〝愛着(アタッチメント)″とは、〝特定の養育者との情緒的な絆″のことを指します。
子どもは養育者との愛着関係を基盤として、その後の対人関係を発展させていきます。
安定した愛着を形成するためには、〝感情の発達″が非常に重要だと考えられています。
それでは、子どもが感情を発達させていく上で、どのようなプロセスがあると考えられているのでしょうか?
そこで、今回は、愛着形成で大切な感情学習について、感情発達のプロセスを通して理解を深めていきたいと思います。
今回参照する資料は「米澤好史(2022)愛着障害は何歳からでも必ず修復できる.合同出版.」です。
【愛着形成で大切な感情学習について】感情発達のプロセスを通して考える
感情の発達で不可欠な認知機能の発達について
以下、著書を引用しながら見ていきます。
こどもが感情を発達させるためには認知機能の発達が不可欠
〝認知機能″の発達とは、様々な感覚器官を通して外の世界を知る働き(機能)のことを指します。
子どもは、触る・見る・聞く・嗅ぐ・舐めるなどの行為を通して、〝認知機能″が育っていきます。
そして、著書にあるように、〝認知機能″の育ちの中で、〝感情″もまた発達していくと考えられています。
感情の発達で重要なモデル学習について
それでは、感情はどのようにして発達していくのでしょうか?
以下、著書を引用しながら見ていきます。
こどもが感情を獲得していくのも、広い意味で学習活動と考えることができます。
こどもの学習活動は、モデル学習から始まります。
著書の内容から、感情の発達は広義の意味で学習活動だと言え、こどもの学習活動はモデル学習から始まると記載されています。
モデル学習とは、他者の行為を見て真似るといったものであり、例えば、〝共鳴動作″が生後5カ月程度まで見られると言われています。
〝共鳴動作″とは、大人が舌を出すと、それを真似して子どもも舌を出すなど、動作が共鳴する行為のことを指します。
続いて、著書には、モデル学習の例として、〝ベロベロバァ″、次に〝いないいないばぁ″を上げています。
他者が〝ベロベロバァ″を行うことで、モデルを見て真似ること(〝モデル学習″)に加えて、〝表情学習″といった表情の表出方法も併せて学習できます。
〝いないいないばぁ″では、一度、他者の顔が消えてしまうも(手でおおわれることで)、必ず他者は存在しているといった〝対象の永続性″の理解が必要です。
認知機能の発達で言えば、生後8~12カ月で可能だと言われています。
〝対象の永続性″が理解できるということは、例えば、愛着対象となる存在が目に見えていなくても存在しているといった理解が可能になってきます。
これは、子どもが愛着対象から離れる(安心・安全基地を基盤として)ことを可能にしていきます。
そこで見られる行為として〝社会的参照視″があります。
〝社会的参照視″とは、他者の表情などを手掛かりとして、子どもが自分の行為を確認・制御することです。
子どもがこれからやろうとしている行為を他者に大丈夫かどうかを確認し、確認を得ることで、一度他者から離れるといった行為は〝探索基地″機能の発達に繋がっていくと言われています。
このように、感情の発達の基盤には、モデルの存在を通してのモデル学習が重要となります。
感情の発達で大切な自己効力感・自信の獲得について
以下、著書を引用しながら見ていきます。
「できたら嬉しい」という感情は自分ひとりでは感じ取ることはできません。これは、誰かに認められるという経験、誰かとの関係性の中で感じ取る感情です。
著書の内容から、子どもが何か新しいことができたとき、何かを達成できたときなど、その嬉しい気持ちは自ら育っていくのではなく、他者から認められたという関係性の中で培われていくものであると考えられています。
私たちは子どもの頃に、親や先生などから何かができたことを認められたことで、〝自分にはできる!″〝できた自分はすごい!″といった感覚を得ることができます。
もちろん、頑張っている過程を認められることもまた自信や自己効力感の育ちにおいてとても大切だと言えます。
幼少期に他者から認められたといった経験の積み重ねがあることが、後の〝自信″や〝自己効力感″の育ちに大きく影響していくのだと言えます。
こうした観点もまた、感情の発達において重要となります。
以上、【愛着形成で大切な感情学習について】感情発達のプロセスを通して考えるについて見てきました。
最後に、著書を引用して終わりにしたいと思います。
こうした感情学習の体験、基地機能獲得のための経験は、乳児期の期間にしかできない期間限定の経験ではありません。こどもでも大人でも、これらの経験は非常に大切であり、どの年齢でも繰り返し経験できます。
著書の内容から、感情学習は生涯にわたって大切なものであり、大人になっても繰り返し学習可能だと言えます。
私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も療育経験を通して、子どもたちが豊かに感情を発達させていけるような関わりをしていきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
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米澤好史(2022)愛着障害は何歳からでも必ず修復できる.合同出版.