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【発達障害児に見られる他児のおもちゃを取る場合への対応】3つのポイントを通して考える

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著者は長年、療育現場で発達障害など発達に躓きのある子どもたちへの療育をしてきています。

発達障害児が起こすトラブルの一つとして、他児の〝おもちゃを取る″行為があります。

こうした行為が長期化すると、対人関係でのトラブルが増加していく場合もあります。

 

それでは、発達障害児に見られる他児のおもちゃを勝手に取ってしまう場合に対して、どのような対応方法があると考えられているのでしょうか?

 

そこで、今回は、発達障害児に見られる他児のおもちゃを取る場合の対応について、臨床発達心理士である著者の経験談も交えながら、3つのポイントを通して理解を深めていきたいと思います。

 

 

今回参照する資料は「岩永竜一郎(2022)発達症のある子どもの支援入門-行動や対人関係が気になる幼児の保育・教育・療育-.同成社.」です。

 

 

※幼児を対象として書かれた本ですが、学童期にも活用できる視点も含まれていると思います。

 

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他児のおもちゃを取る場合の対応:3つのポイント

著書には〝他児のおもちゃを取る″場合の対応方法として、以下の3つのポイントが書かれています(以下、著書引用)。

物のやり取りを通して他の人の所有物であることを知ってもらう

 

自分のエリア、他人のエリアをわかりやすく示す

 

取ってしまう行動の前後の状況をとらえて対応を考える

 

 


それでは、次に、以上の3つのポイントについて具体的に見ていきます。

 

1.物のやり取りを通して他の人の所有物であることを知ってもらう

以下、著書を引用しながら見ていきます。

自分のもの、他人のものを理解してもらうために他の人と物をやり取りする機会を多くする必要があります。そこで、相手からもらう、相手にあげる、という練習をすることが望まれます。

 

子どもの中には、他者が使っている物(所有物)といった認識がない場合もあります。

著者がこれまで見てきた療育現場でも、他児が使って遊んでいる物にも関わらず、気になって勝手に取ってしまう子どもも少なからずいました。

そのため、こうした場合に対しては、物のやり取りを遊び(活動)の中で教えていくアプローチもあります(〝物のやり取りを通して他の人の所有物であることを知ってもらう″)。

例えば、工作遊びの際に、自分に必要な物(道具や材料)を大人が持って置き、子どもが必要な際に大人に〝かして!″とお願いする場面を意図的に作るなどです。

こうした日々の物のやり取り(貸し借りの練習)を通して、自分の物、他人の物、といった認識を高めていくことが大切だと言えます。

 

 

2.自分のエリア、他人のエリアをわかりやすく示す

以下、著書を引用しながら見ていきます。

どこまでが自分のものでどこからが他の子どものものかがわかるように視覚的にわかりやすくする工夫をすると良いでしょう。

 

著書にあるように、視覚的に自他のエリアを明確化する方法もまた有効な取り組みだと言えます(〝自分のエリア、他人のエリアをわかりやすく示す″)。

著者はこの方法は比較的多く活用しています。

例えば、工作遊びの際に個々が使う個別ボックスを用意する、お盆やテーブルで境界を作る、床にテープを貼って境界を作る、パーテーションで空間を分ける、部屋で分ける、などの方法があります。

自他のエリアの作り方は、小規模(ボックスを用意するなど)から大規模(部屋で分ける)など様々です。

特に自閉症児は、視覚的な理解が強い場合が多いため、こうした取り組みは有効だと感じています。

 

 

3.取ってしまう行動の前後の状況をとらえて対応を考える

応用行動分析学の視点を取り入れて、行動(物を取る)の前後の状況を分析して、対応方法を検討することも有効です(〝取ってしまう行動の前後の状況をとらえて対応を考える″)。

著者も勝手に物を取ってしまうといった行動が発生する前後の状況をよく分析することがあります。

分析していくと様々な事が契機となって、こうした行動が発生していることに気づかされます。

例えば、他者の関心を引きたかった、お気に入りのおもちゃであった(その子のお気に入り・安心材料)、遊ぶおもちゃが限定されていた、他者が使っていることに気づかなかった、など様々あります。

こうした仮説を持つことで、次に何に気を付けて対応すべきかが、少しずつ見えてくる場合がよくあります。

 

 


以上、【発達障害児に見られる他児のおもちゃを取る場合への対応】3つのポイントを通して考えるについて見てきました。

他児のおもちゃを勝手に取ってしまう行為は、療育現場ではよくある光景だと思います。

一方で、取ってしまう行為の背景には様々な要因があることも事実です。

そのため、個々の状態に応じた対応方法を工夫していくことが大切だと言えます。

私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も療育現場で起こりうる様々なトラブルを解消していけるように、子どもの行動の背景要因を分析しながら対応する複数の方法を学んでいきたいと思います。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

 

 

関連記事:「【発達障害児に見られる物を投げる・物を壊すことへの対応】4つのポイントを通して考える

 

 

岩永竜一郎(2022)発達症のある子どもの支援入門-行動や対人関係が気になる幼児の保育・教育・療育-.同成社.

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