう。

それが、相手の意図を汲みとる苦手さからくるもであった際に、〝心の理論″の苦手さという説明方略を言葉として知っていることで、さらに現象面への理解が深まっていきます。

つまり、多くの〝実践″を通して、現象への理解を深めていく過程の中で、言葉としてまとめていくこと、人の発達や行動の背景の法則を理解していくために、〝理論″の持つ役割が非常に大切だということです。

このように、多くの〝実践″を積み重ねていく中で、〝理論″の持つ重要性はさらに深みを帯びてくるのだと思います。

そして、〝理論″と〝実践″は互いが持つ視点を関連付けながら、より深い人の理解と支援に貢献していく関係であると言えます。

 

 


以上、【理論と実践の関係について】療育現場での実践を通して考えるについて見てきました。

著者は大学や大学院で様々な理論を学んできました。今も、もちろん学びを継続しています。

そして、現場での実践も同様に大切にしています。

〝理論″と〝実践″が持つそれぞれの視点を繋いでいくためには、その人が持つ〝問い″や〝解決したい問題″があるということが根底には必要だと思います。

私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も自分が関わる領域に対して、〝問題意識″を持ち、理論と実践を統合していきながら、より良い発達理解と発達支援を目指していきたいと思います。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

スポンサーリンク

-実践, 理論, 療育

執筆者:


comment

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

関連記事

【発達障害児への療育で大切なこと】全般的な行動の遅さへの対応

発達障害(神経発達障害)には、ASD(自閉症スペクトラム障害)、ADHD(注意欠如多動性障害)、SLD(限局性学習症)、DCD(発達性協調運動障害)、ID(知的障害)など様々なものがあります。 著者は …

関係を通した理解には「感性」が重要-療育経験を通して考える-

療育現場で様々な子どもたちと関わっていると、子どもたちの様々な思いや、悩み、困り感などを強く感じる場面があります。   それでは、こうした子どもとの関係を通して、様々な思いや状態を理解するに …

療育現場で両義性を理解して関わることの大切さについて-子ども「なる」を育てるために-

「両義性」とは、あちらをたてればこちらがたたずといった相反する状態のことを言います。 療育現場で子どもたちと接しているとこうした相反する心理状態に向き合う場面に出会います。 例えば、一人でやりたいがう …

【療育で大切なこと】能力の発達について:発達の最近接領域と足場づくりをヒントに

著者は長年、発達障害など発達に躓きのある子どもたちへの療育(発達支援)を行ってきています。 療育経験を通して子どもの成長を実感でき、子どもの成長に携わることができることが大きな喜びになっています。 子 …

発達支援(回想編):療育施設での二年を振り返る

前回の記事では療育施設での一年間の体験から学んだことや課題などについてお伝えしました。 そこで、今回は前回の記事に引き続き、その後の一年をプラスした療育施設での二年を振り返りながら、その中での学びや課 …