
発達障害児の支援をしていると、時間を守って行動することに難しさを抱えている子どもが多くいます。
例えば、約束の時間になっても集まらない、遅刻が多い、遊びに集中して次の活動時間に間に合わないなどがあります。
〝時間を守れない″ことへの対応として、〝ソーシャルスキルトレーニング″が一つの方法としてあります。
〝ソーシャルスキルトレーニング(SST)″とは、〝日常生活に関する技能を練習する方法″です。
〝ソーシャルスキルトレーニング″は、発達障害児支援において非常によく活用されています。
それでは、ソーシャルスキルで大切な時間の守り方にはどのような対応方法があると考えられているのでしょうか?
そこで、今回は、ソーシャルスキルで大切な時間の守り方について、臨床発達心理士である著者の経験と考察も交えながら理解を深めていきたいと思います。
※この記事は、臨床発達心理士として10年以上療育現場に携わり、修士号(教育学・心理学)を有する筆者が執筆しています。
今回参照する資料は「鴨下賢一(編)立石加奈子・中島そのみ(著)(2013)学校が楽しくなる!発達が気になる子へのソーシャルスキルの教え方.中央法規.」です。
【ソーシャルスキルで大切な時間の守り方】時間を守れない発達障害児への対応方法
以下の順番でお伝えしていきます。
1.〝時間を守れない″ことに関して事前に確認する点
2.〝時間を守れない″ことに関して日常でできる原因別対応方法
1.〝時間を守れない″ことに関して事前に確認する点
著書には、〝時間を守れない″ことに関してまず確認しておくべき3点が記載されています(以下、著書引用)。
生活リズムを整えていますか。
何時、長い針がどこにきたらと具体的に時間を伝えていますか。
大人の都合で予定やスケジュールを決めていませんか。
以上の3点を確認しておくことで、〝時間を守れない″ことに関しての原因とそれに対する対応方法が紐づいてきます。
例えば、著書にあるように、そもそも生活リズムが不安定・不規則だと様々な面で時間に合わせて行動することが難しくなる、具体的な時間の伝達をしていない、大人の都合による時間変動があるといった原因があるかもしれません。
著者の療育経験から見ても、〝時間を守れない″背景要因は子どもによって様々だと感じています。
例えば、時間は分かっていても興味のある活動を終えることができない(自閉症児に多い傾向あり)、時間は分かっていても様々な事に興味が移ることで結果として時間が守れない(ADHD児に多い傾向あり)、時間感覚がそもそも弱い、時間を読むことが苦手(時計が読めない)といったものがよく見られます。
2.〝時間を守れない″ことに関して日常でできる原因別対応方法
著書には、〝時間を守れない″ことに関して、躓いている4つの原因とそれに対する対応方法が記載されています(以下、著書引用)。
1 自分をコントロールする力が弱い
2 自尊心が育っていない
3 感覚面の偏り
4 相手の気持ちを読み取りにくい
それでは、次に以上の4点について、著書の内容を踏まえながら具体的に見ていきます。
1 自分をコントロールする力が弱い
自己コントロール力が弱いと、次の活動への移行、先を見越して活動を進める弱さが出てきます。
別の用語では実行機能の弱さとも表現でき、実行機能が弱いと計画的に物事を進める苦手さが生活上の様々な場面で出てきます。
対応として、事前にスケジュールを決めておく(スケジュールを確認しながら活動を進める)、活動の終了・移行に関しては早めに声を掛けたりタイマーやアラームなどの活用も有効です。
著者がよく行う対応として、活動の見通しを伝えること、早めの声掛けを意識しています。
例えば、子どものやりたいことを事前に聞き取りそれを中心にスケジュールを組むこと、次の活動に移る場合には早めに声をかけていくなど、とてもシンプルですが継続することである程度習慣化されていく様子も出てくると感じています。
2 自尊心が育っていない
自尊心の高低が時間管理にも影響する場合があります。
例えば、自尊心が高いと何でも自分で決めようとすることで、その結果、時間が守れないことが起こったり、自尊心が低いと様々な活動に回避的になり、その結果、時間が守れないことが起こります。
対応として、確実に時間内に完結できる内容・予定を作る必要があります。
著者は様々な子どもたちを見てきていますが、例えば、〝俺ならできる!″と非常に高い自尊心を持っている子どもの場合、活動時間内には絶対に終えることのできない遊びを考えることがあります。
対応として、子どもの能力をよく把握していきながら、時間内に終えることができる活動内容を一緒に考えていき、少しでも成功体験を積み重ねていくことが大切だと感じています。
3 感覚面の偏り
感覚過敏があると、様々な刺激が気になり、事前に決めた時間を忘れることがあります。
対応として、刺激の量を減らすこと、タイマー・アラームの活用などがあります。
例えば、苦手な音・騒がしい音を回避できる静かな環境を整えること、視覚刺激の量、例えば、掲示物を減らし視覚刺激をシンプルにするなどがあります。
また、タイマー・アラームを使用しながら時間に意識を向けることも大切な取り組みです。
著者の療育現場には、感覚過敏の子どもも多くいるため、まずは今取り組んでいる活動に意識が向くような環境調整を行うようにしています。
内容としては、上記に記載した音の刺激・視覚刺激の量を減らすことを心掛けています。
特に、自閉症・ADHDの子どもは様々な刺激に振られやすいことが多いため、こうした環境調整は必須だと感じます。
4 相手の気持ちを読み取りにくい
相手の気持ちがうまく読み取れないと、時間を守れないことが相手や周囲に迷惑をかけているといったことに気づけない場合があります。
対応として、時間を守ることのメリットを優先的に伝えていきながら、相手に与える影響についても伝えていく必要があります。
著者の療育現場には、時間を守らないことで相手や集団にマイナスな影響を与えていることにうまく気づけないケースが多く見られます。
そのため、例えば、〝○○君が待っているよ!″など、相手の状態を言葉にしていくこともよく行っています。
特に、友人関係など仲の良い子ども同士の場合には、〝○○君が○時から遊ぼうと言っているよ!″〝○○君が待っているよ!″といった声掛けはよく通るように感じます。
以上、【ソーシャルスキルで大切な時間の守り方】時間を守れない発達障害児への対応方法について見てきました。
今回見てきた4つの原因別対応方法は、ソーシャルスキル獲得を阻害する4つの要因と関連づいています。
関連記事:「【ソーシャルスキル獲得を阻害する4つの要因とは】療育経験を通して考える」
時間を意識して行動することは、日常生活を送る上で非常に大切なことです。
一方で、発達障害児等は様々な背景要因から時間をうまく守ることが難しい場面がよく見られます。
大切なことは時間を守れない背景を考えながら、背景を踏まえた対応方法を地道に取り組んでいくことだと思います。
私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も発達障害児が抱えやすい課題について理解を深め、そして、対応方法の質も同時に高めていきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
鴨下賢一(編)立石加奈子・中島そのみ(著)(2013)学校が楽しくなる!発達が気になる子へのソーシャルスキルの教え方.中央法規.