発達理解・発達支援・ブログ

人間の多様な理解と支援を目指して!

気分障害 発達障害

【発達障害児のうつ・気分障害の関係について】療育経験を通して考える

投稿日:

発達障害者と〝二次障害″の関連性が高いことが指摘されています。

二次障害″に至る背景は、人によって異なります。

中でも、〝二次障害″における〝内在化″のうち、うつなどの〝気分障害″が大変有名です。

 

それでは、うつ・気分障害は発達障害の子どもにも見られるのでしょうか?

 

そこで、今回は、発達障害児のうつ・気分障害の関係について、臨床発達心理士である著者の経験談も交えながら理解を深めていきたいと思います。

 

 

今回参照する資料は「てんねんDr.(2025)子どもの発達障害がよくわかる本 これ1冊で理解もサポートも!SB Creative.」です。

 

 

スポンサーリンク

 

 

発達障害児のうつ・気分障害の関係について

以下、著書を引用しながら見ていきます。

ADHDの子どもやASDの子どもは気分障害との関連が指摘されています。体質的なところもありますし、実際に日常の中で疲れてしまう環境的なところもあるようです。

 

ADHDの子どもは行動の制御ができず、やりすぎて燃え尽きてしまうことがありますし、ASDの子どもは失敗を恐れて頑張りすぎたりすることがあります。

 

著書の内容から、ASDやADHDといった発達障害児において、様々な要因から気分障害との関連性があると記載されています。

例えば、ADHDの多動性・衝動性の特性が影響して、行動制御がうまくいかずに疲労感が溜まってしまうこと、ASDのこだわりといった白黒思考が影響して、環境に過剰に適応しようとして疲れてしまうなどがあります。

その他にも、LD(学習障害)では、読み書き計算といった勉強での躓き、DCD(発達性協調運動障害)では、スポーツ競技などにおける失敗経験の蓄積などによって、メンタルへのネガティブな影響が生じると思われます。

 

 


一方で、著書には、何ら困難がなくてもうつ病に至るケースがあると記載されています。そして、その場合には、親が気分障害の場合もあるとしています。

そこで、見られる症状には以下のものがあります(以下、著書引用)。

・重篤気分調節症

6~10歳によく起こる症状で、常にイライラし、ときに強いかんしゃくを起こします。

 

・持続性抑うつ障害

うつ病よりも重篤度の低い状態が、1年以上の長期にわたって起こるものです。

 

以上の内容により、発達障害児において、困難となる状態になくても(個人要因に対して)、様々なうつ症状(重篤気分調節症・持続性抑うつ障害)に至るケースもあるとされています。

子どもが生活の中で、イライラ感が高まっていったり、攻撃性が強くなっている状況において、特性が環境に合っていない可能性を疑いながらも、うつの可能性についても検討していくことが大切だと言えます。

うつ病は自然完治しない場合もあるため、児童精神科への受診の検討も必要になっていきます。

 

 

著者の経験談

著者の身近にも子どもから成人の発達障害の人たちには、うつ・気分障害が比較的多く見られるといった印象があります。

もちろん、うつ・気分障害に至る要因は個々に応じて異なりますが、中でも、子どもにおいては、自身が持つ発達特性がうまく環境にフィットできないことで生じることが多いと感じています(もちろん、大人もあると思います)。

例えば、友達とうまく関わりたいも、関わり方がうまくわからない(遊びへの誘い方・断り方・相互のやりとりなど)ことで、信頼のおける友達を作ることが難しいことがあります。

また、思ったことをすぐに口にしてしまう、些細な事でもイライラ感を抑えることができないことで、友達と良好な関係が築けない難しさもあります。

以上の、内容は発達障害児が持つ困難さの一部ですが、こうした困難さが持続することで、自分は駄目な人間なんだ、生きている価値がない、この先悪いことしか起きないといった悲観的な考えが染みついてしまうと、うつ・気分障害の発症のリスクが高まってしまうように思います。

そのため、大切なことは、特性への付き合い方をサポートしていきながら、学童期までに、子どもの自尊心・自己肯定感をしっかりと育んでいくことだと言えます。

また、疲れすぎないように、体調管理に対してサポートしてあげることも重要だと思います。

なぜなら、発達障害児の多くが、感覚の問題や対人関係などの苦手さから、定型発達児よりも目には見えない疲労感の蓄積が多いと感じるからです。

 

 


以上、【発達障害児のうつ・気分障害の関係について】療育経験を通して考えるについて見てきました。

療育(発達支援)で非常に大切なことは〝二次障害″の予防です。

うつ・気分障害といった内在化の問題は、大人だけではなく、子どもにも生じることを理解していきながら、対応策を考えていくことが必要だと言えます。

私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も発達障害児の心の問題にも目を向けていきながら、二次障害に陥らないための支援を行っていきたいと思います。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

 

 

関連記事:「発達障害の二次障害について【療育経験を通して考える】

 

 

てんねんDr.(2025)子どもの発達障害がよくわかる本 これ1冊で理解もサポートも!SB Creative.

スポンサーリンク

-気分障害, 発達障害

執筆者:


comment

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

関連記事

【発達障害児に見られるルールが守れないことへの対応】SST・ペアトレ・感覚統合からのアプローチ

発達障害児は、発達特性などが影響して、生活の様々な所で困り感が生じる場合があります。 著者は長年、療育現場で発達障害児支援を行っていますが、個々の発達特性や発達段階等を踏まえたオーダーメイドな支援はと …

発達障害児にとって大切な〝サードプレイス″の価値について考える

  発達障害のある子どもたちにとって過ごしの場がとても大切です。 過ごしの場には、家庭や学校が主にあるかと思いますが、それ以外の第三の場所としての〝サードプレイス″も大切だと考えられています …

【〝折り合い″をつける力の根底を支えているものとは?】発達障害児支援の現場から考える

  〝折り合い″とは、自分と他者との間で〝双方が納得できる妥協点を見つける″などとも言われています。 発達障害児支援の現場でも、子ども同士が〝折り合い″が必要となる場面が多くあります。 &n …

発達障害児が大人の注意を理解していく過程について療育現場から考える

療育現場で子どもたちと関わっていると、子どもたちの問題行動(問題とされている)に頭を悩ませる場合が多くあります。 例えば、自分の思い通りにいかないと癇癪を起こしたり、他児を叩くなど、私が担当してきた子 …

【発達障害児に見られるごっこ遊びができない場合の対応】3つのポイントを通して考える

著者は長年、療育現場で発達障害など発達に躓きのある子どもたちへの療育をしてきています。 発達障害児、中でも、自閉症児において、〝ごっこ遊びができない・苦手である″といったケースがよく見られます。 〝ご …