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【自閉症の疲労の特徴と対策】自閉性疲弊・キャパシティオーバー・エネルギーの枯渇

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自閉症の人には疲労が蓄積されやすいといった特徴があります。

例えば、ある活動に過度にエネルギーを使うことで、その後、急に疲労が出てくるなどです。

一方で、子どもの頃には、疲労感の自覚はなく、大人になってから疲れを自覚するようになると言われています。

 

それでは、自閉症に見られる疲労の特徴にはどのような要因があると考えられているのでしょうか?

また、疲労への対策においてどのような視点を大切にすれば良いのでしょうか?

 

そこで、今回は、自閉症の疲労の特徴と対策について、臨床発達心理士である著者の経験談も交えながら、自閉性疲弊・キャパシティオーバー・エネルギーの枯渇をキーワードに理解を深めていきたいと思います。

 

※この記事は、臨床発達心理士として10年以上療育現場に携わり、修士号(教育学・心理学)を有する筆者が執筆しています。

 

 

今回参考にする資料は「内山登紀夫(2025)児童発達支援・放課後等デイサービスのための発達障害支援の基本.日本評論社.」です。

 

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【自閉症の疲労の特徴】自閉性疲弊をキーワードに考える

以下、著書を引用しながら見ていきます。

ASDの人が陥りやすい疲弊と燃え尽きの誘因は、情報過多、感覚刺激過多、負担過多、カモフラージュ(マスキングは、その一つの例です)、変化への適応、不安などがあります。

 

自閉症の人たちが疲れを感じやすい特徴を示す用語に〝自閉性疲弊″があります。

そして、〝自閉性疲弊″が生じる誘因は、著書にあるように、情報過多、感覚刺激過多、負担過多、カモフラージュ、変化への適応、不安などがあると考えられています。

どれも、自閉症の人たちが苦手とする特徴だと言えます。

例えば、情報過多に関しては、ASDの人は必要・不必要な情報を選別することを苦手としています。そのため、多くの情報刺激のある環境にいると、多大な負荷が生じます。

また、感覚刺激過多に関しては、ASDの人は様々な感覚に対して過敏に反応する傾向があります(一方で鈍感なものもあります)。そのため、例えば、大きな音や賑やかな音などを苦手としている場合、そうした環境に身を置くことで疲労が蓄積されていきます。

カモフラージュに関しては、例えば、マスキングといった本来の自分を隠して周囲に溶け込めるように偽りの自分を演じることが、大きな疲労に繋がることがあります。

その他、変化への適応に関しては、ASDの人はいつも通りに強い安心感を持つ傾向があります。そのため、変化の多い環境に身を置くこともまた大きな疲労感になります。

 


著者の療育現場にもASDの子どもは多くいます。

その中でよく見られる特徴としては、疲労を感じにくいといった様子がよく見られます。

例えば、ある活動に対して過度に頑張り過ぎて明らかに疲れているも、本人は〝疲れていない″と言い張り、次の活動にも全力で取り組むなどです。その結果、翌日、一気に疲労が押し寄せるなどがあります。

こうした背景には、そもそも疲労に対する自己理解がまだ育っていないこと、さらに、感覚の問題や情報の選別困難、カモフラージュなど、本人が気づいていないところで無意識的に疲労が蓄積されていることが考えられます。

 

 

【自閉症の疲労の対策】キャパシティオーバー・エネルギーの枯渇をキーワードに考える

以下、著書を引用しながら見ていきます。

キャパシティオーバー」と「エネルギーの枯渇」の2つを常に意識しましょう。

 

キャパシティは同時期に処理できる能力

 

「エネルギーの枯渇」のエネルギーは活動するための資源

 

自閉症の疲労の特徴(〝自閉性疲弊″)への対策をしていく上で、キャパシティオーバーエネルギーの枯渇の視点を抑えておくことが大切です。

キャパシティオーバー」とは、同時に処理する範囲をオーバーすることで、イライラしたり、フリーズしてしまう状態を指します。

そのため、本人に合った課題や情報量になっているかを把握しながら対応していくことが大切です。

エネルギーの枯渇」とは、何かの活動をする際には、エネルギーが必要になります。疲労感が蓄積されることで、つまり、エネルギーが枯渇することで、イライラしたり、怒りっぽくなることがあります。

そのため、休息をとるなど、エネルギーを充電することが大切です。

 


著者も療育において、ASDの子どもがキャパシティオーバーになっていないかを把握しながら活動を進めるようにしています。

例えば、遊びにおいて、ルール作りをすることがありますが、本人たちが処理できる範疇でルールを設定しなと当然キャパシティオーバーになってしまいます。

また、エネルギーの充足は非常に大切な視点だと感じています。

エネルギーを蓄えていく上で、著者は愛情を注ぐことでのエネルギーの充足を基盤として、その上で、成功体験による意欲のエネルギーを充足させることを大切にしています。

それに加えて、今回見てきたように、ASDの人の特性を踏まえた対応を心掛けています。

 

 


以上、【自閉症の疲労の特徴と対策】自閉性疲弊・キャパシティオーバー・エネルギーの枯渇をキーワードに考えるについて見てきました。

自閉症の人たちは、様々な要因から疲れやすさが生じることが多いと言われています。

そのため、目には見えにくい疲労の背景を考え・対策していくことが大切だと言えます。

私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も自閉症の人の特徴を深く理解していきながら、その知見を療育実践に応用させていきたいと思います。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

 

 

関連記事:「【自閉スペクトラム症(ASD)の学習スタイル】5つの特徴から考える

関連記事:「【自閉症児・者への支援の5つの原則について】〝SPELL″を通して考える

 

 

内山登紀夫(2025)児童発達支援・放課後等デイサービスのための発達障害支援の基本.日本評論社.

 

 

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