スキンシップが子どもの心の発達において重要であると言われています。
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それではスキンシップは関わり手によって及ぼす効果は違うのでしょうか?
一般的なイメージでは、母は安心感やぬくもりを与えるようなイメージがあり、父はダイナミックなイメージがあるかと思います。
関わり方・遊び方などを見ても母と父とでは異なる印象があります。
そこで今回は母と父のスキンシップの違いが子どもにどのような影響を及ぼすのかを見ていきます。さらに、著者の療育現場での体験談も交えて考察していきます。
今回参考にする資料は、「山口創(2004)子どもの「脳」は肌にある.光文社新書. 」です。
母と父が及ぼすスキンシップの効果の違い
それでは早速ですが、著書を引用してその違いを見ていきます。
母子のスキンシップと、父子のスキンシップの効果は異なっているようである。
母親とのスキンシップは、前述のとおり、自分が受け入れられ大切にされているのだという自信を強め、その温かさから、「人は信頼できるものだ」、ということを肌で学んでいく。
父親とのスキンシップは、世の中に意識を向け、人と協調して自分を出したり引っ込めたりするような社会性を伸ばすものだと思われる。
このように、母と父とでスキンシップが子どもに与える影響は異なると考えられています。
著者も療育現場で父と母と子どもたちとの関わりを見ていて、母親は安心感を与え人への信頼を強めるものであり、父親は社会の中での生き方を見せてくれるものだと感じます。
それでは以下に著者の療育現場での体験談を記載します。
著者の体験談
A君の事例
A君は重度の知的障害のある自閉症の男の子です。当時、私が療育施設で担当したお子さんで、その頃A君は5~6歳でした。
母子家庭で育っているA君のお母さんは男性のスタッフの方は初めてと話されていました。
そういった理由もあるのか、当時のA君は私との関わりを非常に警戒していました。
私が傍によるとすぐに逃げてしまいなかなか関係性をつくることが難しい日々が続きました。
A君は女性保育士とゆったりした遊び・過ごしを好み絵本を見たり、車のおもちゃなど室内で遊んで過ごすことが多くありました。
そんなA君が私との関係に変化が出てきたのは関わり始めてから数か月経ってからでした。私が紙芝居を読んでいる所に近寄ってきて何度も“読んで”とお願いしてきました。
それ以降、紙芝居や絵本などを通して、A君との関わりが増えたことで、徐々にスキンシップの頻度も増えてきました。
最初は、手を繋ぐことも、抱っこもできませんでしたが、こうした関わりも遊びを通してできるようになってきました。
体を使ったダイナミックな遊びを行う私にA君はとても興味を示し、A君と体を使ってたくさん遊ぶ様子が増えてきました。例えば、相撲ごっこやターザンごっこ、高い高いなどスキンシップを多くとる遊びです。
一年後には、A君の遊びも静かな遊びから、体を使ったダイナミックな遊びへと変化していました。また、男性スタッフとも抵抗なく関わる様子が見られるようになりました。
著者のコメント
以上の事例を通して、スキンシップといっても関わり手が男性か女性かでその後の発達に与える影響に違いあるのだと感じます。
そして、それぞれに必要な役割があり、必ずしも父や母ではなくても良いのだと思います。
もちろん、人によっては一人で両方の役割を担っているケースもあるかと思います。
A君のお母さんからは、A君がだいぶ男の子らしくたくましくなり、それは著者の体を使った遊びを楽しんで行ったことが影響したという言葉を頂きました。
私自身、日々の療育に精一杯でなかなかこのような気づきを一人では得ることは難しいのですが、保護者など周囲の言葉によって気づくことがあります。
今後も現場での気づきを大切にしていきながら、日々の実践を大切にしていきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
山口創(2004)子どもの「脳」は肌にある.光文社新書.