発達障害の中でも、自閉症(自閉スペクトラム症:ASD)の人たちは〝感覚の問題″が多く見られると言われています。
自閉症の人たちの中には、温度の変化に過敏あるいは鈍感だと感じる人たちがいます。
例えば、冬の寒い時期でも薄着で過ごす人、逆に冬の時期には極度の寒さを感じて体調を崩しがちになる人もいます。
それでは、自閉症の人たちにおいて暑さ・寒さの感覚にどのような特徴があるのでしょうか?
そこで、今回は、自閉症の感覚の中で、暑さ・寒さの感覚にどのような特徴があるのか?について、臨床発達心理士である著者の意見も交えながら理解を深めていきたいと思います。
今回参照する資料は「井手正和(2022)発達障害の人には世界がどう見えるのか.SB新書.」です。
自閉症の暑さ・寒さの感覚の特徴について
以下、著書を引用しながら見ていきます。
温かさの知覚を「温覚」、冷たさの知覚を「冷覚」と呼びますが、ASD者にはここにも特性が見られます。
温覚・冷覚ともに、ASD者と定型発達者との間に感度の違いは見られませんでした。しかし、温度刺激に対する痛みの感覚についてはASD者の方が閾値が低いことがわかりました。
著書では、ASD者は定型発達者と比べて、〝温度刺激に対する痛みの感覚″の閾値が低いと記載されています。
これは、例えば、冬の寒い時期に温かい室内から外に出ると、刺すような痛みが生じるという感覚が自閉症者にはよく見られるということです。
さらに、引き続き著書を引用しながら見ていきます。
加えて、「刺激に対する順応が起こりにくい」という特性も、ASD者の方々の苦しみを増進させます。
著書では、〝刺激に対する順応性が低い″こともまたASD者の特徴として記載されています。
定型発達者であれば、暑い環境・寒い環境に徐々に慣れていく一方で、ASD者の場合には、焼けるような痛み・刺さるような痛みが持続するということです。
このように、定型発達者から見て少し暑い・少し寒いという感覚がASD者からすると痛みを伴う感覚にまで至っている場合もあるということです。
著書のコメント
著者はこれまで子どもから大人まで様々な自閉症児・者と関わる機会がありました。
その経験から、大人においては、夏場の非常に暑い時期、そして、冬場の非常に寒い時期に体調を崩しやすい方が多といった印象があります。
もちろん、これは自閉症者に限らず言えることもかもしれませんが、体調を崩す要因として、今回見てきたように、暑さ・寒さによって皮膚感覚が過度に反応している(痛みを伴う)ことや、温度変化への順応性の困難さなどが要因となっている可能性もあります。
一方で、子どもに目を向けると、夏場に特に状態が悪くなる児童が多い印象があります。
それは、夏の暑さが要因となって、癇癪やパニックが通常以上に発生していることからも言えることだと思います。
仮説として、今回見てきたような夏の暑さが焼けるような感覚の痛みを生じさせているのかもしれません。
また、児童の中には、温覚・冷覚が鈍感であると感じるケースも多く見られます。
例えば、冬の寒い時期でも、少し体を動かすとTシャツ一枚になったり、基本的に薄着で過ごす子も多くいます。
夏場には、〝あつい!″といった発信が多くある一方で、冬場には〝さむい!″といった発信が乏しく、なおかつ薄着の子が多いといった印象があります(もちろん、これは著者の感覚です)。
そして、温覚・冷覚は人それぞれ様々ですが、著者の実感としても、自閉症児・者は定型発達児・者とは異なる感じ方をしているように見えます。
以上、【自閉症の感覚の問題】暑さ・寒さの感覚にどのような特徴があるのか?について見てきました。
自閉症の人は、温度刺激に対する痛みの閾値が低いこと、そして、刺激に対する順応性もまた低いことが分かっています。
つまり、暑さや寒さの感覚に特徴が見られるということです。
私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も自閉症の人たちの感覚の問題への理解を深めていきながら、学んだ知識を療育現場で関わる子どもたちに反映していきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
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