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【療育(発達支援)の成果】主体性と自己肯定感をキーワードに考える

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療育(発達支援)を長年行っていると、子どもたちの成長を実感する機会に多く出会うことがあります。

こうした出会いは、療育(発達支援)の〝成果″を感じる時でもあります。

もちろん、療育(発達支援)の成果は、複合的な要因が影響していることが多いため、特定の因果関係からは語ることができない難しさがあります。

一方で、〝○○の発達が大きく影響して○○の成果が出た可能性がある″〝○○の支援が大きく影響して○○の成果がでた可能性がある″といった仮説を立てることも可能だと言えます。

そして、長期的な子どもとの関わりを通して、この○○に当てはまるものが徐々に見えてくることがあります。

さらに、多くの事例を通して、仮説の精度を高めていくことが可能になっていきます。

 

それでは、療育(発達支援)の成果を感じる時として、どのような事例があるのでしょうか?

 

そこで、今回は、療育(発達支援)の成果について、臨床発達心理士である著者の経験談から、主体性と自己肯定感をキーワードに理解を深めていきたいと思います。

 

 

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【療育(発達支援)の成果】主体性と自己肯定感をキーワードに考える

事例:小学校中学年のA君(当時)

A君は、著者が勤める放課後等デイサービスに1年生の頃から通所し始めた子どもです。

1年生の頃のA君は、様々な遊びに対して、〝やりたい″気持ちが強いも、うまくいかないことが多く、遊びの途中で固まる・泣き出すことがよくありました。

また、〝物の貸し借り″がうまくできず、使いたいものは全て一人で使おうとすることが多く、活動スペースも広い場所を一人で使おうとする様子がよく見られていました。

そのため、他児との間で、空間の使い分け・物の貸し借りなどにおいて、うまく関われないことがよくありました。

A君の状態像として、全体的な発達がゆっくりであり、様々な領域に関してバランスよく着実に成長している(成長していくであろう)といった印象がありました。

著者はA君の〝やりたい″気持ちを尊重していきながら、どのように対応すればA君が主体性及び成功体験を伸ばし・獲得できるのかを考えていきました。

また、空間や物の使用も含めて、どのような対応をすれば他児との関わりがうまくできるのかを考えることも同時に行うようにしていきまいた。

 

 

関連記事:「【知的障害児の対応で大切なこと】療育経験を通して〝ゆっくり″な発達について考える

 

 


それでは、次に、主体性と自己肯定感をキーワードに支援の経過をお伝えしていきます。

 

主体性と自己肯定感への支援から見たA君の変化

様々な遊びに対して、主体的に関わろうとするA君の様子は、様々な物事を吸収できるといった長所だと言えます。

A君は、放課後等デイサービスに来ると自らやりたい遊びを見つけ(事前に考えていることが多くあります)、その遊びに1人で没頭し始めていました。

そのため、著者は1人で没頭する環境をうまく調整しながら(活動スペースの設定など)、うまくいかない点に関して、スタッフがサポートしていきながら1人でできる部分を増やしていきました。

A君は、一つの遊びが満足すると(例えば、ブロック積など)、次の遊びに移行していくことがよくありました。

著者は、A君が〝できたよ!″と遊びがうまくできたことを報告してくることに対して、直ぐに肯定的なフィードバックを行うことを徹底していきました。

また、遊びの過程で頑張っている所、うまくできている所を見つけ、A君に伝えることもよく行っていきました。

A君は様々な遊びを主体的に決め、繰り返しの遊びの中で、様々な力を獲得していきました。

また、能力の獲得に加え、〝やった!″〝できた!″という自己肯定感も獲得していったように思います。

 

A君は、一人遊びをする一方で、他児への意識・関心も高まっていきました。

他児と一緒に様々な遊びを協力して行う様子も徐々に見られるようになっていきました。

A君は、他児に自分がやっている遊びを教えたり、完成したものを見せようとする姿も出てきました。

著者は、こうした対人意識が高まっているA君に対して、〝物の貸し借りの仕方″や〝活動スペースの使い方″も伝えていきました。

例えば、○○くんが一緒に使いたいけどできるかな?○○時までA君が使って○○時から○○君が使うのはどうかな?部屋の○○のスペースで遊んだ方が安全に遊べるよ!など、その他、様々な伝え方を行っていきました。

もちろん、受け入れられないこともありましたが、相互に了承が取れる頻度が月日を追うごとに高まっていきました。

もちろん、うまくできた時には、肯定感なフィードバックを行い、仮にうまくできなくても、A君の気持ちに寄り添うようにしていきました。

小学校中学年のA君は、自ら他児に物を貸そうとしたり、自分から遊びが邪魔されない場所を探して遊ぶを環境を整える様子も出てきました。

 

こうした変化は、A君の〝主体性″を大切に、安心できる環境(物的環境・人的環境)を調整していきながら、A君の取り組みを褒め(プロセスも含め)、成功体験を積み重ねていった結果だと言えます。

そして、人との信頼と、遊びを通した成功体験によって養われた〝自己肯定感″は、さらに、様々な事柄に挑戦しようする〝意欲のエネルギー″や他者を思いやる〝利他的行動″に繋がっていると感じています。

 

 

関連記事:「【モンテッソーリから見た〝学びの道筋″】療育経験を通して考える

関連記事:「【発達障害児の子育てで大切にしたいこと】2種類の接し方から考える

関連記事:「療育で重要なこと-自尊心・自己肯定感の視点から考える-

 

 


以上、【療育(発達支援)の成果】主体性と自己肯定感をキーワードに考えるについて見てきました。

A君の事例を含めて、改めて、子どもの成長・発達は早いものだと感じます。

私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も療育実践を通して、子どもの主体性や自己肯定感を育む療育を試行錯誤していきたいと思います。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

 

 

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