〝愛着(アタッチメント)″とは、〝特定の養育者との情緒的な絆″のことを指します。
一般的には、愛着関係の発達には親が中心であるといったイメージがあるかと思います。
一方で、子どもは親以外の様々な人間関係を通して、愛着を形成していくといった見方もあります。
それでは、愛着の発達には、親も含め、どのような人間関係が影響していると考えられているのでしょうか?
そこで、今回は、愛着の発達に影響する要因について、3つのモデルを通して理解を深めていきたいと思います。
今回参照する資料は「篠原郁子(2024)子どものこころは大人と育つ:アタッチメント理論とメンタライジング.光文社新書.」です。
愛着の発達に影響する要因:3つのモデル
著書には、愛着関係は親も含め様々な人間関係を通して学んでいくと仮定して〝3つのモデル″が紹介されています。
その3つとは、1.階層的組織化モデル、2.総合的組織化モデル、3.独立並行的組織化モデル、になります。
それでは、次に〝3つのモデル″について詳しく見ていきます。
1.階層的組織化モデル
以下、著書を引用しながら見ていきます。
まず、母子関係などの子どもにとっての主たる人間関係があり、それに基づいて作られた内的作業モデルが、いろいろな人間関係モデルの上位にあるとされます。そしてそれが、他の人間関係にも当てはめられながら広がっていくというのです。
著書の内容では、〝階層的組織化モデル″とは、母子関係などの主たる養育者が愛着関係の基盤を形成しているといった考え方になります。
つまり、母子関係(主たる養育者との関係)が安定していれば、その後の対人関係における鋳型(内的作業モデル)も安心したものへと発展していくと言えます。
一方で、基盤となる養育者との関係性が不安定であれば、その後の対人様式も不安定なものへと展開していく可能性があると言えます。
一方で、〝階層的組織化モデル″は、母子関係など主たる養育者との関係性に比重が置かれ過ぎているという疑問もあります。
子どもは主たる養育者以外にも様々な対人関係の中で、自身の対人様式(内的作業モデル)を形成していくこともあるかと思います。
この点に着目した〝モデル″が以下に見る〝総合的組織化モデル″と〝独立並行的組織化モデル″になります。
2.総合的組織化モデル
以下、著書を引用しながら見ていきます。
子どもの中では、それぞれの関係に上位、下位はなく、各経験は子どもの中で統合されていき、それぞれの経験を取り込みながら一つの内的作業モデルが出来上がってくると考えられています。
著書の内容から、〝総合的組織化モデル″とは、両親、祖父母、親戚、先生など様々な対人関係における経験を通して、一つの対人様式(内的作業モデル)を形成していくといった考え方になります。
そして、それぞれの関係の中には、上位関係、下位関係など優劣はないと考えられています。
子どもは様々な関係性を通して、自らの内的作業モデルを変化させていくと言えます。
3.独立並行的組織化モデル
以下、著書を引用しながら見ていきます。
ただ、各々の人間関係は子どもの中でそれぞれに独立していて、それぞれの内的作業モデルが形作られているという考え方です。
著書の内容から、〝独立並行的組織化モデル″とは、他者との関係性(両親、祖父母、親戚、先生など)は、それぞれ独立した対人様式(内的作業モデル)として形成されていくといった考え方になります。
先に見た〝総合的組織化モデル″との違いは、一つの対人様式として統合されるものではなく、例えば、母との愛着関係、父との愛着関係・・、といったようにそれぞれ独立した内的作業モデルを形成していくというものになります。
子どもは、他者と様々な関わりを経験していく中で、○○はいつも落ち着いた関わりをしてくれる、○○は怒ったり注意することが多い関わりをしてくる、など人によって関わり方の違いを理解していくことも当然あるように思います。
そして、関わり方の違いによって(関わる相手によって)、自分の行動の在り方も変えていく側面もあると思います。
以上、【愛着の発達に影響する要因について】3つのモデルを通して考えるについて見てきました。
現在の愛着研究によれば、上記の三つのモデルについて明確な結論は出ていないようです。
一方で、旧来の母子関係を基盤とした愛着の発達以上に、子どもは様々な他者との関わりの中で愛着を発達させていくことが主流な考え方になってきていると考えられています。
私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も愛着研究にも目を向けていきながら、自分がいるフィールドの中で子どもたちに何ができるのかを考え続けていきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
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篠原郁子(2024)子どものこころは大人と育つ:アタッチメント理論とメンタライジング.光文社新書.