発達障害の人たちの中には様々な感覚の問題があると言われています。
感覚の問題には大きく、感覚調整障害とプラクシスの障害の2つがあります。
関連記事:「発達障害の感覚処理過程の問題【感覚調整障害とプラクシクの障害から考える】」
その中の感覚調整障害には、発達障害の中でもよく知られている感覚過敏が含まれていますが、感覚過敏も含め4つのタイプがあると言われています。
それでは、感覚調整障害には一体のどのようなものがあるのでしょうか?
そこで、今回は、発達障害によく見られる感覚調整障害の4つのタイプについて考えを深めていきたいと思います。
今回参照する資料は「岩永竜一郎(2014)自閉症スペクトラムの子どもの感覚・運動の問題への対処法.東京書籍.」です。
発達障害の感覚調整障害について【4つのタイプから考える】
以下、著書を引用しながら「感覚調整障害」について見ていきます。
感覚統合理論の中では感覚入力過程に問題があり、身体や環境からの感覚入力に対して低反応または過反応を示すことを感覚調整障害(sensory modulation disorders または sensory modulation dysfunction)と呼んでいます。
そして、「感覚調整障害」には、「低登録」「感覚探求」「感覚過敏」「感覚回避」の4つがあると記載されています。
それでは次に、4つのタイプそれぞれについて、著者の経験談も交えながらお伝えしていきます。
低登録
感覚刺激に対する反応が弱い
著書の中では、名前を呼んでも振り向かない、痛みへの訴えがないといった例が記載されています。
こうした事例は著者の療育現場にも見られます。
例えば、ある自閉症児の例で言えば、何か興味のあることに没頭していると周囲の音などへの反応が弱くなる場合がよくあります。
そのため、名前を呼んだり、帰りの準備の促しで声掛けしてもほとんど反応が返ってことないことがあります。
こうした反応は周囲からすると無視しているようにさえ見えてしまうことがあります。
しかし、経験を重ねるうちに、こうしたケースは、低登録といった感覚刺激への反応の弱さがゆえに生じる反応だと理解できるようになりました。
感覚探求
感覚刺激に対する反応が弱く(中略)、感覚刺激を追い求める対処行動をとる
著書の中では、コマのようにクルクル回り続ける、泥遊びを止めないといった例が記載されています。
こうたい事例は、比較的中重度のお子さんに多く見られる印象があります。
著者は以前、未就学児を対象に障害児保育をしていましたが、室内でコマのようにクルクル回ったり、園庭で泥遊びを始めると泥の感覚に没入し、長時間遊び続ける子も多くいました。
子どもが好む感覚にも様々あり、例えば、泥、砂、水、粘土、片栗粉などを好む子が多かった印象があります。
このように、こうした感覚探求の行動は、感覚への反応が弱いため、自分の体に刺激を入れるために行う行動だと理解できるようになりました。
感覚過敏
感覚刺激に対する反応が強く(中略)、過剰となる
著書の中では、掃除機の音が苦手、服のタグが不快といった例が記載されています。
感覚過敏は、自閉症を中心とした発達障害の人たちに多く見られます。
著者がこれまで勤めてきた療育現場でも、触覚過敏、聴覚過敏、嗅覚過敏などは非常に多く、中でも特定の音が苦手(聴覚過敏)な子どもたちは多かった印象があります。
聴覚は視覚とは異なり、ノイズキャンセリング(耳栓など)を使用しない限り、自分から回避が難しいため、よく見られるものであると考えられます。
このように、感覚過敏は、他の感覚調整障害と比べても比較的理解しやすいものであると思います。
感覚回避
感覚刺激に対する反応が強く(中略)、感覚刺激から遠ざかる対処行動をとる
著書の中では、不快な音を避けるためにその音がする場所を避けるとった例が記載されています。
研究者によっては、前述した「感覚過敏」と「感覚回避」を一つにまとめて「過反応」としている人もいます。
そのため、感覚回避は、感覚過敏と非常に近い感覚調整障害であり、そもそも苦手な感覚の存在があり、自ら苦手な感覚から遠ざかる行動をとっていると言えます。
そういった意味で、苦手な感覚を予知し未然に防ぐ行動だとも言えます。
著者の療育現場にも、うるさい物音が苦手の子が、直接その場に居合わせたわけでもないのに、おそらくうるさくなるであろうと予知し、回避する子もおります。
一見するとわかりにくい感覚ですが、こうした苦手な感覚を予知し回避するといった事例や知識を通して、感覚回避の理解が深まったと感じます。
以上、発達障害の感覚調整障害について【4つのタイプから考える】について見てきました。
著者も、感覚調整障害の詳細を学ぶまでは、感覚の問題は感覚過敏と鈍感さといった理解に留まっていましたが、4つのタイプを現場経験と紐づけることで感覚の問題への理解が深まったと実感しています。
それは、子どもたちの理解が深まったということです。
私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も様々な感覚の問題について現場と知識を関連付けていけるように、日々の療育での実践を大切にしていきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
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岩永竜一郎(2014)自閉症スペクトラムの子どもの感覚・運動の問題への対処法.東京書籍.