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【発達障害児への環境調整で大切なこと】3つの環境の特徴を通して考える

投稿日:2024年2月8日 更新日:

発達障害児への支援において、〝環境調整″の視点は非常に大切です。

〝環境調整″には大きく、〝″〝もの″〝空間″の3つがあると考えられています。

 

関連記事:「【発達障害児への環境調整で大切なこと】3つの環境調整を通して考える

 

それでは、3つの環境には具体的にどのような特徴があるのでしょうか?

 

そこで、今回は、発達障害児への環境調整で大切なことについて、臨床発達心理士である著者の意見も交えながら、3つの環境の特徴を通して理解を深めていきたいと思います。

 

 

今回参照する資料は「いるかどり(2023)子どもの発達障害と環境調整のコツがわかる本.ソシム.」です。

 

 

3つの環境の特徴とは?

著書には、①人的環境②物的環境③空間的環境、それぞれの特徴が記載されています。

 

それでは、順を追って見ていきます。

 

①人的環境の特徴

以下、著書を引用しながら見ていきます。

教育現場にいると、「教師は最高(最大)の教育環境である」という言葉をよく耳にします。

 

私たちは、子どもたちが主体的に生活し、意欲的に学習できるような環境の1つでなければいけません。

 

上記の内容は、療育現場においても同様のことが言えると感じています。

子どもたちが日々を安心して過ごすためには、〝大人″との関係が安心でき信頼のおけるものである必要があります。

そして、関わる〝大人″が楽しそうにあたたかく接している様子が子どもたちにも伝搬することは間違いありません。

〝大人″の表情が暗い、イライラしている、他の大人との関係が悪い、こういった状態の中で子どもたちは安心して過ごすことが難しくなります。

すべての環境の中で〝大人″といった〝人的環境″が最大の環境であるといっても過言ではないほど、子どもたちの心の安全・安心感に強く影響することを著者はこれまで療育経験を通して実感しています。

 

②物的環境の特徴

以下、著書を引用しながら見ていきます。

物的環境を考える場合、全体で共有する際には「全員が使いやすいもの」、個人で使用する際には「強みを活かすor困り感を補う」という視点で考えていきます。

 

また、子どもの感覚にも配慮をすることが大切です。

 

著書でいう〝物的環境″とは、教材・教具、学習道具のことを言います。

物的環境の特徴について、療育現場に当てはめても有効な点が多くあると思います。

例えば、遊びで使用するものには、カラーボールやソフトブロックなど危険が少なく感触や色合いの良い物を使用しています。

また、紙粘土やスライム、工作やお絵描きに必要な材料などは多くの子どもが行うため、日々常備するようにしています。

個別のツールも活用することがあります。

特性に配慮するという意味で、その日の個別のスケジュール表を活用することで、予定をうまく立てることができない、あるいは、見通しが分からないことへの不安感を軽減させることができると思います。

また、プッシュポップやチューブ感覚おもちゃなどは、感覚刺激から安心感をもたらすことができるため多く活用しています。

 

③空間的環境の特徴

以下、著書を引用しながら見ていきます。

空間的環境を考える際には、人的環境や物的環境に「場」の視点を取り入れます。いま目の前にある「空間」そのものが空間的環境だと意識することが大切です。

 

著書の療育現場でも〝空間的環境″は非常に重要だと感じています。

以前は、○○の空間は○○する場所、といった区分けが非常に曖昧だったこともあり、子どもたちの過ごしが安定しないことが多くありました。

子どもたちから見て〝このスペースは○○をする場所″といったわかりやすい空間作り、〝場″のデザインがとても大切だと感じています。

 


さらに、著書には、〝場″を構成する上で、以下の2つの点が大切だと記載されています。

[動線設計]

動線設計とは、その場に対して子どもたちがどのように近づき、移動し、その中で行動・活動するかを考えることです。

 

[子どもたちという集団]

場に人が集まり「空間」になります。(中略)同じ場で過ごす存在として、子どもたちという集団は、子どもたちの成長にとって必要不可欠なものです。

 

まず、〝動線設計″ですが、子どもたちが空間内を安全にかつスムーズに移動することを設計することです。

この視点は、療育現場でも非常に大切であり、著者は常に子どもたちが空間内をどのように移動するのかをイメージしながら活動を組み立てています。

そのため、事前に効率的かつ安全な動線が空間内に設計されていれば、大人が介入する度合いが減り、子どもたち自ら主体的に動けるのだと思います。

 

次の、〝子どもたちという集団″が〝空間″を作る、という視点もまた非常に重要です。

著者の療育現場では、子どもたち自ら様々な遊びを考案したり、著者が遊びを提案することで、そこに子どもたち集団といった〝空間″が形成されることは多くあります。

そのため、何も空間的環境だけが環境ではなく、人の集まりもまた環境であるという視点を持っておくこともまた支援上(場を構成するという意味で)大切なことだと感じています。

 

 


以上、【発達障害児への環境調整で大切なこと】3つの環境の特徴を通して考えるについて見てきました。

環境調整を考える上で大切なことは、〝人″が〝場″を作るということです。

そのため、どのような子どもたちがその場にいて、どのような子ども集団が形成されているのか、ということを考えながら環境調整を行っていくことが大切だと思います。

私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も療育現場で子どもたちの日々の過ごしが充実したものになるように、環境調整の視点も大切にしていきたいと思います。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

 

いるかどり(2023)子どもの発達障害と環境調整のコツがわかる本.ソシム.

-環境調整, 発達障害

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