発達障害の人たちを支援するにあたって二次障害の予防は非常に重要になってきます。
二次障害とはそもそもASDやADHDなどの一次障害に何らかのストレスが加わりそれによってうつ病や不安障害、行為障害などといった障害が二次的に生じることを言います。
今回はADHD(注意欠如/多動性)を例に取り、発達障害の二次障害について概説していきながら、私がこれまで関わってきた現場で二次障害が疑われる児童についてお伝えしていこうと思います。
今回参考にする資料として「榊原洋一(2019)最新図解 ADHDの子どもたちをサポートする本.ナツメ社.」を参照していきたいと思います。
ADHDの二次障害について
ADHDの発達特性のある人たちは、その行動特徴から周囲とのやり取りがうまくできずに、劣等感を持ったり、周囲が注意や叱責を繰り返すことで二次的な障害に繋がることがあります。
ADHDの人たちが二次障害に至るまでの過程を描いたものとして、「ADHDのマーチ」というものがあります。それが下の図になります(榊原,2019)。
この図を見ると、ADHDといったもともとの一次障害があり、それが反抗挑戦性障害へと発展し、その後、不安障害あるいは行為障害へと発展してことがわかります。
反抗挑戦性障害とは、かんしゃくを起こしたり、大人への挑発的な態度をとることが半年以上続くことで、通常は9歳ごろまでに発症し、小学校高学年から中学生初期に最も顕著に現れます。反抗挑戦性障害がさらにエスカレートすると、他人への暴力、強盗、ひったくりなど法に触れる行為としての行為障害(素行障害)へと発展していきます。
以上が簡単にではありますが、ADHDの二次障害が発症するプロセスです。
関連記事:「反抗挑戦症/反抗挑戦性障害とは?」「反抗挑戦症への支援-キレる子どもへの支援-」
著者の体験談
次に、私の現場の経験から二次障害が疑われるケースについてお伝えしていこうと思います。
私自身、これまで、児童相談所で指導員や発達支援センターで未就学児への療育、現在は放課後等デイサービスで小学生を対象に療育をしております。
こうした子供たちとの関わりの中で非常に理解や対応が難しいケースとして二次障害が疑われるケースだと感じています。
中でも、先ほどお伝えした反抗挑戦性障害が疑われる児童など、子供との間でトラブルを起こしやすいため、どうしてもネガティブな印象をもってしまうことが多くあります。
こうした児童の特徴として、もともと不注意や多動・衝動性傾向が強いことに加えて、ルールに従うことが難しい、挑発的な態度をとって大人や周囲を困らせるなどの行動特徴があります。
大人が何か指示を出すととにかく拒否を示す、他児がやっていることがすぐに気になりちょっかいを出す、口や手が出る、最初に決めたルールなどを忘れたり、自分の都合の良いルールに作り替えるなど困った行動が多く見られる印象があります。
こうした二次的な要因には養育環境が大きく関わっていると言われています。
つまり、そもそもの一次要因としてもっていた、不注意や多動・衝動性などの発達特性に対して周囲が注意や叱責を加えそれが長期化することによって、子供の自尊心が低下しそれが問題行へと発展してしまうということです。
こうした児童も状況によっては相手を思いやったり、場の雰囲気を読んだり、素直で大人に甘えてくることもあります。
私がこういった子供たちを支援するにあたり注意していることは、注意や叱責する言葉を使うことをできるだけ回避し、良い行動、何かができたとき、頑張った過程などをほめるということを心掛けています。
こういった子供たちは大人への信頼感が弱く、常に大人を警戒し疑っています。
そのため、肯定的なまなざしや肯定的な評価が関わりとして非常に重要になってきます。それと合わせて、どうしてもしてほしくない行動などはできるだけ早めに本人とルールを決め、そのルールを事前に伝え、そのルールからはみ出した時には振り返りをしています。
大人との信頼やルールなどの定着には非常に時間がかかるかと思いますし、当然ですが個人差があるかと思います。また、他の支援員や他の機関、可能であればご家庭との意思疎通(子供への関わり方など)など連携も重要になってきます。
二次障害の疑いのある生徒は、一次障害への対応も併せて行うなどより支援の難しさが増しますが、子供たちとの信頼関係の構築と、自尊心を高めていく関わり方がその後の発達において非常に重要になってきます。
今回はADHDの二次障害として、反抗挑戦性障害を例に考えてきました。二次障害のケースは他にも様々あります。
今後も、発達障害だけではなく二次障害への理解とそれを予防できるような対応を考え実践していきたいと思います。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
榊原洋一(2019)最新図解 ADHDの子どもたちをサポートする本.ナツメ社.