
療育(発達支援)現場にいると、子どもたちの活動の〝切り替え″の難しさを感じることはないでしょうか?
発達障害児、中でも、ASD児は今やっている活動から離れることが難しい、ADHD児であれば衝動性が影響して次々と物事に注意が向いて切り替えが難しいことがあります。
関わる大人からすると早く次の活動に移って欲しいとイライラしてしまい、時には注意・叱責してしまうこともあると思います。
それでは、発達障害児の切り替えには、どのような対応のポイントがあると考えられているのでしょうか?
そこで、今回は、発達障害児(ASD・ADHD)の切り替えへの支援について、臨床発達心理士である著者の経験談も交えながら、原因分析と対応方法のポイントについて理解を深めていきたいと思います。
※この記事は、臨床発達心理士として10年以上療育現場に携わり、修士号(教育学・心理学)を有する筆者が執筆しています。
今回参照する資料は「北川庄治(2025)発達障害の療育がうまくいく 子どもの見方・考え方.ぶどう社.」です。
【発達障害児(ASD・ADHD)の切り替えへの支援】原因分析と対応方法のポイント
発達障害とは、生まれ持っての脳の機能障害であるため、〝切り替え″の難しさにも、生まれ持っての脳の機能が関係していると考えられています。
つまり、子ども自身が早く切り替えようと思っていたとしても、様々な要因が影響してうまく切り替えることができない状態だと言えます。
こうした中で、過度な切り替えを促すと、大人との信頼関係が崩れたり、自分はうまくできないという自己否定感に繋がる可能性が出てきます。
そのため、〝切り替え″への支援として、なぜうまく切り替えができないのかという〝原因分析″と個々に応じた〝対応方法″を考えていくことが大切です。
原因分析のポイントについて
著書には〝原因分析″について3つのポイントが記載されています(以下、著書引用)。
課題となる行動を最初から最後まで観察
観察して行動の「ストーリー」を読み取っていく
「大人がしてほしいこと」の視点にこだわると
著書の内容を踏まえると、切り替えの難しさについてまずは子どもの行動をよく〝観察″することが大切だと記載されています。
中でも、〝切り替え″の難しさという課題となる行動を〝1.最初から最後まで観察する″こと、そして、切り替えの難しさという特定の行動だけではなく〝2.特定の行動に至るまでのストーリーを読み取っていく″ということが必要です。
1と2のポイントは、著者も非常によく活用しています。
例えば、切り替えが難しい子どもでも、日々の活動をよくよく観察していくと、波があると感じています。
そもそも体調・状態が悪ければ切り替えが難しくなりますし、また、やりたい活動がうまくいった場合にはスムーズに切り替える様子が多く見られるなど、〝切り替え″一つとって見ても、活動の全体像、つまりストーリー性(時間軸)を把握していかないと見えてこないことが多くあります。
1と2に加えて、〝3.大人がしてほしいことにこだわる″と、逆に切り替えがうまくいかなくなってしまう上に、なぜ切り替えができないのか?という原因分析から遠のいてしまうリストがあります。
そのため、大人の視点を強めるのではなく、子どもを中心においた物事の見方・視点を強めることが、原因分析においてとても大切だと言えます。
対応方法のポイントについて
著書には〝対応方法″について、3つのポイント(基本対応)が記載されています(以下、著書引用)。
①他人に助けてもらったり、道具を活用する。
②簡単なことから、徐々に自分でできるようにしていく。
③うまくいっていないことの、頻度・強度・持続時間を下げる。
著書の内容から、切り替えの対応方法には①~③の3つのポイントがあります。
それぞれ、著者の経験も踏まえて見ていきます。
①に関しては、大人が時間やスケジュールなどを事前に伝えること、タイマーや時計の活用などがあります。
著者の療育現場でも、タイマーをよく活用しますが特にASD児においてはとても有効だと感じています。
難しいケースは、時間やタイマーを活用しても、本人がやり終えたという気持ちがわかず、切り替え困難及び帰り渋りが生じるケースです。
そのため、先に見たストーリー性で子どもの状態をよく観察していく中で、道具を活用(活用できる所はないかを検討)していくことが大切だと思います。
②に関しては、複数の事を同時に行う状態をいかに特定の事(行動)に分けていくことで、少しずつできたを増やしていく方法だと言えます。
発達障害の人たちは、マルチタスクを苦手としている場合が多く、様々な情報を同時に処理する困難さがあります。
そのため、例えば、まずは手洗い→片付け→Aの活動→Bの活動・・・といったように行動を分解して、その中で〝できた″を増やしていく視点が大切です。
著者も特に注意散漫なADHD児に対しては、今注意を向けるべき事(行動)にフォーカスする声掛けを大事にしています。
③に関しては、完璧を目指さず、課題となっている行動を軽減していく視点を重視する方法だと言えます。
つまり、切り替えが悪くても、切り替えの悪さの頻度・強度・持続時間などをよくよく観察すると、以前よりもうまくできている、つまり、成功している場面もあります。
その成功に目を向けることが大切だと著書には記載があります。
著者もうまくできていない状態に目を向けるだけではなく、少しでもうまくできた所に目を向けていくことで、次にどのような環境調整や関わり方の工夫が必要であるかという解決の糸口が少しずつ見えてくることがあると感じています。
以上、【発達障害児(ASD・ADHD)の切り替えへの支援】原因分析と対応方法のポイントについて見てきました。
発達障害児には、生まれ持っての様々な原因から切り替えが悪くなることがあります。
大切なことは、切り替えを困難にしている原因を分析していきながら、個々に応じた対応方法を考えていくことで、長期の視点を持って成功に導く寄り添い・関わり方にあると思います。
私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も療育の質を高めていく取り組みを継続していきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
関連記事:「【発達障害児の〝こだわり″への対応】行動を切り替えるための関わり方」
参考となる書籍の紹介は以下です。
関連記事:「発達障害の支援に関するおすすめ本【初級~中級編】」
北川庄治(2025)発達障害の療育がうまくいく 子どもの見方・考え方.ぶどう社.