〝ADHD(注意欠如多動性障害)″とは、不注意、多動性、衝動性を主な特徴とした神経発達障害の一つです。
ADHDの子どもを理解する際に、行動の背景を理解する様々な仮説があります。
それでは、ADHDの行動を理解していく上で、どのような仮説があるのでしょうか?
そこで、今回は、ADHDへの理解について、トリプルパスウェイ仮説とDMN仮説を通して理解を深めていきたいと思います。
今回参照する資料は「てんねんDr.(2025)子どもの発達障害がよくわかる本 これ1冊で理解もサポートも!SB Creative.」です。
トリプルパスウェイ仮説とは何か?
〝トリプルパスウェイ仮説″とは、その名の通り、3つの困り事を説明した仮説となっています。
その3つとは、1.実行機能の障害、2.遅延報酬の障害、3.時間処理の障害です。
以上の3つは、ADHDの子どもによって該当箇所は異なります。例えば、全て該当、1つ該当、中には、全て非該当のケースもあります。
それでは、1~3について具体的に見ていきます。
1.実行機能の障害
〝実行機能″とは、物事をやり遂げる力だと言われています。
ADHDの人は、特定の課題を最後までやり切ることを苦手としています(〝実行機能の障害″)。
もちろん、一度、集中しはじめると爆発的な力でやり遂げる場合もあります。
一方で、計画的に物事を進めていくこと、また、そのために、今すべきことに意識を向け続けることを苦手としています。
〝実行機能の障害″への対応として、次の方法があります(以下、著書引用)。
比較的どのADHDの薬を用いても効果があると思われます。また、苦手でも少しずつ成功体験を積んでいくことで、将来あまり困らなくなります。
著書の内容から、薬物療法や成功体験の積み重ねによる自尊心・自己肯定感の構築が有効だと言えます。
中でも、少しずつ成功体験を積み重ねていくことは、二次障害の予防も含めて非常に重要な観点であり、そのためにも、課題設定をあまり高くしない必要があります。
2.遅延報酬の障害
〝遅延報酬の障害″とは、少し先の報酬のために我慢することができずに、目の前の報酬に直ぐに目が向いてしまうことを指します。
例えば、遊びを思う存分やるために、宿題を早めに終えておくことが難しく、直ぐにやりたい遊びに注意が向いてしまうことがあります。
著書には、こうした〝衝動性″に対して、〝決してわがままでやっているわけではない″といった理解が大切だとしています。
〝遅延報酬の障害″への対応として、次の方法があります(以下、著書引用)。
この対策としては薬が有効です。国内ではコンサータやビバンセが中心です。多動衝動性は、15歳くらいで落ち着いてくるお子さんが多いことはよく知られています。
著書の内容から、薬物療法が有効だと言えます。
また、多動性・衝動性は、大人に向けて徐々に落ち着いてくる傾向があると言われています。
そのため、個人の努力による改善には限界があることを前提として、ゆっくり時間をかけて対応していく姿勢が必要だと言えます。
3.時間処理の障害
〝時間処理の障害″とは、目標に向けて時間配分を調整することの難しさのことを指します。
例えば、待ち合わせの時間を決めていてもいつも遅れる・あるいはギリギリになる、電車の時間が決まっていてもいつも遅れそうになるなどがあります。
つまり、人はある目標(○○時までに終える、辿りつくなど)に対して、ある程度時間配分をしながら活動を進める必要がありますが、こうした調整が難しいケースがADHDの人には多いと言われています。
〝時間処理の障害″への対応として、次の方法があります(以下、著書引用)。
子どものうちは保護者がタイムキーパーになることでしょう。大人になるにつれて、いろいろな機材(タイマーやアラームなど)を活用しながら、時間の区切りの設定の仕方などを覚えていくことになるでしょう。
著書の内容から、まずはタイムキーパー役による時間調整役が必要だと言えます。その後は、機材の活用等による環境調整が必要になっていくとされています。
DMN仮説とは何か?
〝DMN(Default Mode Network)仮説″について、以下、著書を引用しながら見ていきます。
脳が意識的に活動していないときに活性化する神経回路で、脳を休ませるための機能です。
ADHDの子どもはこのDMNをうまく調整できないのではないかといわれてきています。
脳は、ぼーっとしたり、寝ている最中にも活動を続けています。
よく睡眠後に記憶が整理されて、これまでうまく整理されなかった問題が解決できたり、新奇なアイディが湧くことがあります。
これは、脳が休息中に記憶の整理をしているためです。
つまり、脳は休んでいる時にも、多くのエネルギーを使用し続けていると言えます。
ADHDの人は、DMNがうまく調整できないことで、例えば、ぼーっとしているようでも(休息中、本来ならDMNが活性化している状態)、頭の中は非常に忙しい状態になっていることが多くあると言えます。
関連記事:「【ADHDの症状が発症する原因について】DMN障害仮説を通して考える」
以上、【ADHDへの理解】トリプルパスウェイ仮説とDMN仮説を通して考えるについて見てきました。
〝トリプルパスウェイ仮説″も〝DMN仮説″もあくまでも仮説であるため、ADHDの症状の原因はまだ解明できていないと言えます。
私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も発達支援をしていく上で、様々な発達障害の原因にも目を向けていきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
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