発達障害児は、発達特性などが影響して、生活の様々な所で困り感が生じる場合があります。
著者は長年、療育現場で発達障害児支援を行っていますが、個々の発達特性や発達段階等を踏まえたオーダーメイドな支援はとても大切だと感じています。
それでは、発達障害児に見られる感覚過敏に対して、どのような対応方法が有効だと考えられているのでしょうか?
そこで、今回は、発達障害児に見られる感覚過敏への対応について、SST・ペアトレ・感覚統合からのアプローチを通して理解を深めていきたいと思います。
今回参照する資料は「岩坂英巳・宮崎義博(2021)「うまくいかない」ことが「うまくいく」に変わる!発達障害のある子どもがいきいきと輝く「かかわり方」と「工夫」.幻冬舎.」です。
感覚過敏の例と、感覚過敏が生じる原因について
〝感覚過敏″には、様々なものがありますが、今回は、〝視覚過敏″〝聴覚過敏″に焦点化して見ていきます。
著書には、〝視覚過敏″と〝聴覚過敏″の具体例がいつくか記載されています(以下、著書引用)。
〝視覚過敏″の例
学校の教室が明る過ぎる、教科書、ノートが白く光って見える、そのために疲れてしまうのです。
〝聴覚過敏″の例
学校やスーパーなどの騒々しい場所では、音の量や種類の多さに耐えられなくなる場合があります。
ドライヤー、運動会のピストルの音、赤ちゃんの泣き声、車のクラクションやドアの閉まる音など突然の音で混乱してしまうことも多く見られます。
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以上、〝視覚過敏″と〝聴覚過敏″の例を見てきましたが、〝感覚過敏″がなぜ生じるのかといった明確な原因は分かっていないと考えられています。
そのため、〝感覚過敏″のある子どもたち一人ひとりが、どのような感覚過敏の種類や強度を抱えているかを把握していきながら、それぞれに合った対応策を考えていくことが大切になります。
感覚過敏への対応について
著書には、感覚過敏への対応として、〝①SST(ソーシャルスキルトレーニング)″〝②ペアレントトレーニング″〝③感覚統合療法″の3つからのアプローチ方法が記載されています。
それでは、次に、①②③のそれぞれのアプローチ方法について具体的に見ていきます。
① SST(ソーシャルスキルトレーニング)
以下、著書を引用しながら、SSTからのアプローチを見ていきます。
・自身で過敏性を理解して、事前に準備をする
〝過敏性に対する自己理解と、それに対する準備をする″ことです。
まずは、子ども自身にどのような過敏さがあるのかを子どもに関わる大人(親、教員、療育者など)が把握していきながら、子ども自身がどのような所に感覚の過敏さがあるのかを自己理解していくことが大切です。
そして、どのような場面や状況において、感覚の過敏さを低減できるのか、といった対応策を大人と相談しながら準備していくことが必要です。
② ペアレントトレーニング
以下、著書を引用しながら、ペアレントトレーニングからのアプローチを見ていきます。
・本人の感覚過敏からの困りごとを理解する
・周りが理解して、支援できる体制をつくる
まずは、〝本人の感覚過敏の苦しさを理解する″ことです。
感覚の問題は子ども自身にとって、なかなかうまく他者にその苦しさを伝えることの難しさがあります。
そのため、子どもに関わる大人が、生活の中のどのような場面で子どもが感覚過敏の問題で悩んでいるのかを理解しようといった姿勢が大切です。
そして、大人と相談しながら少しずつ解決策を見つけていけたという成功体験を積み重ねていくことが大切です。
次に、〝子どもを支援するサポート体制を作る″ことです。
まずは学校との連携です。
例えば、席の配置や苦しくなった際のクールダウンエリアの確保、イヤーマフや耳栓の使用などの配慮を行えるようにサポート体制を整えておくことが大切です。
また、放課後等デイサービスなど他の支援機関とも連携を取っていくことも大切です。
③ 感覚統合療法
以下、著書を引用しながら、感覚統合療法からのアプローチを見ていきます。
・視覚、聴覚刺激を少なくする
・一度にいくつかの音を聞き分けるゲームをする
・感覚過敏の意思表示をする
まずは、〝感覚過敏に繋がる刺激を減らす″ことです。
著書には、〝視覚過敏″と〝聴覚過敏″の刺激の量を減らす方法が記載されています(以下、著書引用)。
〝感覚過敏″に関する例
サングラスをかける、色つきのレンズが入ったメガネをかける、カーテンを閉める、教科書にセロハン状の色のついたシートを掛ける、部屋の中を整理する
〝聴覚過敏″に関する例
ノイズキャンセラーやイヤーマフ、耳栓を使用する、椅子の足にテニスボールを付ける
次に、〝音を聞き分けるゲームを導入する″ことです。
著書には、例えば、二人の人が同時に違うことを話していて、それぞれの話を言い当てるゲームが載っています。
聴覚過敏があると、音の識別・分別がうまくいかず、必要ではない音の情報が大量に流れ込んできている状態だと言えます。
そのため、聴覚機能を育てるという発想もまた大切だと言えます。
次に、〝感覚過敏の苦手さへの意識表示をする″ことです。
著書には、例として、感覚過敏研究所で作成した感覚過敏缶バッジが記載されています。
このように、周囲からの理解が得られない場合には、こうしたアイテムの活用の検討も必要だと言えます。
以上、【発達障害児に見られる感覚過敏への対応】SST・ペアトレ・感覚統合からのアプローチについて見てきました。
感覚の問題は、敏感さだけではなく、鈍感さなど様々な問題があると言われています。
発達障害児に多いとされる感覚の問題について理解を深めることは、発達支援に携わる人たちにとって必須の内容だと言えます。
私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も療育現場で子どもたちの感覚の問題を理解していく姿勢を保ちながら、より質の高い支援を目指していきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
関連記事:「【感覚過敏の原因について】発達障害児支援の現場を通して考える」
関連記事:「【感覚過敏への支援方法について】療育経験を通して考える」
岩坂英巳・宮崎義博(2021)「うまくいかない」ことが「うまくいく」に変わる!発達障害のある子どもがいきいきと輝く「かかわり方」と「工夫」.幻冬舎.