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自閉症の感覚過敏とこだわり・コミュニケーション障害の関係について

投稿日:2022年11月12日 更新日:

自閉症の人たちには様々な感覚の問題が見られます。

 

関連記事:「自閉症の感覚:感覚探求と低登録について考える

関連記事:「自閉症の感覚:感覚過敏と対処方法について考える

 

また、自閉症というと、対人・コミュニケーションの困難さやこだわり行動が主な特徴としてあります。

 

それでは、こうした自閉症の特徴である、対人・コミュニケーションの困難さやこだわり行動、そして、感覚の問題には関連性はあるのでしょうか?

 

そこで、今回は、自閉症の感覚過敏とこだわり・コミュニケーション障害の関係について考えを深めていきたいと思います。

 

 

今回参照する資料は「熊谷高幸(2017)自閉症と感覚過敏 特有な世界はなぜ生まれ、どう支援すべきか?.新曜社.」です。

 

 

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自閉症の感覚過敏とこだわり・コミュニケーション障害の関係について

著書には、自閉症の生成モデルとして、以下のプロセスがあるとしています(以下、著書引用)。

生物学的原因→感覚過敏→こだわり→コミュニケーション障害

 

つまり、そもそも先天性の脳の機能障害(生物学的原因)があり、次に、感覚過敏といった感覚の問題、そして、感覚の過敏さががこだわり行動→コミュニケーション障害へと発展していく図式が成り立つというモデルです。

 

 


それでは次に、それぞれの繋がりについて著書を参照しながら詳しく見ていきます。

 

感覚の問題とこだわり行動の関係について

まずは、感覚過敏とこだわりの関係です(以下、著書引用)。

感覚過敏は、(略)刺激に対する回避、没入、記憶化、無視、行動の切り替え困難という反応として表れる(略)。すると、それらは、外部の事物や人に対して通常とは異なるかかわりとなるので人々にはこだわりとして映るのである。

 

例を取って考えていきましょう。

自閉症児A君が、ある特定の感覚に没頭していたとします。それは、水です。

水の感覚が大好きなA君は水遊びに没頭します。すると、周囲からの刺激が非常に入りにくくなります。

一見すると、声をかけても反応のないA君は周囲を無視してようにも見えます。

また、A君にとって楽しい水遊びは時折、A君を突発的行動へと促します。

水を見るとA君は水の所に一目散に駆け出し、他のものに注意が向かず、切り替え困難となります。

こうした感覚も問題は、周囲からするとこだわり行動として映ることがあります。

このように、自閉症の診断基準であるこだわり行動は、感覚過敏など感覚の問題と関連づいていると著書では記載されています。

 

 

こだわり行動とコミュニケーション障害の関係について

それでは、次に、こだわりとコミュニケーション障害の関係について見ていきます(以下、著書引用)。

コミュニケーションとは人と人とが同じ事物に注目することによって成り立ち発展する(略)。こだわりがあると、特定の事物を取り込み他を排除するため、共同注意にもとづくコミュニケーションが成り立ちにくくなるのである。

 

例を取って考えていきましょう。

先ほど挙げた自閉症児A君は、水という感覚に没頭し、そうした感覚の問題から生じる行動がこだわり行動として周囲には映るとしていました。

こだわり行動があると、人と関わる機会や人に注意を向ける機会が少なくなります。

コミュニケーションが成立するためには、3項関係を基盤とした共同注意行動が必要になると心理学の知見から分かっています。

3項関係とは、人-物-人の三者間の関係であり、例えば、A君が興味のある絵本を指さし(「これ何というの?」)母親がそれに応える(「いぬだよ!」)などがあります。

このように、三項関係の中で、同じ対象に注意を向けること(A君と母親が絵本に)を共同注意と言います。

共同注意を行うことにより、A君は様々な物の名前を知り、それに応えてくれる母親の意図を読み取る力が養われていきます。

つまり、自閉症の生成モデルとは、水という特定の感覚に一人で没頭しているA君は周囲からこだわり行動として映り、こうしたこだわり行動がコミュニケーションの機会を減らし、コミュニケーション障害へと繋がるというプロセスを説明するモデルと言えます。

 

ここで大切なことは、A君が興味のある感覚世界を崩さずに、A君の感覚を知ろう、A君が認識している世界を知ろうという姿勢です。

コミュニケーションの基盤は、興味・関心の共有がとても大切です。

そのため、自分の興味・関心を理解してくれる人には自然と心を許すようになり、信頼関係のもと、様々な興味のあることを共感・共有したいといった動機付けが生まれます。

 

 


以上、自閉症の感覚過敏とこだわり・コミュニケーション障害の関係について見てきました。

自閉症の人たちに見られる、感覚の問題、こだわり行動、そして、コミュニケーションの問題は互いに独立したものではなく、発達の過程で相互に関連しながら発達していくのだと思います。

今回、著書で取り上げている、自閉症の生成モデルからそのようなことが言えるかと思います。

私自身、自閉症への理解はまだまだ未熟ではありますが、今後も、感覚の問題を含め、自閉症の人たちへの理解を深めていきたいと思います。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

 

熊谷高幸(2017)自閉症と感覚過敏 特有な世界はなぜ生まれ、どう支援すべきか?.新曜社.

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-感覚過敏, 自閉症

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