
発達障害児の支援をしていると、子どもの〝身だしなみ″が気になることがよくあります。
保護者からも、ズボンからシャツがはみ出ている、口の周りに食べた物がつき汚れているなど〝身だしなみ″が気になるといった意見をもらうことがあります。
〝身だしなみ″への対応として、〝ソーシャルスキルトレーニング″が一つの方法としてあります。
〝ソーシャルスキルトレーニング(SST)″とは、〝日常生活に関する技能を練習する方法″です。
〝ソーシャルスキルトレーニング″は、発達障害児支援において非常によく活用されています。
それでは、ソーシャルスキルで大切な身だしなみの整え方にはどのような対応方法があると考えられているのでしょうか?
そこで、今回は、ソーシャルスキルで大切な身だしなみの整え方について、臨床発達心理士である著者の経験と考察も交えながら理解を深めていきたいと思います。
※この記事は、臨床発達心理士として10年以上療育現場に携わり、修士号(教育学・心理学)を有する筆者が執筆しています。
今回参照する資料は「鴨下賢一(編)立石加奈子・中島そのみ(著)(2013)学校が楽しくなる!発達が気になる子へのソーシャルスキルの教え方.中央法規.」です。
【ソーシャルスキルで大切な身だしなみの整え方】発達障害児支援の経験を通して考える
以下の順番でお伝えしていきます。
1.〝身だしなみ″に関して事前に確認する点
2.〝身だしなみ″の整え方に関して日常でできる原因別対応方法
1.〝身だしなみ″に関して事前に確認する点
著書には、〝身だしなみ″を整えていく上でまず確認しておくべき4点が記載されています(以下、著書引用)。
身だしなみを整えようとしていますか。
洋服が汚れていることを気にしますか。
タグなどが体に触れるのを嫌がりませんか。
周囲の大人が身だしなみに気をつけていますか。
以上の4点を確認しておくことで、〝身だしなみ″を整えようとしない原因とそれに対する対応方法が紐づいてきます。
例えば、そもそも本人が外見に気をつける意識がない、感覚過敏などの感覚の問題が影響している、周囲の人たちがあまり気にしていないなどの原因があるかもしれません。
著者がこれまで見てきた子どもの中にも、人からどのように見られているかといった気づきが弱いため身だしなみに意識が向きにくい、やりたいことが先行して身だしなみを整えることが後回しになってしまう、感覚過敏が影響して特定の服を着るのを嫌がるなど、身だしなみが整わない背景は子どもによって様々だと感じています。
2.〝身だしなみ″の整え方に関して日常でできる原因別対応方法
著書には、〝身だしなみ″に関して、躓いている4つの原因とそれに対する対応方法が記載されています(以下、著書引用)。
1 自分をコントロールする力が弱い
2 自尊心が育っていない
3 感覚面の偏り
4 相手の気持ちを読み取りにくい
それでは、次に以上の4点について、著書の内容を踏まえながら具体的に見ていきます。
1 自分をコントロールする力が弱い
自己コントロール力が弱いと、子どもは自分がやりたいこと・気になることに注意が向きやすいため、身だしなみに意識が向きにくいことがよくあります。
そのため、一つの対応方法として、チェック表の活用(身だしなみの確認→次の活動)があります。
著者がよく行う方法として、シンプルですが習慣化があります。
例えば、トイレから出てきた際に声掛けする、帰りの準備の際に声掛けするなど、活動の節目となる場面でできるだけ意図的に身だしなみを整えるための声掛けをしています。
もちろん、余裕があればこの際にチェック表の活用なども有効だと感じます。
ポイントは、次の活動に移る前に声をかけることだと言えます。
2 自尊心が育っていない
子どもにとって自分がやれた!できた!といった成功体験の積み上げによる自尊心の向上もとても大切な視点です。
身だしなみに関して言えば、何でもかんでも大人が手伝うのではなく、少しずつでも本人が一人でできるように背中を押していくことが大切です。
著者もこの視点はとても大切だと感じています。
例えば、自分に対する肯定的な感情を強く抱いている時の方が、子どもは〝やってみよう!″といった動機が働くため、著者が少し背中を押すだけでも行動に移すケースが多いと感じます。
そのため、日々の生活の中で、大人との信頼関係の構築を基盤に、子どもが見せる少しの変化・成長を即座にフィードバックしていくことが自尊心を高めていく上で大切だと言えます。
3 感覚面の偏り
感覚過敏の問題から、例えば、衣服のチクチクした感じが苦手、タグが気になるといった様子が見られることもまた身だしなみを整えることへの苦手さに影響します。
対応方法としては、苦手な感覚刺激をできるだけ軽減する(衣服の素材を変えるなど)対応を優先としながら、少しずつ苦手な感覚に慣れていけるような関わり方を考えていくことが必要です。
著者も感覚の問題は事前に軽減できるように環境調整をしていくこと、そして、慣れていけるような支援方法を検討するようにしています、。
時間がかかりますが、中には、苦手な感覚の正体を本人が自覚できるようになったことで、そのための対処法を大人と相談しながら考え、徐々に対応できるようになっていった子どもも少なからずいます。
4 相手の気持ちを読み取りにくい
自分の身だしなみに対して、相手がどう思っているかが気にならない場合もまた、身だしなみを整えるようとする意識が向きにくくなることがよくあります。
対応方法としては、身だしなみが整っている状態を褒めること、イラストなどを活用してかっこいい身だしなみの整え方などを提示していくなどがあります。
著者が見てきた子どもの中には、身だしなみの整え方に関する本に興味を持ったことで、自分から身だしなみを整えようといった動機が芽生えたケースもあります。
そのため、自然と子どもの目の留まる所に身だしなみに関する本を置いておくことも一つの手だと感じます。
以上、【ソーシャルスキルで大切な身だしなみの整え方】発達障害児支援の経験を通して考えるについて見てきました。
今回見てきた4つの原因別対応方法は、ソーシャルスキル獲得を阻害する4つの要因と関連づいています。
関連記事:「【ソーシャルスキル獲得を阻害する4つの要因とは】療育経験を通して考える」
発達障害など発達に躓きがあると、定型児よりも配慮や支援が必要になることが多くあります。
一方で、時間をかけて丁寧に関わり続けることで改善していく点も多くあると感じています。
私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も子どもたちの様々な躓きに対して具体的な解決策を提案できるスキルを獲得していきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
鴨下賢一(編)立石加奈子・中島そのみ(著)(2013)学校が楽しくなる!発達が気になる子へのソーシャルスキルの教え方.中央法規.