発達理解・発達支援・ブログ

人間の多様な理解と支援を目指して!

MSPA 発達障害

【MSPAの特徴】発達に躓きのある多様な子どもたちの状態像の理解と評価

投稿日:2023年1月18日 更新日:

著者は療育現場で様々な子どもたちと関わる機会があります。

その中で、状態像が多様な子どもたちをどのように理解すればいいのか?試行錯誤を重ねています。

仮に、状態像が多様な子どもたちを特定のツールで理解・評価することができれば、支援の効率化にも繋がります。

 

それでは、多様な状態像の子どもたちを理解・評価するための特性のツールは存在するのでしょうか?

 

そこで、今回は、〝MSPA″を例に取りMSPAの特徴について説明していきながら、臨床発達心理士である著者の意見も交えながら、発達に躓きのある多様な子どもたちの状態像の理解と評価について考えを深めていきたいと思います。

 

 

今回参照する資料は「船曳康子(2018)MSPA(発達障害の要支援度評価尺度)の理解と活用.勁草書房.」です。

 

 

MSPAの特徴について

以下、著書を引用しながら見ていきます。

MSPAは、(中略)診断ありきではなく、診断に先立って個々人の発達特性を評価し共有することで、早い段階から当事者の特性に見合った個別的な支援を行うことが可能になります。

 

MSPAでは当事者・養育者からの生活歴の聴取を通して、当事者と評価者である専門スタッフとが共同でこの特性チャートを作成します。

 

著書の内容を踏まえると、MSPAは診断に先立つ(診断ではなく)個別の支援を目的として、様々な発達特性について、当事者・養育者から情報を収集し、その情報に基づいて特性チャートを作成し、支援に繋げていくというものです。

特性チャートは、MSPAの評価内容に該当し、14項目について評価を行い、様々な特性についての全体像が視覚的にわかるものとなっています(後述します)。

対象年齢は2歳以上となっています。

そして、ここで得た情報は、他の機関との連携を踏まえた重要なツールになり得ます。

MSPAは、発達障害について理解のある専門家であれば、必要な研修などを受けることで実施が可能となっています。

 

 

MSPAの評価内容について

MSPAは次の14項目について9段階の評価を行います。

14項目とは、「コミュニケーション、集団適応能力、共感性、こだわり、感覚、反復運動、粗大運動、微細協調運動、不注意、多動性、衝動性、睡眠リズム、学習、言語発達遅滞」です。

以上の、14項目に対して、気になる点はない→特別な支援が必要、まで9段階で評価することになっています。

 

14項目の内容と発達特性との関連は以下のようになっています(以下、著書引用)。

  • 自閉スペクトラム症(ASD)の特徴:コミュニケーション、集団適応能力、共感性、こだわり、感覚、反復運動
  • 運動症の特徴:粗大運動、微細協調運動
  • 注意欠如・多動症(ADHD)の特徴:不注意、多動症、衝動性
  • その他:睡眠リズム、学習、言語発達歴

以上の、発達特性との関連性を見てもわかるように、ASD、ADHD、DCD、SLDなどの様々な特性との関連を評価することができ、非常に多様な特性への理解が可能になっています。

 

 

著者のコメント

著者は長年療育現場に携わっていますが、子どもたちの中には様々な特性が見受けられ、そして、それぞれの特性にも強弱があると実感しています。

例えば、ASDの特性が強くでている一方で、ADHDの特性も少し見られるなどです。

しかし、こうした多様な状態像の子どもたちに対して、アセスメントできる評価ツールは現状なかなか存在しておらず、様々なアセスメントツールを掛け合わせる必要があると思っていました(もちろん、検査バッテリーを組むという方法も大切です)。

こうした中で出会った〝MSPA″は、一つのツールで、様々な特性に対して強弱を含めて評価できるため、状態像が多様な子どもたちへの理解には最適なツールだと感じました。

また、診断に先立つためのアセスメントであり、誰でも使用可能なツールということもあり(研修などある程度の勉強は必要ですが)、活用に至ってはハードルが高くないことも利点だと思います。

まだまだこうしたツールは少ないことが現状ですが、療育現場で多くの子どもたちと関わっていると、状態像の個人差が非常に大きいため、〝MSPA″の有用性は非常に高いと感じています。

 

 


以上、【MSPAの特徴】発達に躓きのある多様な子どもたちの状態像の理解と評価について見てきました。

療育現場にいると、発達の特性も多様であり、そして、それぞれの特性の強弱も人ぞれぞれだと感じます。

私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も多様な状態像の子どもたちを理解していくための方法についての情報収集や学びを深めていきたいと思います。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

 

 

船曳康子(2018)MSPA(発達障害の要支援度評価尺度)の理解と活用.勁草書房.

-MSPA, 発達障害

執筆者:


comment

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

関連記事

【発達障害児のタブレットの有効な活用方法とルール設定について】療育経験を通して考える

教育現場では、子どもが一人一台、パソコンやタブレットなどが普及される時代になってきています。 また、家庭でもパソコンやタブレットなどを通して、子どもが様々な情報にアクセスしたり、ゲームやSNS等の活用 …

発達障害の感覚処理過程の問題【感覚調整障害とプラクシクの障害から考える】

発達障害には様々な感覚処理過程の問題があると言われています。 感覚とは、視覚、聴覚、触覚、味覚、固有覚、前庭覚などがあり、私たちは、様々な感覚を取り込み・調整しながら、外の世界を認識したり、働きかける …

【発達障害・知的障害で大切な早期発見・早期支援】療育経験を通して考える

アメリカ精神医学会から出版されている精神疾患の診断・統計マニュアルによれば、発達障害(正式には〝神経発達障害″)は、ASDやADHD、SLDなどの従来の〝発達障害″に加えて、〝知的障害″もまたその中に …

発達障害の併存について療育現場から考える

療育現場で働いていると、様々な発達につまずきのある子どもたちや、大人の当事者の人たちとの関わりが多くあります。 ここ最近、発達障害という言葉は世間一般に非常に広がり、特別支援教育や障害者の就労など多岐 …

【発達障害児の〝パニック″直前の基本対応】〝パニック″を予防するために大切な関わり方

療育現場で発達障害など発達に躓きのある子どもたちと関わっていると〝パニック″行動への対応に迫られる場面があります。 もちろん、〝パニック″に至る要因は人それぞれ異なりますが、できるだけ〝パニック″行動 …