愛着スタイルには、様々なタイプが存在しています。
大きくは安定型、回避型、不安型、恐れ・不安型の4つのタイプがあると言われています。
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今回は、様々ある愛着スタイルの中で、回避型愛着スタイルについて、その特徴や増加の有無、ASDとの関連や違いについて、臨床発達心理士である著者の意見も交えながらお伝えしていきます。
今回、参照する資料は「岡田尊司(2022)発達障害「グレーゾーン」その正しい理解と克服法.SB新書.」です。
回避型愛着スタイルの特徴について
回避型愛着スタイルとは、言葉の通り、対人関係において回避的な行動を取るタイプの人たちのことを言います。
また、感情の理解にも乏しく、感情表現も少ない一方で、一度火が付くと(葛藤を抱えることが難しい場合)高い攻撃性を示すこともあります。
このタイプの人とは、気持ちが通じている感覚が少ない、お互いの気持ちを共有することが難しいなどの特徴が多いとされています。
このように、対人面ではどこか冷めている特徴を持つ一方で、仕事など自分が熱中できるものには高い意欲と集中力を発揮する場合もあります。
回避型愛着スタイルは増加している
以下、著書を引用してみていきます。
ヨーロッパのある研究では、若年成人の三割が回避型愛着スタイルを示したとの報告がある。その割合は増加傾向で、日本でも三割程度の大学生が回避型愛着スタイルに該当したというデータもある。
著書の内容から、回避型愛着スタイルは増加傾向であるといった研究知見もあります。
愛着スタイルとは、養育者と子どもとの間の情緒的交流(発信と応答)の蓄積が子どもの内部に対人様式の鋳型として形成されるものです。
これを、専門用語で、内的作業モデル(IWM)と言います。
愛着スタイルは先天性のものではなく、環境要因(特定の人物を中心とした関係性)が原因であるため、回避型愛着スタイルの増加は、社会環境などの環境の変化が要因として増加した可能性もあります。
回避型愛着スタイルはASDと似ている
以下、著書を引用してみていきます。
回避型愛着スタイルがASDと見紛われるケースも多い。ASDが大幅に増えている一因として、回避型愛着スタイルの子どもや大人を、ASDと診断してしまっている可能性がある。
著書の内容から、回避型愛着スタイルの特徴はASD(自閉症スペクトラム障害)の特徴と似ているとされています。
そのため、回避型愛着スタイルの人を誤ってASDと診断してしまっているケースも可能性としてあると著書では書かれています。
それでは、回避型愛着スタイルとASDの違いはどこで見分けるのでしょうか?
それは、先天性か後天性かにあります。
ASDは先天性の脳の機能障害であるため、生まれ持った特性としてあります。
例えば、視線の合いにくさ、指差しがない(人を意識した:叙述の指差し)、抱っこしてもフィット感がないなどの特徴が未就学児にはよく見られます。
一方、回避型愛着スタイルは後天性の環境要因(養育スタイル)が影響して愛着スタイルができます。
そのため、詳細に生育環境(生育歴)を聞き取り、もともとASDの特徴(対人・コミュニケーションの困難さ、こだわり、感覚過敏など)があったのか、なかったのかを見分けることが大切です。
一見、似たような特徴でも両者の質の根本は非常に違います。
以上、回避型愛着スタイルとは何か【近年増加している?ASDと似ている?】について見てきました。
最近、発達障害関連の書籍の中には、愛着障害が発達障害の裏に潜んでいるケースも多く存在していると書かれたものをよく見かけます。
それだけ、両者を見分けることが対人理解と支援において影響するということです。
著者も長年の療育現場で様々な子どもたちを見てきましたが、発達障害と言われてきた子の背景に愛着障害が潜んでいるのではないかと思う子もいます。
もちろん、一次障害として発達障害があり、二次障害として愛着障害があるといったケースもあります。
原因を追究する理由は、誤った理解をするとその後の対応(支援)がうまくいかないからです。
そのため、発達障害と愛着障害の両方の理解が今後もますます重要になると思います。
私自身、まだまだ未熟ですが、今後も発達障害のみならず、愛着障害の理解も深めていきながら、より良い発達理解と発達支援を目指していきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
岡田尊司(2022)発達障害「グレーゾーン」その正しい理解と克服法.SB新書.