「知的障害(ID)」とは、「知的水準が全体的な発達よりも低く、かつ、社会適応上問題がある状態」のことを言います。
最近では、知能指数よりも社会適応上の問題といった観点から捉えられる傾向が強くなっています。
知的障害の人は、全体的な発達がゆっくりであるといった特徴があります。そのため、同年齢よりも様々な面で遅れが見られます。
それでは、全体的な発達がゆっくりだと具体的にどのような特徴が見られるのでしょうか?
そこで、今回は、知的障害の特徴について、臨床発達心理士である著者の経験談も交えながら、言葉・記憶・理解など7つの視点から支援のポイントを解説していきます。
※この記事は、臨床発達心理士として10年以上療育現場に携わり、修士号(教育学・心理学)を有する筆者が執筆しています。
今回参照する資料は、「徳田克己・水野智美(監修)(2020)健康ライブラリーイラスト版:知的障害/発達障害のある子の育て方.講談社.」です。
【知的障害の7つの特徴と支援のポイントについて】療育経験を通して考える
それでは、著書を引用しながら知的障害の「7つの特徴」について見ていきます。
言葉の遅れ
多かれ少なかれ、知的な発達に遅れがある子どもには言葉の遅れがみられます。聞いてわかる言葉(理解言語)が増えるのに時間がかかり、意味のある言葉を話し出す時期も遅れます。
知的に遅れがあれば、言葉の発達にも遅れが生じることが多くあります。
言葉の遅れは、幼児期の発達相談などで上位にくるなど行動上周囲から気づかれやすいものです。
著者の療育現場でも、知的に遅れがあるお子さんは理解言語や表出言語がゆっくりであるため、説明は短い言葉でその子の発達に合った(理解できる)水準での伝えを大切にしています。
少しずつですが、言葉の発達も療育などを通して年々伸びているお子さんも多くおります。
記憶することが苦手
一度にたくさんのことは覚えられません。一つのことでも、一度聞いただけではすぐに忘れてしまいがちです。
記憶量には限りあります。知的に遅れがあると、記憶の容量にも制約を受けることが多くあります。
著者の療育現場でも、知的に遅れがあるお子さんは、特に、一度に複数のことを話すと混乱したり、すぐに忘れてしまう様子がよく見られます。そのため、記憶の苦手さを補う支援が重要です。
例えば、口頭では短く伝える、複数の内容の伝えはできるだけ避ける、また、視覚的なメモなどを活用し記憶を補う取り組みも必要です。
生活経験が増してくると、その繰り返しで定着してくることが多いため、普段のルーティン活動は重要だと思います。
知的障害児の記憶に関しては以下の記事で紹介しています。
関連記事:「知的障害児の理解と支援-療育経験を通して「記憶」の面から考える-」
抽象的理解が難しい
今、目の前にあるものや、具体的なものを認識することはできますが、見えないもの、抽象的なことは理解しにくくなります。
抽象概念の理解とは、例えば、“くるま”を例にした場合、“軽自動車”などのサイズの違い、“赤いくるま”などの色の違いといったように、共通性や類似性、差異性などを理解することです。
著者の療育現場でも、知的に遅れがあるお子さんには、抽象的な理解がなかなかうまくできない子どもが多くいます。そのため、具体物などで伝えるようにしています。
例えば、工作を遊びで○○を作りたいと子どもが言ってきたときに、言葉で○○のイメージを伝えながら、写真や絵に描くなど視覚的な伝えを示すことでより具体的なイメージが付きやすくなります。
自分で考えて行動することが難しい
状況を理解し、目的に合った行動がなにかを判断しにくいため、今、なにをすればよいかわからないことが多くあります。とくに初めてのこと、いつもと違うことにはとまどいが大きくなります。
知的な遅れがある子どもたちは、繰り返し取り組んだことには力を発揮できる場面が多くあります。一方、普段と違う場面や内容にはとても敏感です。
関わるスタッフの違い、遊ぶ環境の違いなどに不安感を抱くことが療育現場でもよく見られます。中でも新奇な場面で状況を理解して自分で判断して行動する難しさが顕著に目立つ印象があります。
そのため、できるだけ安心できるいつもと同じ環境を整える中で、選択肢を与えて自分で選び成功したといった小さな成功経験を重ねていくことが、自分で判断し行動していくためには大切だと感じます。
飽きることが多い
集中力が続きません。理解する力の弱さも影響します。
飽きるということはよくあります。何か活動をしても長く集中することが難しいため、手持ち無沙汰になる様子がよくあります。
そのため、著者の療育現場では、短い時間である程度集中して取り組める活動内容を考えたり、それらを複数組み合わせたり、短い時間でも本人の“できた”、“楽しかった”を生み出せるように関わりや環境を工夫しています。
理解に時間がかかる
言葉の理解が不十分であることが影響します。
前述した言葉の発達の遅れや記憶容量の制限、抽象的思考の難しさなどが影響して、理解に時間がかかることがあります。
著者の療育現場では、知的に遅れがある子どもには、経験を通した繰り返しの学習が重要だと感じています。本人にとって分かりやすい提示・体験を継続することで理解も着実に進むと感じています。
その他(感覚と運動の問題)
おむつがとれない 筋力の発達がゆっくり 太りやすい 痛みや暑さ・寒さなどの感覚が鈍い 手先が不器用 運動が苦手
その他で取り上げたものの中で、特に著者の療育現場で目立つのが、感覚と運動の問題です。
感覚の過敏や鈍感さ、そして、全身運動や細かな手先の不器用さが目立つ事例もよく目にします。感覚面に関しては、感覚統合理論が役立ちます。
そして、運動面に関しては、DCDへのアプローチ方法からも学ぶことも多く、また、時間をかけて日々の生活の中で練習していく中でその能力は着実に高まっていくといった実感があります。
練習の中で大切なことは、本人が楽しんで取り組めるようなものを選ぶことがとても大切だと思います。つまり、体を使うことが楽しいと思えることです。
以上、【知的障害の特徴】言葉・記憶・理解など7つの視点から支援のポイントを考えるについて見てきました。
知的障害の方は、全般的な発達がゆっくりであるため、様々なところに躓きが見られます。
一方で、日々の生活の中でそこ子に合った関わりや環境を設定することで、着実にできることが増えていきます。
大切なことは、不確定要素をできるだけ作らず、安心感のある環境の中で体験からの学びを重視することだと思います。
私自身、まだまだ知的障害の理解が未熟ですが、今後も様々な発達の要素を理解していきながら、質の高い療育を目指していきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
知的障害に関するお勧め書籍は以下の記事で紹介しています。
関連記事:「【臨床発達心理士が厳選】知的障害に関するおすすめ本:初級~中級者向け」
徳田克己・水野智美(監修)(2020)健康ライブラリーイラスト版:知的障害/発達障害のある子の育て方.講談社.


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