臨床発達心理士(Clinical Developmental Psychologist)は、簡単に述べますと、発達的視点に重きをおき、人を理解し、支援することを専門とした人のことを言います。
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著者は臨床発達心理士の有資格者であり、療育現場で日々、発達に躓きのあるお子さんたちのサポートをしています。
その中で、発達的視点の理解が非常に役立つと実感しています。
また、臨床発達心理士として日々、専門性を磨いていくために、「客観的」に人を理解することを大切にしています。
そこで、今回は、著者の経験も踏まえた上で、臨床発達心理士の専門性について、そして、専門性を磨くために大切にしていることをお伝えします。
キーワードとして、「客観的」「客観性」の視点から述べていきたいと思います。
今回参考にする資料は、「講座・臨床発達心理学①:臨床発達心理学の基礎」です。
臨床発達心理士の専門性について
以下に参考資料を引用します。
臨床発達心理士には、「発達支援のニーズがある人に客観的に向き合う」ことが求められる。「客観的」というと少し冷たい印象があるかもしれないが、そうではない。自分の興味・関心にとらわれずに、目の前の人を見て、その人を理解し、支援するということである。また、客観には、間主観性(intersubjective)という側面もある。すなわち、複数の主観、複数の人の間で認識の共有がはかられることを意味する。自分の独断での解釈に基づく支援ではなく、しっかりとした根拠に基づく人の理解に基づく支援、当事者も含めて周りの人々と共有可能な支援をするということである。
以上が引用となります。
臨床発達心理士には、客観的視点が重要であり、その中には、観察者の主観性も大切とされています。
そして、ある人の主観性と自らの主観性とを重ね合わせていく作業を繰り返していくことが大切です。
発達支援の現場には様々な方がやってきます。こうした多様な人たちを理解するには、自ら現場に赴き、自ら対象者に関わることで感じる主観性を他者と共有していく営みが専門性を鍛えるためには重要です。
著者のコメント
療育現場には、様々な発達に躓きのあるお子さんたちがやってきます。
こうしたお子さんたちを理解するためには、自らの主観性と向き合うこと、そして、他のスタッフと意見を交わしながら、関主観的に人を理解していく過程が大切です。
さらに、データなど主観的な理解をある種取り除いた数量的な理解も必要です。
例えば、お絵描きの発達を例に考えてみましょう。
あるお子さんA君がお絵描きに夢中になっていたとします。
書き方は殴り書きです。画用紙いっぱいに思い思いに書いています。
ここで過去のデータをもとにお絵描きの発達段階を分析したものを参照します。
お絵描きの発達段階は例えば、殴り書き→線や丸→人の顔→人に体をつけたした頭足人という発達過程があります。A君はこうした段階の中で殴り書きの発達段階にいるということになります。
こうした視点も「客観性」になります。つまり、絵描きに焦点を合わせた時に、どの発達段階にいるのかという理解です。
さらに、お絵描きにはまりだした!ダイナミックに画用紙いっぱいに活き活きと書いている楽しい姿・熱中している様子は、観察者が主観的にくみ取るものです。
さらに、これを他のスタッフも同様に感じているということであれば、主観と主観が重なりあいます。これは「関主観性」ということで、これも「客観性」ということが言えます。
つまり、量的に分析するのか、質的に分析するのかの違いになります。
著者は、どちらの視点も大切だと考えています。
療育現場で大切なのは、ある人の考え方、特定の人の考え方に偏ることがなく、常に「客観性」を大切にして人を理解しようとすることだと思います。
もちろん、特定の人の考え方が良いというケースもあるかと思います。これまで、同じような感が方・考え方をしている中で、異なる意見などは人の理解に非常に貢献することもあります。
大切なことは、様々な視点を取り入れながら人を理解していこうとする姿勢だと思います。
臨床発達心理士には、こうした「客観性」を磨いていくことが専門性として必要になります。
そして、「客観性」を磨くためには、量的・質的に人を理解することをバランスよく行うことだと思います。
私自身、まだまだ未熟ですが、様々なデータに触れる機会を持ち、そして、自らの感覚を言語化していく努力を惜しまず、他者の意見も柔軟に取り入れていきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
山崎晃・藤崎春代(編著)(2017)講座・臨床発達心理学①:臨床発達心理学の基礎.ミネルヴァ書房.