私が以前いた療育施設では様々な遊びを行っていました。施設を利用されていたお子さんたちも様々でしたので、その子に合った遊びを創意工夫していくことがとても大切になります。
遊びの中でも、体をダイナミックに使った遊びや、何かを描いたり切ってはったりなどの制作遊び、音楽に合わせて踊るダンス遊び、粘土や片栗粉などの感触を楽しむ感触遊びなど、いろいろと実践してきました。
今回はこうした遊びの中でも比較的準備が必要で、子どもたちの体の使い方や目の使い方などの理解にも繋がる「的当てゲーム」について、その実践をお伝えしていこうと思います。
「的当てゲーム」にも様々な種類のものがあるかと思います。身近なものとして、ボーリングやダーツ、ストラックアウトなど、何か的があり、それをめがけて転がす、投げる、蹴るなどの遊びがあるかと思います。
私も実際に「的当てゲーム」をする際に、こうした遊びからヒントを得たことが多くありました。
それでは実際に私がこれまで療育施設で行ってきた「的当てゲーム」についてターゲットとなるお子さんたちの状態像なども交えて説明します。
①斜面でボールを転がして当てる
非常にシンプルな遊びです。机(長机)などで斜面を作り、斜面の先に的を用意し(少しの力で当たると簡単に倒れるもの)、あとはボールがあればできます。動きとしては、ボールを持つ、ボールを離す動作が必要になります。
この遊びは比較的重度のお子さんたちに対して行ってきました。必要な動作を最小限にするということがポイントです。また、ボールを持つ・離すことが難しいお子さんには大人が部分的にサポートしていました。
②ボールを転がして当てる
①とは異なり、水平面(斜面ではなく)でボールを転がして当てるという遊びです。これも、机と的、ボールなどがあればできます。もちろん床でも大丈夫です。動きとしては、自分の力で転がすという能力が必要です。
この遊びはボール遊びが少しできるというお子さんたちに対して行ってきました。ボールを両手で持って転がすという動きですが、的もあるため、自分の行為が変化を生む(転がす➢的が倒れる)ということへの楽しみ方を作れるかがポイントになるかと思います。
また、この遊びの面白いところは、机を繋げ長くすることや的をボーリングのピン(ペットボトルなどで作成)などたくさん置くことで楽しみ方のバリエーションがつくれることです。
③ボールを投げて当てる
①②より難易度が高いです。ボール(大小様々)と的があればできます。的への工夫がとても大切で、子どもたちが当てたくなるような的が必要です。例えば、大きめの段ボールの箱などに口の空いたキャラクターの絵を描き(動物など)、口の部分を切り抜くことで、的の部分がよりはっきりします。悪者のキャラクターを描いてもいいかもしれません。
動作としては、投げるという動作が必要になりますので、ここでのポイントは子どもたちが投げやすいサイズのボール選びです。そして、それがしっかりと命中する的のサイズの設計も重要です。
④ボールを蹴って当てる
これまでとは違い足の動き、蹴る動作が必要です。これは的があればできますが、私がいた療育施設で実施にやると意外と難しいものでした。うまく発展できれば、ゴールなどを作ってサッカーごっこに発展できるかもしれません。
⑤引っ張って当てる
これは療育施設でよくやった遊びです。例えば、ゴム紐などを用意し、その先にボールを付け、これをテーブルなどに取り付けます。テーブルの端には的を用意します。
動きとしては、ボールを握る、引っ張る、離すという動作が必要になります。子どもたちの能力に応じてボールのサイズを変えたり、ボールではないものを取り付けるなどの工夫が必要かと思います。
難しいのはボール(ボールでなくても可)、ゴムの種類、的の種類などのバランスの設計です。的がうまく倒れるか、ゴムが切れないか、少しの力で引っ張れるかなど力のバランスがとても大切になります。
私は「バイキンマンの的当てゲーム」と命名し、大きな発泡スチロールの箱にバイキンマンのイラストを描き、その箱にボール付きゴムを取り付けた遊びを作成しました。
以上が実際に私が療育施設で取り組んできた「的当てゲーム」になります。
これ以外にもかなり手の込んだ「ストラックアウトゲーム」なども実際に作ってやりましたが、作成時間が非常にかかったので今回は割愛します。
「的当てゲーム」は非常にシンプルな遊びに思われますが、動作(手や足など)と目の協応が必要になるため、障害のあるお子さんたちにとっては簡単ではないと感じます。
発達的な視点からも、ボールを転がした結果、的が倒れたのと、的をめがけて(的を意識して)ボールを転がして倒すのとでは、後者の方がむずかしいです。
このように、「的当てゲーム」という一つの遊びをとってみても、子どもたちは様々な能力を必要としていることを実感しました。
今後も遊びを通して、子どもたちへのより良い支援のヒントや実践を目指していこうと思います。
最後まで読んでいただきありがとうございました。